どうしてこうなった……
前回の話、そこまで変わってないですが修正したので見てない人はそちらからお願いします。
涼夜は馬に乗り、荒野を走っていた。否、歩いていた。
「はぁ、馬には乗れたけど、流石にこのスピードは予想外だった…」
そう涼夜が独り言を呟く程度には進むスピードは遅かった。理由としては荷馬車のスピードに合わせているということと、魔物が出にくい道を使って少し迂回しているからだ。
(これだったら錬成で乗り物を作るか、走った方が早いんじゃね?……やべ、そう考えたら護衛やめたくなっちまった)
涼夜は嫌な思考を振り払い、前に視線を移す。もうかれこれ1週間経った。戦闘は何回かあったがそれも苦戦こそするが連携して挑めば倒せた。ライセンの魔物は強いという話を聞いていたが護衛の人の練度が高く、無駄がなかった。
涼夜は遠距離から前衛の隙をなくすように撃っていただけで、前衛の人がちゃんと倒していた。涼夜の射撃が的確だと褒められるとなぜかファナに睨まれた。本当に何故だ。
涼夜としては魔物との戦闘という物を全くしていないので昼は護衛しながら街に近づき、夜は乗り物の錬成と薬品の調合をするというありふれた日常の様に感じていた。
涼夜が欠伸をしていると不意に涼夜の常時、意識的に展開している(そのため射程が広くなった)気配察知に引っかかるものがあった。涼夜は敵の魔力の大きさについ空を見上げる。それと同時に前方にいるカーズから指示がかかった。
「ーーッ!逃げるぞ!」
カーズは顔を青ざめて撤退の指示を出した。その言葉だけで涼夜とファナ以外のメンバーに緊張が走る。このメンバーで相当な警戒をするということはそれだけ相手が危険なのだろう。
遠くに見えたのは双頭竜だ。今の魔法が使えない状態なら涼夜でも戦って勝つ確率は4割もない。(魔法、搦め手ありなら必勝の手はある)
「なぜですか⁉︎ちゃんと連携を取れば倒せますよ!」
敵の危険性を判断できなかったファナがカーズに突っかかっる。倒せると思っているのだろう。
「無理だ!
そう、あの双頭竜にはこの世界の人間のスペックでは魔法を封じられる状態で勝つことはほぼ不可能だ。蹂躙されるのがオチだ。
「……なら、私が1人で倒します!」
「なっ、おい、待て!」
ファナはカーズの制止を聞かず、双頭竜に向かって走り出す。
(……はぁ、力量差がわからないのかーーーー)
「ーーーー強くならなきゃ」
ファナの小さな呟きは涼夜には聞こえた。そしてファナの姿が少し前の涼夜と重なる。
「ーーッ!くそっ!……すいませんカーズさん。あいつを助けに行くので先に逃げていてください。後から追いつきますから」
カーズの返事を待たずに涼夜はファナを追って走り出す。
***************
ファナは後悔していた。
倒せると思って双頭竜に突っ込んでいったファナだがそれはすぐに間違いだと気づいた。
近づき、相対すると感じる生命の恐怖。絶対強者の雰囲気。
「ーーッ!倒す!」
それに呑まれてないようにする胆力は中々のものだろう。だが、気合いだけでは双頭竜を倒すことなど出来はしない。
ファナを視界に捉えた双頭竜は獲物がきたと獰猛な雄叫びをあげた。
「グギャアァァァァ!」
ファナは臆することなく突っ込む。側から見れば無謀な行動だろう。
双頭竜は右の頭で獲物に向かって牙を突き出す。ファナに嚙みつこうとしているのだろう。
それをファナは右に避ける。右の頭で攻撃しているのでそれは当然だろう。
(……よし、いける!)
ファナはそう考えたが甘かった。懐に潜り込もうと前に踏み出した瞬間、視界の端に動くものが見えた。なんだと考える暇もなく、吹き飛ばされるファナ。
数回バウンドして地面に叩きつけられる。なんとか受け身は取れたので意識が飛ぶような事はなかった。だが擦り傷が多く、内臓をやられたようで血を吐き出した。
「ゴホッガハッ」
吐きながらも、なんとか双頭竜の方を見る。双頭竜は尾を振り切った状態だった。どうやら視界の端に見えたのは双頭竜の尾だったらしい。
双頭竜はファナに向かってゆっくりと近づいてくる。ファナは立ち上がろうとするがダメージで意識が朦朧としてきてうまく立てない。
(どうしてどうしてどうしてどうしてどうして!
……なんで勝てないの!私は決めたのに……強くなって復讐するって決めたのに!)
双頭竜がファナの目の前にきた。鎌首をもたげファナを捕食しようとする。
(……こんな簡単に終わっちゃうの?)
ファナは目を閉じた。もう、目の前の光景を見たくはなかった。
「ーーーチッ、ふざけんじゃねぇよ」
そんな声が聞こえると同時、何かに支えられ高速で移動している感覚がした。
「……えっ?」
ファナが目を開けるとファナを抱えた涼夜が見えた。
***************
涼夜が追いついた時には既にファナは食われる寸前だった。
「ーーーーチッ、ふざけんじゃねぇよ」
涼夜は《縮地》で間合いを詰め、ファナを抱え、また《縮地》で離れる。
「……えっ?」
「ーー神秘をこの身体に宿せ。《快癒》
……邪魔だ」
涼夜はファナに回復魔法をかけると、ファナの傷が治っていく。そして内臓の損傷がある程度治ると涼夜はファナをぶん投げる。
「……え、ええっ!」
ファナが驚き、悲鳴をあげているが気にしない。というより気にすることができない。なぜなら双頭竜が攻撃を始めていたからだ。
顎門を開き噛み千切ろうとしてくるので後方に飛ぶ。そして口内に置き土産を置いていく。
「おみやげグレネードだ。受け取れ!」
双頭竜の片方の頭が爆ぜる。燃焼石で着火し、酸素と燃焼石の粉塵を凝縮して周りをコーティングした涼夜渾身の一品である。爆発力は並の爆弾より威力がある。
双頭竜の左の頭は何が起きたのか分からず、しばし呆然とする。
「ーー光よ、我が真意を隠せ。《光乱》」
その隙に涼夜は《幻踏》を発動し、さらに光魔法による屈折を利用する。そうすることで半歩ずれた幻影が無数に生まれた。的を絞らせなくして、時間を稼ぐ。
(……うへぇ、錬成で消費量の増加はわかっていたが無理矢理使う分魔力がアホみたいに取られるな。……残り2分ってところか。
……何してんだろうな、俺)
涼夜はげんなりしながらも敵の次の動きを予測して考える。
(恐らく焦れたときに尻尾での薙ぎ払いだろうな。……そうするとアレを使うか。魔法が使えないって不便だな)
考えをまとめるとすぐに準備に入る。
涼夜は地面から錬成で鉱石を取り出し、長い棒状にする。そして棒先を地面につけて双頭竜の周りを駆ける。幻影も動き出すので涼夜が円状に存在するように見える。そして砂煙が舞い、涼夜を隠す。
双頭竜は本物の涼夜が分からないのでかついに焦れて薙ぎ払いをする。
(かかった!)
涼夜はそれを確認すると瞬時に飛び去り、《光乱》と《幻踏》をやめ、ポーチから火打石2個が紐で繋がれたものを取り出す。
「なあ、粉塵爆発って知ってるかっ!」
火打石を双頭竜の薙ぎ払いでさらに増えた砂煙の中へ投げ入れる。
「ーー風よ、守護せよ。《風壁》」
《縮地》でファナの前に立ち、《光乱》と《幻踏》を消してできたリソースで《風壁》を張る。5秒くらいしか持たないが十分だろう。
《風壁》が完成すると同時に火打石同士がぶつかり、火花を散らす。
ど派手な爆発が起き、爆煙に包まれた。
爆煙が晴れるとそこにはクレーターがあるのみで他には所々炭化した何か以外何も残っていなかった。
「……」
思った以上の爆発に無言になる涼夜。粉塵爆発を生で見たのは初めてなのでここまで凄いとは思わなかった。
(図体でかいし、魔法に制限があったから攻撃が爆破に偏っちまったな。……でもこの規模はないんじゃないの?ヤバくね?対人とか絶対ダメじゃん。もっと改良が必要だな。それにーーー)
涼夜は今回の戦いの考察をしていたが不意に服の裾が引っ張られる感覚がしたので振り向くと座り込むファナがいた。
(ーーあ、忘れてた。こいつのせいで戦っちまったんだよな)
「どうしてそんなにーー」
「なんか言ったか?」
ファナが何か呟いたようなので涼夜は聞いてみたが返ってきたのは素っ気ないものだった。
「……なんで
ファナが呟いた言葉と違っているはずだが別に涼夜にはそんなことを聞く意味がなかった。
「は?邪魔だからに決まってんだろ。それに自分のせいで怪我負ったやつに気遣えってのが間違いだ。」
涼夜は嘆息すると、口笛を吹き、近くにいさせた馬を呼んだ。涼夜は調教師の技能も持っていたらしい。
「おーよしよし。荷物も持ってきてくれるなんてお前、賢いな」
馬を撫で回し、労う。そして馬から預けていたバックパックを受け取る。
「さて、今日のキャンプ位置は聞いてるし、日が暮れる前に合流したいな。ーーおい、暴走女。こいつに乗るか?」
「……自分で走れる」
「そうかよ、ならちゃんとついてこいよ」
そうして涼夜はこの馬が出せる最高の速さで駆ける。仮にファナが遅れても、速度を緩めたりはしない。暴走女に慈悲はない。
(……はぁ、完全にちょっと前の俺みたいだ。なにかの為に強くなろうとしている感じ。俺はここまで意地っ張りじゃないけどな)
カーズ達と合流したのは日が暮れる直前だった。そこで涼夜とファナはまず戻って来れた事に驚かれ、双頭竜を倒したのか聞かれた。
涼夜は逃げてきたと言おうとしたがファナに先に言われ、倒した事がバレた。どうやって倒したかを聞かれたのでファナに睨みを利かせてから「企業秘密です」と答えた。
………いや、こんなのバラしたら面倒くさい事になるのわかっているのに言うわけないだろ。
そして当然ながら報酬の減額を言い渡された。命令無視ですね、わかります。
その後、1週間かけてようやく商業都市フューレンに着いた。その間は襲ってくる魔物も少なく先行(ファナのせい)も禁止だったのでこれといった事はなかった。
カーズ達と別れ、ギルドに行って依頼完了を報告して報酬を貰った。やっぱり減額されていたが、ランクが上がった。どうやらカーズがギルドに涼夜が双頭竜を倒したということを報告していたらしい。
なんて事をしてくれるんだ!これじゃあギルドから目をつけられるじゃないか!…………………嬉しいけれども!
貰った報酬で乗り物(依頼が終わったので馬はいない)に必要な道具や、旅の物資を購入する為に街を練り歩いた。流石、商業都市と言うべきか王都や、ホルアドよりも品揃えが豊富で娯楽施設なんかもあった。今度来るときには誰か連れて観光ってのもいいな。
買い物中にも情報を集めたが、ホルアドで得た以上のものはなかった。
物資を買い終えると近場の宿を取り、疲れを取るために一泊する。無理をしていると怒る人達がいるのでしっかりと睡眠をとる。
翌朝、十分に睡眠をとった涼夜は街の外れで錬成を始める。作るのはもちろんバイク………と言いたいところだが、涼夜の魔力量の問題で断念せざるを得なかった。仕方なく、ターボエンジン付きのマウンテンバイクを製作した。
(なんか聞こえたから返すが、
……ださいとかバランスおかしいとか言うなよ?こっちもわかってて作っているんだから。魔力が切れたら歩きとか嫌だろ?な?)
ターボエンジンといったが中身は風の魔法陣と永続発動の魔法陣が組み込まれていて、詠唱して発動すると自動で魔力を吸い取り、発動し続ける一品だ。
完成したマウンテンバイクに乗ろうとすると、気配察知に反応する気配があった。
気配がする方向に振り向くとそこにはファナがいた。
「あのなぁ、お前昨日からなんなんだよ。俺につきまとって楽しいか?」
そう、ファナは昨日の依頼が終わった後から涼夜を見張るように遠くからつけていた。
「……別に」
相変わらず涼夜の言葉に素っ気ない返事をするファナ。こんな態度をとるのに何故か涼夜についてくるのだ。
「あっそ。……なら、俺はもうここを出るから。じゃあな」
涼夜はマウンテンバイクに跨り、漕ぎ始める。
……そこ、ダサいとか言わない!
「ーー待って!」
ファナは涼夜を引き止める。やはり、何か用があったらしい。
「んだよ、用があるならさっさと言えよ」
ファナは自分の気持ちを落ち着けて願いを言った。
「私を連れてって!」
「断る」
「連れてって」
「嫌だ」
「連れてけ」
「無理」
「………」
「うぉい、無言でしがみつくのはやめろ!俺の座る場所がなくなるだろ!
やめろっての!
……………おい!
…………
………
あーもう、わかった!わかったからやめろ!」
涼夜が引き剥がそうとするも離れないので、涼夜がそう言うと直ぐに退くファナ。少しドヤ顔しているあたりがうざい。
うざかったので無言で走り出そうとしたが肩を掴まれ、断念。
仕方なくマウンテンバイクを降りて錬成をし直す。座席の部分を2人で乗れるように作り変える。
「……なんで俺についてこようとするんだ?」
涼夜は涼夜を嫌っているはずのファナが自分についていく理由がよくわからなかった。
「………強くなりたいから」
「俺についてきたって強くはならないぞ」
「ーーあなたをみて、どうしてそんなに強いのかを知りたい」
ファナの目は真剣だった。今、これこそが自分の望みだと、そんな雰囲気だ。
「強さってなんだろうな」
「え?」
「いや、なんでもない。それよりも本当についてくるのか?………お前じゃ死ぬぞ」
涼夜は脅すように問いかける。これで躊躇ったり引き下がったりするなら何と言おうと置いていく腹づもりだ。
「……それでもついていく」
ファナは即答した。一瞬の躊躇いもなく。
「……はあ、わかった。後ろに乗れよ」
涼夜は深くため息を吐き出して、後ろの席を指しながら言う。ファナはすぐに席に座る。
「ーー風よ、荒れ狂え。《風爆》」
涼夜はファナが座ったのを確認するとターボエンジンに魔力を注ぐ。
(厄介事を背負っちまったなぁ)
そして魔法が発動した瞬間、凄まじいスピードでマウンテンバイクは走り去っていった。
その頃のハジメ
17日目
ユエ救出。ハジメ、過去を振り返る。
24日目
ヒュドラ討伐。ハジメ死にかける。
25日目
神代魔法習得。ハジメ、食われる。
28日目
ハジメ、アーティファクト生成開始。チート化完了目前!←今ここ!
今回の戦闘のネタはSAOと禁書ですね。爆発ばっか。
魔法が十全に使えないと技が使えないし、アイテムとか今出来るのは爆発物と毒しかない。
作戦用意して、手数で戦うのが万能者のスタイルなんだけどなぁ