今回は繋ぎ回なので内容はかなり薄いです(ここ最近ずっと薄い気もするが)。
お気に入りが減っていたのは一体何が原因なんだ……
涼夜たちは漆黒の建造物に入るために扉を探すが見つからず、唯一見つかったのは紋様が刻まれた壁だけだ。
「……これか?」
紋様がキーになると思い、触れる涼夜。すると壁が開き、中への道が現れた。
建造物の中には中央に魔法陣があり、部屋の隅には古ぼけた箱があった。
「……魔法陣は何が起こるかわからない。先に箱の方を確認するぞ」
涼夜は箱の前まで移動する。箱からはファナの魔力眼と涼夜の危険察知に反応がなかったのでトラップはない。蓋をあけると、中にはいくつかのアーティファクトやこの世界の地図などがごちゃまぜに入っていた。
「……あった?」
涼夜が中身を確認していると後ろからファナが涼夜の手元を覗きながら聞いてきた。
「いや、恐らく俺が求めていたものはない」
結局、中にあったのは長剣、短剣、杖という付与魔法がついた武器と鎧などの防具類だけで蘇生が可能とされるものは存在しなかった。
「……そっか」
「まだ希望がなくなった訳じゃない。他の迷宮にも行ってあるか確かめる」
涼夜は箱の中身の中で自分たちが使えそうな物だけ選別する。涼夜は雷が付与されている短剣、ノータイムで聖絶を打てる杖と魔力耐性が付いている鎖帷子を、ファナは気配を隠蔽するマントと風の斬撃を飛ばせる短剣をそれぞれ自身の装備として身につけた。
残りはメルドとの約束により王国に持ち帰るつもりだ。
全てを箱の中から出し、今回の攻略で軽くなったバックパックの中に詰めようとするとファナが何かを発見した。
「……涼夜、箱の底に何か埋め込まれてる」
「……ああ、本当だ。なんだこれ、指輪か?」
涼夜が箱の底から錬成で取り出したのは指輪だった。何やら魔法陣らしきものが刻まれているが涼夜が全く見たことないものだったので使い方がよくわからなかった。
「まあ一応、貰っておくか」
使い方はわからないが箱の底に埋まっていたものなら重要だと思い、自分の指にはめる。
そして残りのアーティファクトをバックパックに詰め込めるだけ詰め込む。それが完了するとこの部屋で異彩を放つ魔法陣の前に立つ。
「先に俺が入る。危険は少ないが、もし転移魔法陣だったら追ってくるな」
「……それはだめ」
「なんでだよ」
「……私も一緒に入る」
「………………はぁ、わかったよ」
前回のやりとりからファナが折れないと学んだ涼夜。ファナへの説得は諦め、了承する。
2人は一緒に魔法陣へと入る。すると魔法陣が発光して目の前が真っ白に染まる。2人が突然の発光に驚いた直後、グリューエン大火山での旅の様子が頭の中を走馬灯のように駆け巡る。それが最後まで終わると今度は何かが頭の中へ流れ込んでくる。脳に刻み込んでいるのか多少の痛みが生まれる。
「ーーっ」
顔を顰めるのも一瞬。涼夜たちは流れ込んできたものの正体がわかり、痛みより驚愕の方が強くなった。やがて痛みがなくなり光がやむ。
「…神代に存在していた魔法、空間魔法か」
「……凄い。これで強くなれる」
空間魔法の力を刻み込まれると同時に理解した涼夜。既存の魔法と比べると異常とも言える力だ。
「ファナ、使えそうか?」
「……使えると思う」
「そうか。なんにせよとりあえず今日はここで休むか。流石に回復しないと帰りがきつい」
そう言って部屋の隅に腰を下ろす涼夜。かなり脱力しているのをみるに相当疲労が溜まっていたのだろう。ファナもそれに倣い腰を下ろす。涼夜の隣に。
「………おい、なんで近くに座るんだよ。他に空いている場所があるだろ」
露骨に嫌そうな顔をしてファナに文句を言う。だがファナはそれを無視して動こうとしない。
「……はぁ」
涼夜は動こうとしないファナにもう何も言わず、ため息を吐く。無駄な体力を使いたくはないのだ。
「……」
「……」
「……ねえ」
お互い疲れており、沈黙が続いたが不意にファナが声を出す。
「なんだよ」
「……さっきの戦い、私の事を名前で呼んだよね」
ファナに指摘され涼夜はバツが悪そうな顔をする。涼夜にはほとんど無意識だったが確かに名前を呼んだ覚えがある。
「……ああ、呼んでた気がするな。気に障ったか?」
「…ううん、仲間として
ファナは少し嬉しそうに、そしてどこか儚げに笑う。少しファナの笑顔に見惚れながらも涼夜はファナの言葉に引っかかりを覚えていた。
(認めてくれた……か)
「………そうか」
「……」
「……」
「……私、先に寝るね」
ファナは沈黙が辛かったのか断りを入れて眠りにつく。
涼夜はファナが言った言葉について考えていた。
(……俺はファナの事を仲間として認めているのか?まだ邪魔者としてみているのか?それとも便利な物扱いか?
……わからない。自分の気持ちなのに。
ファナが居てくれたお陰で攻略が上手くいったのは事実だ。俺だけじゃ攻略に時間がかかっていたし、何より死んでいた可能性だったある。
なら、俺はファナを認めているのか?
ファナを信用しているし、ファナの手助けをしてやりたいと思っているけどファナを切り捨ててでも目的を果たそうとも思っている。
……というかそもそも俺は他人を信頼しているのか?利用しようと考えているだけなんじゃないか?
あ〜クソ!わからねぇ!
……寝るか)
涼夜の中で答えは出ず、モヤモヤは消えないまま眠りについた。
***************
翌朝、回復した涼夜たちは建造物の外にあった昇降機の円盤に乗って火山の前まで移動した。そして隠していたマウンテンバイクで半日かけてアンカジ公国に戻った。
「……さて、俺は一旦王国に戻る。だが俺の事情でオルクス大迷宮には潜れない。
……それでもファナは付いて来るか?」
ついた時には陽も沈んでいたので公国内で早々に宿を取り、荷物を部屋に置く。そしてひと段落つくと部屋の中で涼夜はファナに尋ねる。
王国に戻っても戦いは基本ないし、涼夜は死亡扱いになっているのでオルクス大迷宮などの名前が記録される場所はハジメが助けられる環境が整うまではいけないのだ。
「……付いて行く」
故に付いてこないと思っていた涼夜は驚きを感じる。
「いいのか?迷宮には当分潜れないぞ」
「……うん。行くところもないし、涼夜と旅をしている方が強くなれそう」
涼夜から強くなるために色々教えてもらったり、強い敵と戦ったりしたファナにしてみれば涼夜と一緒に旅をする方が強くなると思った。それ以外にも理由があったがそれは心の内に留めておく。
「…わかった。ならここに留まる必要はないから明日ここを発つ。用意はしておいてくれよ」
「……うん」
今後の話は終わり、寝るまでの時間はそれぞれ食事を摂ったりと自由に過ごした。
そして翌日に物資の用意をして公国を発った。
***************
公国に向かった時よりも遅い二週間という時間をかけてかけてようやくフューレンにたどり着いた。なぜかというと空間魔法の練習をしていたからだ。空間魔法は上級魔法よりも魔力を消費するのでマウンテンバイクに回せる魔力が減ったためである。
涼夜は何度もの詠唱により理論理解で空間魔法の真髄すら凡そ理解した。ファナは涼夜みたいなチートは持っていないのでようやく空間を斬ることができるようになったぐらいだ。
「……そういえば前回はこの街全然見て回れなかったし、今回は回るか」
フューレンの宿で警備の良い宿を取り、部屋で一息ついていたとき、不意に涼夜が窓の外を見ながら呟いた。窓の外からはいろんな露店が見えるのでそれを見て回りたくなったのだろう。
「俺は露店見に行くから鍵をーー」
「……私も行く」
「……え?マジ?」
涼夜が断ってから出かけようとするとまさかのついて行くという返しに思わず聞き返してしまった。
「…私も買いたいものがある」
強くなること以外には興味がないと涼夜は思っていたがどうやら違うようだ。
「じゃあ一緒に行くか」
涼夜とファナは警備が厳重な宿なので荷物は置いていっても大丈夫だと考え、大事な荷物だけを持ち部屋を出た。
さすが商業都市と言うべきか露店はかなり賑わっており、涼夜が見たこともない商品が売ってあったり、水族館などの娯楽施設もあって観光するにはもってこいの場所だった。
涼夜は露店を巡り歩き、商品を物色していく。珍しい商品なんかがあると立ち止まってゆっくり吟味したり、商品を見て調合のアイデアを膨らませたりした。
こういうのが楽しく、ちょっとはしゃいでいた涼夜だったがファナが隣でただ見ているだけで時折影を落としていたので気になって尋ねてみる。
「……なぁ、どうしたんだ?他に行きたいところでもあるのか?」
ファナは首を振りながら無理に笑顔を作りながら答える。
「……ちょっと昔の事を思い出していただけ」
ファナはちょうど露店で買い物をしていた親子を見つめてかつての自分を重ねて遠い過去を幻視する。
父親の手を引きながら笑顔で歩く少女。引っ張られながらも笑顔でついていく父親。それを後ろからほっこりした顔で見守る母親。
そんな風景がファナのみならず、ファナの哀愁漂う姿と言葉から想いを察した涼夜にも浮かんでくる。
「……次、行こうよ」
「…あ、ああ。そうだな」
それも一瞬。ファナはすぐに普段の雰囲気に戻り、涼夜に先を促す。涼夜はそれをみて、ちょっとだけどうにかしてやりたいと考えていた。
「買いたいものはなかったのか?」
「……うん」
結局、ファナが欲しかったものは見つからなかったらしい。途中、何個か目に留まったものがあったのか少し立ち止まったりしていたが手に取らずに素通りしていた。
「……まあ、なんだ。…また探しに来よう。今度くればあるかもしれない」
気遣いの言葉をかけようと涼夜は頭の後ろを掻きながらなれない事を言う。それにファナは一瞬目を見開いていたがすぐに笑顔になってお礼を言った。
「……ふふっ、ありがとう」
涼夜は肩を竦め、なんでもない様に装う。だがファナに見透かされているような気がして照れくささから少し顔が紅くなっていた。
***************
あの後宿に戻り、装備の点検、補充などをして翌日。涼夜たちは金銭が必要だったので依頼を受けるためにギルドにやって来ていた。
「討伐系ってないのか?」
「……倒したかわからないから基本ない」
掲示板を見ながら呟く涼夜。依頼としてあるのは護衛系や採取系、捜索系のものばかりで討伐系のものはほとんどない。ファナが言うようにゲームのように討伐数をカウントなどできないので基本は駆除や排除の依頼が出るくらいだ。駆除なども今は魔物の生息区域がほとんど変わらないので出回ることは少ないのだという。
「なるほどな。なら適当に魔物狩って素材を換金した方が依頼受けるより楽か」
「……うん、一番効率がいい」
「よし、それで行こう」
依頼を受けないことに決め、涼夜はギルドの出口に向かおうと出口の方に一歩踏み出すとするが、なにかをみて固まってしまう。何事かとファナが涼夜の視線の先を見ると、そこには兎人族の女性と金髪の少女、そしてその2人に挟まれながら
涼夜が固まっている間に少年たちがこちらにやってきた。そして白髪の少年も涼夜を見た瞬間に同じく動きを止めてしまう。
「ーーーハジメ、なのか?」
声を絞り出すように呟く涼夜。
「……涼夜」
そう少年が呟くのが聞こえると涼夜の頰に暖かいものが流れた。
ハジメをどう動かせばいいのかわからない…
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