器用貧乏な職業で魔王の左腕   作:DQkzk

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私は暗い話が好きなのかな……

お気に入りが増えてました!ありがとうございます!

そして評価を下さった風戸さんありがとうございます!

これはちょっと頑張らねば……


再会前 ハジメ

 

時間は遡る。

 

ハジメがユエと共にオルクス大迷宮の攻略を終え、オスカーの住居区で英気を養っている頃、ハジメは手に入れた錬成魔法でアーティファクトを生成しているとユエからある事を聞かれた。

 

「……涼夜って誰?」

 

「ーーーーは?ユエ、なんでその名前を知ってるんだ?」

 

ハジメはユエから言われた言葉が余りにも予想外すぎて固まってしまった。

 

「…………眠っているときに言ってた」

 

「マジかよ」

 

ハジメは思わずうな垂れた。流石に男子の名前を呟いているのを聞かれるのは思春期の男子が親にエロ本を見つけられたぐらいの羞恥を感じる。

 

ハジメはできれば言いたくはなかったがユエが催促するようにじっと見つめてくるので仕方なく言う。

 

「……涼夜はオレの親友ーーーだった奴だ」

 

「……()()()?」

 

ユエはハジメの妙な間に違和感を感じた。ハジメが自分の気持ちを押し殺しているような、そんな違和感。

 

「……こんな話はいいだろ。それよりもーー」

 

「……ダメ。ちゃんと話して。ハジメの事もっと知りたい」

 

ハジメは話を強引に切り、逃げようとするがそれをユエが許さない。この機会を逃せばもう二度とハジメは話さないし、決定的な何かを失ってしまう。そんな確信がユエにはあった。

 

「……はあ、わかった。けどこれを聞いたらユエは軽蔑するかもしれない」

 

「…そんな事ない。私の居場所はハジメ(ここ)だけ。決して()()()()()

 

「…ありがとな、ユエ」

 

「ん……」

 

ハジメはユエが絶対の約束をしてくれた事に感謝しながら頭を撫でる。そして涼夜について話し始める。

 

「……涼夜とはこの世界に来る前なら親友といっても良かった。だが、この世界に来た後は何か涼夜との差を感じていた。嫉妬していたんだ」

 

「……ハジメが嫉妬?」

 

ユエが首を傾げるのをみて思わず苦笑が出るハジメ。

 

「前に言ったろ?オレはここに落ちる前は《無能》だったって。……続けるぞ」

 

ハジメは懐かしむように、そしてどこか辛そうにポツリと話す。

 

「…涼夜はオレとは違って有能だった。他のやつから期待されていた。なのに《無能》と呼ばれたオレと一緒に生き残る術を模索してくれたり、オレの味方でいてくれた。

…それが涼夜の優しさだとわかっているが辛かった。自分との差をさらに感じることになったからだ。嫉妬でオレの心の中で涼夜との距離ができてしまった」

 

(……涼夜は気づいてないだろうけどな。)そうハジメは自嘲して続ける。

 

「そしてオレは奈落に落ちた後、嫉妬していたにも関わらず涼夜に頼ろうとした。『涼夜、助けてくれ』ってな。涼夜ならなんでもできる、きっと助けてくれると心のどこかでずっと思っていたんだろうな。

でも、それで助けに来なくて理不尽な怒りを持ってしまったんだ。『なぜ助けに来ないんだ!』と。……後から考えるとあんまりだよな。

 

だから今、こうして改めて考えてみると、オレは涼夜を親友って呼んじゃいけないと思ったんだ。こんな考えをするやつが名乗っていいものじゃない。

だから過去形なんだよ」

 

ハジメはそう締めくくる。笑顔を浮かべて。

 

「……そう。

 

………じゃあなんでハジメはそんなに()()()なの?」

 

ユエはハジメに持っていた鏡を見せる。そこに映ったのは笑おうとしているが沈痛な面持ちで今にも泣き出しそうな顔をしている自分自身だった。

 

「…………は?なんでーーー」

 

ハジメは意味が分からなかった。思い出は思い出(過去)であり、今は割り切っているはずだ。なのにこんな顔をしているのはおかしい。

 

「……ハジメ自身が親友じゃなくなったってことを否定しきれてないから」

 

「オレ自身が?」

 

「……ん。もっと涼夜って人やこの世界に来る前のことを話して。話しているうちに気づくこともあるはず」

 

ハジメは話すのを一瞬躊躇った。こんな事を話したところで何に気付けるか全く分からなかった。だがハジメがユエを信じる事が出来ないならこんな関係にはなっていない。故にハジメはユエを信じる事にした。

 

「……あんまり楽しい事じゃないけどいいのか?」

 

「……ん、聞かせて」

 

ハジメはユエにこの世界に来る前の事を語った。両親の事、高校で涼夜に出会った事、涼夜と一緒にふざけあった事、学校で目の敵にされていた事、思い出せる範囲でいろんな事を語った。そんなハジメを感情豊かに(ハジメにしかわからない程度)聞くユエにハジメも興が乗ってつらつらと語る。

気づけば正午ごろに話し始めたのに既に辺りが暗くなるまで話し込んでいた。

 

「ーーっと、もうこんな時間か。あんまり面白い話でもなかっただろ?」

 

「……そんな事ない。ハジメの事を聞けて嬉しかった。それにーー」

 

ユエは言葉を止め、何故か嬉しそうに、

 

「ーーハジメが涼夜って人のことを大切にしているってわかったし、相手もそうだってわかったから」

 

そう、言い切った。これにはハジメも驚いた。何故そんな事がわかるのかと。

 

「……その人の話をしている時のハジメは嬉しそうだし、話の中で毎回ハジメのために動いてくれてる。これだけわかれば十分」

 

「……そんなに嬉しそうだったか?」

 

ハジメが聞くとユエは頷いた。だがその後ちょっとむくれながら「……私といる時よりも」と呟いたのでハジメがユエを抱きしめ、頭を撫でてしまったのは悪くないはずだ。

 

「んっ……」

 

ユエは気持ち良さそうに身を任せて撫でられ続けた。

 

「……オレは涼夜と親友でいたいってまだ思っているのか」

 

ユエを撫でながらハジメはようやく理解した自分の心の内を呟く。それを理解すると同時に色んな不安に襲われた。性格が変わってしまった事を理解されないかも、忘れられているなどの不安に。

そんな事を思い、少し沈んでいると撫でていないもう片方の手に温もりを感じた。

 

「……きっと大丈夫」

 

ユエがハジメの手を握って慈愛に満ちた表情で諭す。ハジメは心の内を見透かされたのに目を丸くするがすぐに笑顔になりユエにお礼を言う。

 

その後2人が何をしたかは想像に任せよう。

 

 

 

***************

 

 

 

それから時間は進み、シアが仲間になって挑んだライセン大迷宮での事。

 

ハジメたちはミレディのうざい彫り字やトラップにイライラしながらも進んでいき、最奥でミレディのゴーレムを倒し、神代魔法《重力魔法》を手に入れた後。

 

宝物庫を寄越せと脅すハジメにミニ・ミレディからある事を言われた。

 

「ーーさっきから説明してる通り、迷宮の維持に必要だからあげられないって。ーーーそれよりも《万能者》って知ってる?」

 

「ーーーっ……何の事だ?それよりも早く《宝物庫》を寄越せ」

 

ミレディが会話の途中に急に混ぜてきた言葉の内容にハジメは一瞬動揺してしまう。その動揺をミレディは見逃さなかった。

 

「ふーん、なるほどね。ならその子に言っておいてよ、『この迷宮に挑め』って。……だから、あげないってば!」

 

ミレディが喋っている間にハジメが《宝物庫》を奪おうとするので声を荒げながらミレディは逃げる。ヒョイヒョイと躱すミレディは尚も言葉を続ける。

 

「《万能者()》は希望であり、危険因子なんだ」

 

そういうとミレディは壁際の天井付近のブロックに乗り移る。

 

「それはどういうーー」

 

ハジメはミレディの言葉の真意を尋ねようとするがそれは叶わなかった。

 

「ーーもう、人の話を聞かない人には強制的に出て行ってもらうよ!ええいっ!」

 

ミレディは天井から垂れ下がっている紐を引っ張った。すると「ガコン!」というトラップが作動した音が響き、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は、瞬く間に部屋の中を激流で満たす。同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。

 

「なっ!てめぇ」

 

ハジメはこの状態がまさに便所のようだと気づき屈辱に顔を歪める。

 

「嫌なものは水で流すに限るね☆」

 

ミレディのうざったい声が聞こえる。ユエは咄嗟に全員を激流から飛び出させようと魔法を発動させるがミレディの重力魔法によって阻まれる。

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

「ケホッ……許さない」

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

 

人を汚物のように流すしているというのに呑気に喋るミレディに捨て台詞を吐くハジメたち。激流に呑まれる瞬間、ミレディがボソッと呟いたのをハジメは聞き逃さなかった。

 

「《万能者()》が呑まれないように気をつけてね」

 

 

 

 

***************

 

 

 

「……ハジメ、考え事?」

 

「……ミレディ大迷宮での事をな」

 

護衛任務中、ハジメがオルクスでの事やミレディが呟いた言葉について考えているとハジメの思案顔に気づいたユエが尋ねてくる。

 

「……《万能者》の話?」

 

ここ最近あった事でハジメが考えるような事など万能者の話しかなかったのでユエはそう尋ねるとハジメから肯定として返ってきた。思ったよりも複雑な返しだったが。

 

「……ああ。《万能者》は前に話した涼夜ってやつの天職なんだ」

 

「…………」

 

「えっと、涼夜って方は誰なんですか?」

 

涼夜の事が分かっているユエはハジメの答えを聞くと難しい顔をして黙る。涼夜の事を知らないシアは首を傾げおずおずと尋ねる。

 

「……オレの親友だ」

 

「ええっ!ハジメさんに親友なんていたんですか⁉︎」

 

シアはハジメのような傍若無人の振る舞いをする人に親友と呼ぶ相手がいた事に驚きを感じ得なかった。たしかにいつもシアのように興味のない相手には冷酷なハジメが親友などと呼ぶのは違和感があり過ぎだった。

 

シアの驚きように額に青筋を浮かべるハジメ。ユエにシアに甘くしろと言われているがこれは流石に看過できなかった。

 

「おい、駄ウサギ。どういう意味だ」

 

ハジメはシアの頭を捕まえ、アイアンクローをかます。

 

「きゃあああ、ハジメさん、すいませんでした!だからやめてくださいですぅ〜」

 

そこまで怒ってはいなかったので手を離すハジメ。ただ調子に乗りそうだったので釘をさす意味でやっただけだ。

 

「うぅ、痛いですぅ」

 

シアは痛みに蹲り、顔をさする。それをユエがよしよしと撫でているのをみてハジメはかなり仲良くなったものだと素直に思った。

 

「……むぅ、わからない」

 

ユエは万能者について考えていたようだが結局答えが出ず、思わず唸る。オスカーの住居区にも万能者についての記述もほとんどなかったし、判断材料が少なくて考えても意味がなかった。

 

「オレもさっぱりだ。だがミレディの言葉が何にせよ涼夜に会うことは当分ない。会うその時が近くなるまでに考えればいいさ」

 

「……」

 

「……なんかフラグっぽいですぅ」

 

呑気に言うハジメ。その言葉を聞いてフラグっぽい感じがするとユエとシアは危惧する。実際その通りでハジメは涼夜の事を後回しにしたのを後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメさん、フューレンが見えてきましたよぉ」

 

あれから数日後、ハジメたちが護衛していた商隊はフューレンに到着した。

 

「…ようやくか。長かったな」

 

ハジメたちは検問を通過し、都市内に入る。途中、一悶着あったがここでは割愛しよう。

 

ハジメたちは護衛任務を終えたので依頼完了の報告をするためにギルドに向かう。

 

「とりあえず宿取ったら少し観光でもするか?」

 

「……ん」

 

「したいですぅ!」

 

ハジメが観光の提案をして2人が賛同したりしてそれについて話しながらギルドに入る。

 

依頼完了の報告をするためにまずはカウンターに向かおうとするが途中の掲示板の前で1人の男と少女が立ち止まってこちらをみていた。

最初ユエとシアに見惚れているバカなやつかと思ったがその男はハジメをずっと見つめており、しかもここにいるはずのない者に酷似していた。

 

思わず足を止めてしまい、少しの間沈黙が流れる。すると向こうが沈黙を破り、掠れたような声を出した。

 

「ーーーハジメ、なのか?」

 

その声は凄く聞き慣れた声であり、その人物が容易に分かってしまった。

 

「……涼夜」

 

ハジメは突然の再会に困惑しながらその人物ーー涼夜の名前を呼ぶ。すると涼夜の頰を涙が伝った。

 

「ハジメッ!」

 

涼夜の涙にさらに困惑を深めるハジメだったが涼夜の次の一言で何かが氷解していった。

 

「……ごめん、助けられなくて。

 

ーーーーそして、生きてて良かった」

 

ハジメは自分の心の中で何か温かい物が生まれるのを感じながらこう答えた。

 

「……ああ、迷惑かけたな」




オリジナル要素って大事ですよね。

多分次は早めに出ると思います。
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