失踪だけはしませんのでこれからもよろしくお願いします!
一応、ここ分岐です。……書くかはわからないけど。
「ーーーーーオレ達についてこないか?」
「……悪いが、それはできない。約束があるからな」
「約束?」
「『戻ってくる』ってあいつらに言ったからな。心配させるわけにはいかないから戻らなきゃいけねぇ」
「……そうか」
涼夜はハジメの申し出を断った。それは約束を守るためであり、果たさなければならない思いがあるからだ。
ハジメは元からそこまで期待はしていなかったのか理由を聞くとすぐに引き下がった。ハジメに大切な物や譲れないものがあるように涼夜にも大切な物や譲れないものがあるとわかっていた。
「……それだけか?」
涼夜はこの為だけに来たのかと聞いた。この内容だけならファナに席を外させる意味はない。
「いや、他にもある。涼夜、お前ライセン大迷宮を攻略するつもりか?」
「……そうだな、攻略はできることならしたいな。たが場所もわからないからいけないし、何より強くなる為だけならオルクスで事足りるからしなくても平気だな」
神代魔法は気になるけどな、と涼夜は苦笑を浮かべる。もう二度と大事な物を失いたくないから強くなりたいとは思っているがそれでも優先順位というものがある。自分がいない時に死んでいたなんてごめんである。
「……場所がわかったら攻略するのか?」
「する。王国に行く途中にあるなら尚更だ」
「……あの人のためか?」
そう言ってハジメは今、この部屋にいないある少女を思い浮かべる。涼夜はその言葉にハジメから目を逸らし、まあな、と答える。
「……初めはどうでもよかったんだけどな。無理やりついてきて正直迷惑だったが、旅を続けてファナの身の上を聞くと情が湧いてきてな。
……笑っちゃうだろ?赤の他人なんてどうでもいいと思っていた俺が会って数週間の奴のために動くなんてさ」
涼夜は自嘲しているように喋るがその顔はどこか嬉しそうで後悔の念など微塵も感じられなかった。
「……涼夜の根本はお人好しだよな」
「それは空気を読める天之河のようなやつだろ?」
ハジメの漏れでた言葉に少し嫌そうに答える涼夜。涼夜に善人だという自覚はない。むしろ冷たいとさえ思っている。関心がなければ関わる気などないし、ましてや誰彼と助ける訳ではないのだ。
(……お前が自分から行動したり、怒ったりするのはいつも他人のことだろうが)
ハジメは言葉には出さず、心の中でごちる。そもそも涼夜は怒ったりなどはほとんどしないがハジメが知っている中で涼夜は自分のことで怒っている姿を見たことがない。他人になにを言われようとどうでも良さげに受け流しているし、それのための対策なんてまずしない。
涼夜が動くときはハジメのためであったり、八重樫のためであったりと、親しい者が何かされたときだけだ。
ハジメがからかわれたりすると少し雰囲気がピリッとしたものに変わっていることに恐らく涼夜は気づいていないだろう。
「…はあ、まあいい。なら涼夜、ライセン大迷宮の場所と概形を教える」
「……なるほど、ライセン大迷宮を攻略したのか。助かる」
ハジメは涼夜にライセン大迷宮での出来事を語る。一部、伝えられないことを除き、罠の種類や煽りなどを伝える。ハジメの体験からの主観なので少し脚色が入っているが概ね正しいだろう。コンセプト的にはこれ以上ない説明だ。
「うわぁ、行きたくねぇ」
ライセン大迷宮の内容を聞いた涼夜は心の底から嫌そうに顔を顰める。ライセンの内容を聞いたら間違いなくそう思うだろう。それだけのウザさがライセン大迷宮にはある。
「オレも二度と行きたくないが、
ーーーーー行ってくれ、頼む」
「……何かあるんだな」
「……」
「……わかった、行くよ。ハジメがそんな風に言うってことはそういうことなんだろ?」
「……ああ」
ハジメが頷き、返事をすると涼夜は立ち上がり緊張した空気をほぐすためか大きく伸びをする。
「よし、じゃあ攻略のための作戦とか詰めるか!ハジメに色々聞きたいこともあるしな」
涼夜の提案に頷き、作戦などを詰めていく。罠の対処法や移動方法を話していくうちにふとハジメが笑みをこぼした。
「……どうした?」
「いや、こんな風に前も色々話し合ってたなぁって思い出してな」
「……そうだな」
懐かしそうに呟くハジメに涼夜も笑みをこぼす。
「さて、あともう少し詰めたら終わりにするか。明日、早く出るんだろ?」
「ああ。依頼の内容上、早く見つけてギルドに恩を売ったほうがいいからな」
涼夜とハジメは雑談を交えながら作戦を練っていく。その中で涼夜が手に入れた指輪が『宝物庫』だったり、涼夜がハジメの錬成の魔力操作を見て魔力操作が使えるようになったり、ギルドでのファナの行動について話したりと、色々な事があった。
しばらく話して夜も更けてきたところで解散した。
***************
一方、その頃。
ファナは自分の部屋から出て、する事もなかったので1人で月でも眺めてようかと廊下を歩いていると、ばったりシアと遭遇した。
「えっと、ファナさんでしたよね?どうしたんですか?」
「……ちょっと部屋に居られなくなったから」
シアはファナの返事を聞いて一瞬、頭にはてなマークが浮かんだがすぐにある事に思い至った。
「?、ああ、そういえばハジメさんが涼夜さんの部屋にいくって言ってましたね。……よかったら私たちの部屋に来ます?」
「……えっ、と…」
シアの提案にファナはどうするか迷った。涼夜には行ってもいいとは言われたが、ファナからしてみれば他人の部屋。ましてや今日会ったばかりの人だ。
「……シア?どうしたの?」
ファナが答えに詰まっているとシアの後ろから声が聞こえてきた。
「あ、ユエさん。ちょっとファナさんに出会って部屋に来ないかと誘っていたところなんですぅ」
「ん……なら、連れていこう」
シアの後ろから現れたのはユエでシアから話を聴くとなぜかファナを部屋に連れていくという事を言い出した。
「……え?ちょっと…」
「……聞きたいことがある」
ファナは困惑していたが、ユエに手を取られ半ば強引に部屋に連れ込まれた。振り払うこともできたが、涼夜の友人の仲間を無下にする事は良くないと、そのままなされるがままになった。
備え付けの椅子に座らされると対面の椅子にユエが座り、その隣にシアが座る。
「……あの人のことを教えて欲しい」
「あ、それは私も聞きたいですぅ」
ユエは単刀直入に涼夜との関係を訪ねてきた。シアも興味津々といった様子だ。聞く理由は2人でかなり異なるだろうが。
「……どうして?」
ファナは聞かれたことに対して疑問を覚えた。会ってすぐの相手に聞くことではなかったからだ。
「……ハジメから聞いた印象と少しズレがあったから」
ユエはギルドでの涼夜の姿からハジメから聞いていた印象と少し異なるように見えた。だからこそ、ハジメの敵になり得る人間なのか確かめたかった。
「…そうなんだ。私から見た涼夜の話でいいの?」
「ん……」
「…シアさんも、そんな理由?」
「えっ、そ、そうですねぇ」
シアは視線を泳がせながらそっと目を逸らした。自分だけは不純な理由で聞こうとしていた事に若干の後ろめたさを感じた。
ユエからジト目を頂いたシアは誤魔化すように笑った後、うさ耳を垂れさせ、落ち込んだ。その光景にファナは苦笑いを浮かべ、空気を変えるように話し始めた。
ファナはホルアドでの涼夜との出会いから、グリューエン大火山攻略までの出来事を話した。
「ーーーー。これくらいかな?」
「ん……ありがとう」
「つまりファナさんは親の仇を取るために涼夜さんと強くなるための旅をしていると、そういうことなんですね」
ファナの話を聞いて各々、複雑そうな顔をする。涼夜のことを聞くつもりがファナの過去をも知ることになってしまった。
「……少し、違う」
シアの言葉にファナは否定を入れる。
「……違うの?」
「……強くなるためについていこうとしていたけどそれ以上に涼夜に助けて貰った恩を返したかったから。…あの時、助けて貰わなかったら何も出来ず、私は死んでいたはずだから」
ファナは助けて貰った時の光景を思い出した。雑な助け方だったが涼夜はきちんとファナを守っていた。なぜ助けてくれたのかは未だにわかっていないが涼夜の時折見せる優しさだったのではないかとファナは思っている。
ファナが今は見慣れた涼夜の背中を思い出ているとユエとシアが笑みを浮かべているのが目に入った。
「?……どうしたの?」
「……ファナ、嬉しそう」
「…私が嬉しそう?」
「ええ、まるで
シアに言われ、ファナは自分の心の中に何かの暖かさがあることを感じた。それは今まで気にしていなかった感情であり、感じたことのない初めての感情であった。
「……好きな人?涼夜が?」
両親が殺され、ただひたすらに強さを求めてきたファナには今までそんな感情を持てるほど余裕がなかった。というより、他者にあまり関心がなかったとも言える。
他者と深く関わってこなかったファナにとって涼夜は初めて深く関わった他人であり、しかも異性である。故にファナは涼夜との接し方がいまいち掴めず、変な距離感が生まれている。
「……わからない。好きっていう感情がよくわからない」
「……ん、なら聞き方を変える。ーー仇をとったらあの人とは別れるの?」
そうユエがファナに問いかける。
別れる、そんな考えをファナは持っていなかった。ファナの頭にあったのは涼夜とともに旅をして、仇を取るために強くなることだけだった。
ファナは自問する。
涼夜と別れてどうするか。ーー思いつかない。
なら、涼夜と旅をしたいか。ーーーしたい。できることなら長く。
涼夜と別れるのは嫌か。ーー嫌だ。もう、親しい人が居なくなるのはごめんだ。
ーーーーああ、なるほど。答えはでていたんだ。
「……ううん、一緒にいたい」
ファナは力強く答える。もう、わからないなんてことはない。自分の気持ちを理解した。
「ん……それでいい」
ユエはファナの姿をみて、うんうんと頷いてニッコリと微笑んだ。
「恋する乙女同士、頑張りましょうね、ファナさん!」
「……シア、いたの?」
「ええっ!私、確かに空気になりかけてましたけど、それは酷いですぅ、ユエさん」
「…ふふっ」
ーーー人肌が恋しかっただけなのかはわからないけど、涼夜と一緒にいたいという気持ちは事実。だから、私はーー
その後、部屋にハジメが来るまで女子トークが繰り広げられていた。
****************
翌朝、街の門の側に5人の人影があった。
「アーティファクト、ありがとうな。お陰で移動や攻略が捗りそうだ」
「いや、礼を言うのはオレもだ。あのアイデアはオレにはなかった」
お互い、自分たちが乗るアーティファクトを取り出して出る準備をする涼夜たち。そして準備が終わると2人は拳を合わせ言葉を交わす。
「また、どこかで会おうぜ」
「ああ、そうだな」
昨日、涼夜たちが話している時に仲良くなっていたのか今も喋っているファナたちを呼んで、それぞれ二輪に乗り込む。
「ーーああ、それと言い忘れてけど」
街を出て行こうとする間際、涼夜が独り言のように喋る。
「ーーーーお前が何を悩んでいるかは知らねえが、何があってもハジメはハジメだ。自分を見失うなよ」
そう涼夜は言い残すとそのままバイク(性能は上がったがダサいままのマウンテン)で走り去った。
ーーかっこつけていたのかは知らないが、マウンテンバイクなのでダサいことこの上なかった。
「……ダサいな、あれ」
「……ですね」
涼夜の後ろ姿に苦笑いを浮かべるハジメたち。
「ん……でも……」
「ああ、ユエ、わかってる」
ユエに言われるまでもなく、ハジメは涼夜の言葉の意味をしっかりと理解していた。額面通りの言葉だけでなく、その真意も。それなりの時間、親友をやっている2人だからこそわかることもある。ユエがわかっているのは女の勘かはてさて。
「さて、オレ達もいくか」
「ん……」
「出発ですぅ!」
ハジメ達もバイクに乗り、依頼をこなすために走り出す。
この先に待ち構える困難をハジメ達や、涼夜達はまだ知らない。
ハジメが部屋に戻ってきた時の出来事。
コンコン、ガチャ
ハジメ「今、戻……」
ユエ「ん……お帰り」ナデナデ
シア「お帰りなさいですぅ」
ファナ「!!」ガバッ
ハジメが見た光景はユエにヨシヨシされてダラけた顔になっていたファナだった。
ハジメ「あー、うん、涼夜には言わないから、な?大丈夫だから」
ファナ「…失礼します」スタスタ
ユエ「……むぅ」
シア「…あはは、仕方ないですよぉ〜」
ハジメ「……」
その後、妙に顔を赤くして部屋に戻っていって涼夜に驚かれた子がいたとか居ないとか。
一応、涼夜チート化(微)計画開始でございます。人の範疇は超えません。