ステータスの報告が終わった後、すぐに訓練が始まった。まずは魔法の適性から測った。それぞれが魔法陣を書き、魔力を注いで魔法を発動する。魔法陣の式をどれだけ省略できるかが肝心らしい。
ひとしきりやってみた結果は全ての魔法に適性があった。ただ一点特化のやつの魔法に比べると威力やスピードが悪く、ここでも器用貧乏が発生していた。涼夜の目尻に光るものがあったとしてもきっと気のせいだ。
メルドからは褒められたが全くもって嬉しくなかった。なぜなら、
「全ての属性が使えるとは素晴らしいな!威力は……うむ、実戦で使えないことはないだろう。スピードも……大丈夫だろう」
と言われたからだ。うん、気を遣ってくれるのはありがたいんだが言い淀むなよ!すごく悲しくなるだろ!
クラスメイトから憐憫の目で見られ、さらに落ち込む涼夜。
ちなみにハジメは魔法の適性がなかったらしい。1人端っこで錬成してた。
昼食を挟んで次に行われたのは剣術などの体力系メニューだ。自分がなにが扱いやすいかを確かめる感じだ。
涼夜は全ての武器を使ってみたら全てが同じくらい扱えたのでメルドから「最初はいろんな武器を使ってみて1番上達率が良かったのを使えばいいんじゃないか?」と言われたのでとりあえずそれでいくことにした。流石に武器は特化しているのがあるだろう。……あるよな?
ここでもハジメは根っからのインドア派だったのでそこまでうまく使える武器がなかった。
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「はあ」
「おいおい、そんなに落ち込むなって。錬成だって使いどころはあるって」
訓練も終わり、自分の部屋に戻ってきた涼夜とハジメ(涼夜とハジメは同じ部屋)。部屋に着くなり盛大にため息を吐いたハジメ。涼夜はフォローしようとするが正直これでもかっていうぐらいハジメの境遇が酷いのでフォローがしづらい。
「いや、流石にこれはないよ。異世界きて俺TUEEEEEEかと思ったら最弱だよ……」
「……まあ、魔法適性ゼロで武器の扱いも上手くない。ステータスも平均で一般人だもんな」
グサッグサッとハジメの心に言葉のナイフが突き刺さる。改めて他人から言われると自分が思ってる以上に辛い。思わず机に突っ伏す。
「……でも、錬成なら誰にも負けないことができるんじゃないか?」
「……どういうことだよ」
だが、涼夜の次の言葉に思わず顔を上げる。どうしてそんな結論になるのかよくわからなかった。
「考えてもみろよ、俺たち異世界人全員が個性的なチートスペックを持ってるんだぜ?だったらお前だけないなんてあり得ないだろ。ということはつまりお前の場合は錬成のスキルの力(?)というかそんな感じのがオーバースペックなんだろうよ。最初は弱いだろうけど潜在的な力は最強……のはずだ!」
「おい、そこはちゃんと断言してくれよ……」
ハジメは呆れ顔をみせているが幾分かさっきまでの表情より柔らかさが出ていた。
「まあ、とにかく錬成だったらなにができるか考えようぜ!そっちの方がよっぽど建設的だろ?」
涼夜がドヤ顔でサムズアップをする。それにハジメは苦笑しながら了承し、2人でああでもないここでもないと錬成案を出していった。
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訓練初日から2週間経った。あれから涼夜はハジメと一緒に錬成の研究を始めた。図書館が空いてる時間は図書館にこもってこの世界の知識を溜め込みつつ、「この鉱石はこの武器に使えないか」「この鉱石で効果上昇が見込める」など具体的な案を出してそれをノートにまとめていた。お陰で一応2冊分の知識、及び考察ができた。
一応拳銃の製作の目処は立ったので素材を集めて作るだけだ。素材が王国にあるのかは不明だが。
ちなみに涼夜は錬成もなぜかできた。ただやはりハジメより錬成速度が遅かった。器用貧乏といわれるだけはあった。
研究だけに時間を割くわけにはいかなかったので訓練もちゃんと行った。お陰で涼夜のステータスはこんな感じだ。
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有賀涼夜 17歳 レベル5
天職:万能者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:200
技能:万能者・気配察知・言語理解
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魔法は全て少しずつだが威力が伸びている。武器の扱いもなぜか全て武器において同じくらい上達した。やっぱり突出してできるものがなかった。
そこでメルドやハジメに相談したところ「自分がしたい戦闘に合わせて武器を選べばいい」といわれたので(尚、ハジメの戦闘スタイルも一緒に考えた)動きを阻害しない武装で遊撃のようなスタイルにした。「なんでもできるから対応力を磨け」と言われた。
……器用貧乏の道まっしぐらな気がするが考えないようにした。考えたら涙が出てきそうだから。
ハジメは罠で足止めをしてその隙に錬成で投擲武器を作り出して某エミヤさんよろしく投擲で倒す。
これは時間がかかる上に一対一の時しか使えないので涼夜とのツーマンセルが基本形だ。
そして万能者の技能が一体なんなのかという推察もしてみた。技能欄にない『錬成』ができたことから万能者の中に含まれているということがわかる。さらに剣などの武器全ての適性もあったことからこれも万能者に含まれていると考えられる。
この事から推測すると、涼夜のスキルの内容は恐らく全適性補正のようなものだろう。だがそう考えるとおかしなことがある。ある一定の水準まで上達するとそれ以降の伸び率がゼロになることだ。限界値が来てるのかそれとも技能の影響なのかこればかりは自分ではわからない。…-これでは万能者じゃなくて器用貧乏だろう。
まあ、適性補正がついているとだけ覚えておけば大丈夫だろう。……気にしてない、本当だぞ。
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訓練の時間までハジメと一緒に図書館で知識を漁り、錬成の精度を上げる。ハジメはポンポン精度が上がっているのに対し、涼夜は錬成のスピードが10分になってから縮まらなくなった。
訓練の時間が近づいてきたので2人で訓練場まで歩いていく。その道中では錬成の話をしながら進む。ここ最近は錬成以外の話をあまりしなくなった。それだけ今の状況に危機感を覚えているということだろう。
訓練場に着くと既にほかのクラスメイトが自主練やら雑談やらをしていた。
「ハジメ、どうする?」
「そうだね、接近されたときの身の守りを重点的にやりたいな。命を繋げるくらいにはしておきたいし」
「よし、じゃあ軽い模擬戦でもーーーチッ」
涼夜が顔を顰め、あからさまに嫌そうな態度をとる。涼夜がこんな態度をとる相手は決まっている。ハジメも心底嫌そうな顔をして振り返る。そこにはやはり檜山たち4人組がいた。
「よお、南雲。なんで訓練場にきてんだよ?
「ちょっ、檜山言い過ぎwそんなこと言ってやんなよ、ギャハハ!」
ハジメをバカにして4人で嘲笑する。なにがそんなに面白いのかハジメにはわからない。涼夜に至っては完全にその辺の石を見るようなどうでも良さそうな目を向けている。完全に人間として見ていない。
「なあ、こいつ可哀想だから俺たちで稽古つけてやらね?」
「あぁ? おいおい、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし? 稽古つけてやってもいいけどさぁ~」
「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」
そういってハジメの肩に馴れ馴れしく組もうとしてくる。流石に看過できなくなってきたのか涼夜がハジメと4人組の間に割り込む。
「俺のこと忘れてないか?訓練してくれるんだったら俺も混ぜてくれよ」
檜山が涼夜に少しムッとした顔をしたがすぐに余裕の笑みを浮かべだした。
「あぁ、いいぜ。有賀、お前も一緒に稽古してやるよ」
涼夜がいても4対2なら勝てると思っているんだろう。檜山たちは既に涼夜たちをどう惨めに料理しようかを考えているようだ。
「なら、中央付近でやろうぜ。そっちの方が広いからやりやすいだろ?」
「あ、ああ、もちろん。みんなの前で、な。ヒヒヒ」
「あいつバカだなw俺たちに勝てると思ってんのかよw」
檜山たちは涼夜の提案をなにも考えず了承する。みんなの前で正当な理由で虐めることができるようになってご機嫌になっている。
だからか、まるで悪魔のようにニィッと口元を歪めている涼夜に気づかなかった。
「さあ、勝ちにいこうか」