涼夜の内心、ハジメとの出会いが書いてあります。よろしければどうぞ。
なんか途中ブレるけど情緒不安定ということにしてください。
俺の両親は共働きで、いつも家にいなかった。小さい頃から敏かった(多分)俺は両親に迷惑をかけないようにしようとなんでも一人で出来るように努力した。掃除、洗濯から始まり、料理まで。必死に、必死に努力した。
そうすることで小学1年生にしては出来すぎた子ができた。
だからだろうか、両親や周りの先生、そして同級生から期待され、《天才》と思われ始めたのは。
たしかに同年代の子よりは運動も勉強もできた。だがそれも早くから努力して先取りをしていたからに過ぎない。運動もただ足が早かっただけで周りの子からの「できるんでしょ?」という視線を受けて「できないよ」なんて言えるような性格ではなかった。だから努力した。寝る時間が少し減ったけど両親は遅くまで帰ってこないので気づく人はいなかった。
ただ涼夜は自立の時期が周りより早く、期待に応えようとしただけで、決して才能でできるようになったんじゃない。むしろ才能なんてこれっぽっちもなかった。全て努力で補っていた。
小学生のうちはまだ良かった。才能がなくても努力で補えていたから。なんでも人並み以上にできた。
だが、中学生になるとだんだん期待に応えられなくなっていった。涼夜の努力を鼻で笑うほどの才能の持ち主がいたからだ。
まず、勉強。入りたてはまだ1位近くを取れていた。でもだんだん順位が落ちていき。ついには一桁を取れなくなった。
別に一桁を取れなくてなんだとは普通思うだろう。だが、涼夜は《天才》のレッテルを貼られてしまっていたので当然、同級生には「天才ってそんなもんなんだな」「○○の方が頭いいよな」といわれ、先生には「どうした!もっと頑張れ!」と言われる。
次に運動。同級生に「運動ができるよな」という理由で連れ出され、バスケなどをやらされる。最初のうちは小学生の時から努力していた涼夜はそれなりにできていた。だが学年が2年になってきたあたりから徐々に周りも上手くなっていき涼夜との差も埋まる。そして抜かしていくやつも出てくる。
それなのに運動の才能の塊みたいなやつに抜かれたりすると「なんで止められないんだよ!」とキレられたり、決められなかったりすると「なんで決められないんだよ!」とまたキレられる。
だから「○○よりできないよね」なんて言われ出した。これはどのスポーツでも同じだった。
唯一の心の支えだった足の速さも、陸上部のやつに負け、ついに何も誇れるものがなくなった。
そして天才だからと近づいて来ていた奴らはどんどんいなくなっていった。自分に利がないと判断して去っていった。
そうなってからは周りの目が期待する目から何か残念なものを見る目に変わっていた。そして嘲りの陰口も増えていった。
なぜ、そんな目で見られなければいけない。俺は努力した、
俺の心はかなり荒んでいた。他人の1つ1つの言動にイラつくほどに。
そのイラつきを外に出してしまった。他人にあたってしまった。誰かなんて関係なく。
そして仲の良かった友達にすらきつく当たってしまい、距離を置かれた。
そして一人になった。
そこで俺は考えた。
一体、何がいけないのだろう。
ーーーああ、そうか。
人間なんて所詮、
そう考えた瞬間、俺の心の中にストンと落ちた。
ーーーああ、なら俺は
そう、心に、決めた。
***************
そして、両親が早く帰ってきた日に相談した。
「遠くの高校に通いたい」と。
流石にこれには両親も困惑したらしい。なぜなんだと聞かれたけど曖昧に笑ってごまかした。
でも、両親は深くは追求せずに了承してくれた。なんでも「涼夜の最初のワガママだ。これくらいはしてやらなきゃな」ということらしい。利己的に生きると決めた俺だが、これには思わず涙を流してしまった。
これに驚いた母さんが俺の涙を拭いてくれ、父さんが心配そうな顔をする。
両親に迷惑をかけられないという幼少期の思いが間違っていなかったのがわかって嬉しかった。そして両親の助けになろうと固く心に誓った。
***************
中学を卒業し、俺のことを誰も知らない高校に入学した。誰も俺のことを知らないということに歓喜した。ようやく、どこにでもいる普通の学生生活が送れるのだと。
だけど、現実はそう甘くはなかった。
まず、友達の作り方がわからなかった。当然といえば当然だった。なにせ
小、中は勝手に人がこっちに寄ってきた。だからそれなりに話せば友達なんて向こうから積極的になろうとしてくる。だが高校ではそんなことは決してない。《天才》なんてレッテルは存在しないからだ。
それでも頑張って話しかけたりして友達を作ろうとした。それで何人かとよく話すようになった。そしてクラスの仲間とも話せるようになった。
やっと、友達ができそうだと喜んだ。でも、ここにも《なんでもできる》がくっついてきた。
俺は前の原因を踏まえて「天才だ」みたいな目で見られないようにクラスの前では自重しようとした。だがそれはできなかった。
人間、できることをできないようにやろうとするのは難しい。それは俺も同じだった。事あるごとに失敗しようとするが出来ず、結局平均以上の力を発揮してしまった。
なので、ここでも《なんでもできる》がつきまとった。だが前みたいに《天才》レベルまではいかなかった。それは良かったのだが、俺が最も言われたくない言葉を周りからいわれるようになってしまった。
「お前、顔も性格も頭も運動神経もいいけど、やっぱり天之河よりは劣るよな」
「ねー、天之河くん、スペックが高すぎるもんね」
「○○の方がすごい」
この言葉は俺の中で形容し難い何かを生み出す。心を抉るように突きつけられる事実。俺の精神を蝕む。
なので必然とその言葉を発したクラスメイトに心の壁を作っていた。
仲良くなったやつはほとんどそう言う。
……だから結局、俺は友達を作ることができなかった。
***************
高校に入ってから半年。俺の世界は冷めていた。親友と呼べる相手は誰もおらず、クラスメイトとは上部だけの関係。一応外面だけは社交的な生徒として過ごしている。
そんな時、ひとりの男子生徒を見つけた。学校に来ても授業中はおろか昼休みでさえ寝ている。
俺は興味本位で話しかけてみた。
「なあ、なんでいつも寝ているんだ?」
そいつはビクッとしたあと、俺の質問が自分に向けられたものだと確認するとこう答えた。
「え?……家で徹夜でゲームしてるからだよ」
正直、この答えを聞いた俺は「こいつ、大丈夫か?」と思ってしまった。でも、そんな感情は表に出さずに聞き返す。半年で身につけたスキルだ。
「……そんなに面白いのか?俺にもやらせてくれよ」
俺の言葉が予想外だったのかしばらく呆けていたが、目をキラキラさせて「うん、いいよ!」といった。
これが俺と南雲ハジメの出会いだった。
俺が南雲と話して1週間。ゲーセンに行ったりして遊んだ。南雲にゲームのあれこれを教えてもらいつつ、一緒に楽しんだ。ゲームはちょうどいい暇つぶしになった。
ガンゲーにはまって寝る間も惜しんでやり込んだ。
そして今もFPSをハジメと一緒にやっていると不意にハジメからこんな質問が飛んで来た。
「有賀くん、どうして君は僕に話しかけたの?」
俺はどう返すか悩んだ。「興味本位です」というのはどうかと思った。
「んー、なんか学校はつまんなそうなのに生き生きしてたからかな」
一応、嘘ではない。南雲と過ごして感じた内容だからだ。
「へぇ〜。僕、そんな風に見えるのかな」
「俺の所感だがな。……それより俺はどう見えてたんだ?」
「う〜ん、そうだなぁ、
「なんでそう思った」
「え?だって1週間でこんなにFPSが上手くなるなんて努力しないと無理だよ。才能で片付けていいレベルじゃないよ」
俺は驚いた。俺のことを噂などで知っている奴はなんでもできる《才能》を持っている奴だと評するからだ。故に俺の本質を見抜いたーー俺が誰かに言って欲しかった言葉を言ったーー南雲に心の底から関われると確信した。
「……ハハッ、そうか!改めてよろしくな!
「??、何が改めてなのかわからないけどよろしく!」
この日、初めて俺に心の底から親友と呼べる友達ができた。
利己的は後天的ですね。根はただの努力家で優しい少年です。