その分長いので許してください。
いつものように、いつもの少女がいつもの空を飛んでいた。
その少女の名前はフランドール・スカーレット、吸血鬼だ。
ご存知の通り吸血鬼とは、曰く、夜の王、曰く、あり得ない身体能力、曰く、人の血を吸う、曰く、凄まじい生命力、曰く、曰く、曰く、、、などの圧倒的強者である吸血鬼がいるにもかかわらず、その捕食対象である人間が地上をはびこるのか、その圧倒的身体能力で人間を捉え、飼えばいいのではないか?
しかし、そうならない、何故か?それは吸血鬼があらゆる弱点を持っているからだ。
弱点、それはどんな生物でもあるもので、それは吸血鬼でも例外なく存在している。
よく知られているのは、日を浴びること、この特性があるから吸血鬼が夜の王たる所以である。
だが、ここ幻想郷には皆に忘れ去られた夜の、否、宵闇の妖怪がいることを忘れてはならない。
この吸血鬼、フランドール・スカーレット、通称フランはその常闇の妖怪と遊ぶために空を飛んでいた。
「ルーミアおまたせ〜」
気楽な挨拶と共に目的地に着いたフランは先に待ち合わせ場所にいたルーミアと会った。
常闇の妖怪。
常闇の妖怪、ルーミアは視界を闇で覆って抵抗できなくなった獲物を喰らう妖怪、特に、人を好んで食べることから人喰い妖怪とも言われている。
フラン(通称、青目フラン)はこの少女の存在を知っていた。もちろん、誰かに教えてもらったわけではない。自分の事だから知っていたのである。
破壊フラン、元の人格のフランがした約束だから覚えていたのだ。そして、創造フランは、この、常闇の妖怪であるルーミアを利用し、自分の姉が引き起こした紅霧異変より強力かつ凶悪な異変を起こそうとしていた。だがしかし、自分が違う人格だということがバレてしまっては元も子もないので、取り敢えずこのルーミアと子供っぽい遊びに興じることにした。
◇◇◇
白いひし形で章分けされているのは現実と夢との区別をつけるためだ。つまり、ここは夢の世界、身体を乗っ取られたフランは死んでいたわけではない、そもそも身体の自由を奪われただけで死ぬのなら、三つの人格はとっくの前に死んでいたことになる。一時的に意識を失っていただけだ。なので、
「ん、、、ここは、、、?」
当然目を覚ます。フランはここから、この夢の中から身体の自由を取り戻さなければならない。そこまで考えれないほどフランはバカではない、誇り高きスカーレット家は、物心ついた時にはすでに教育を受けた記憶がある。と言われるくらい勉強させられるのだ、言語のこと、人間のこと、吸血鬼のこと、動物のこと、空の飛び方、獲物の獲り方、計算のこと、などなど、言い出したらキリがないとか、そんなスカーレット家で育ったフランも例外なく教育を受けていた。監禁されていて自立心が無かっただけで。
「取り敢えず、この状況をどうするかはあの人に聞いてみよう」
「あ、あっしですかい? あいにくあっしは今しがたここに着いた旅人でございますゆえ、助けにはならないと思います」
「、、、、、、」
目の前のこの人は、明らかに嘘とわかる口調ではぐらかしてきた。そもそも、ここにいる時点でおかしいし、着ている服も、ボンボンが付いている洋服だし、明らかに髪の毛の色が青色で完全に嘘だ。
半眼でジーッと見つめていると、流石にバツが悪くなったのか、オホンッと咳払いを一つして自己紹介を始めた。
最初から始めればいいのに、
「私の名はドレミー・スイート、まぁ呼び方は自由で結構だ。見ての通り、普通の人間、妖怪ではない、能力持ちだ。どんな能力なのかって? 私は能力の最後に『程度の能力』とつけるのがあまり好きではないので省かせて貰うが、夢を喰い、夢を創る能力だ。ん? あまり強そうじゃない? ハハハッフランちゃんは何もわかっていないな〜、それでもちゃんと教育を受けているのかい? いや、この質問は無粋だったかな?」
「、、、、、、」
ここまで、ずっと私と喋っているような喋り方だが、私は一切口を挟んでいない。ずっと二人で会話しているように喋っている。
変な人だな〜、とフランは思った。
「さて、私のことはこれくらいにして本題に入ろうか、私は夢の管理をしていてね、どんな生物も皆、同様に睡眠を取るだろう? そして、知能ある動物はこれまた同様に夢を見るものだ。夢は根底では全て繋がっている。だから、夢の中で、自分の思うままに世界を作り変えたり、夢を壊したりされたらたまったもんじゃないのさ、君のもう一人の人格のように、この意味、わかるよね?」
「!」
なるほど、つまりドレミーはこう言いたいのだ、私のもう一人の人格が自分を閉じ込める檻から出るために好き勝手創造したことが夢の世界ではタブーで、もう一つの人格を懲らしめるためにドレミーが来た。と、となると私の人格のせいでこんなことになったんだ。私がなんとかしなくちゃ。その旨をドレミーに伝えようとする前に、
「話が早くて助かるよ」
「、、、」
と、言われた。
まだ何も言っていないのに、、、
「私一人でもなんとかなるんだけどね。これを機に夢の中で好き勝手されたらたまったもんじゃないからね、反省してもらわないと、器が広いことで有名なこのドレミーちゃんでも、、、何するかわからないよ?」
ゾクリッ、と、何かが背中を這うような感覚に見舞われた。こんな感覚は今までになかったのに、
「じゃあ〜行こっか〜、ちなみに、拒否権はないよ〜」
「、、、うん」
そして私たちは歩き出したのだ、私が一人で来た道を、今度は二人で、
◆◆◆
「そういえば、あなた、話し口調がありえないほど変わるよね? なんで?」
「あー。フランちゃんは監禁されてたからかな? 人の触れて欲しくないことにズケズケと入ってくるよね〜」
「ご、ごめん」
嫌な感じに言われたが、当の本人はニコニコと笑顔でいる。
絶対にデリケートじゃない。
「まぁ、デリケートってのは嘘なんだけど、話づらいってのはあるね、話たら長くなるし、それに、、、」
ドレミーは、どこか懐かしむように遠くを見ている。
おしゃべりな(ていうか、ずっと喋ってる)ドレミーが、初めて会話の途中に口を紡いだ。これは歴史的快挙だ! 、、、大袈裟か。
「このことを話すと友達に怒られるんでね、さて! 私の話はこれでおしまいだ。次はフランちゃん、君の話をしよう」
私の話、、、?
「何を話せば良いの? 紅魔館のこと? 友達のこと?」
「ん〜。まずは私の考察が正しいか否かを決める重要な質問を一つしようと思う。君は495年間監禁されていたんだよね?」
「うん、そうだよ、それがどうしたの?」
「その時の記憶はあるのかい?」
「、、、その時の記憶って、、、ん〜、あまり覚えてないかな? あの時は窓も無かった場所にいたから時間感覚が狂っていたから、時計は部屋にあったけど何故か読めなかったし、あの時の495年間は長かったようでもあるし、短かったような気もするよ〜」
「ではでは、次の質問だ君はあの3つの人格についてどう思っている?」
「どうもなにも、夢を勝手に創造したり、私の身体を乗っ取ったりして悪い奴らだと思うよ!」
と、頰を膨らませるフラン
「、、、なるほどね。私の考察は完璧に合っていたようだ。君の答えでより確信を得たよ」
「、、、?」
どう言うこと? 今の質問で何が分かったの? ドレミーばかり分かっててズルい。
「確信を得たんだったら教えてよ。その考察ってやつをさ」
「ふ〜ん、聞きたい? そうか、聞きたいか」
鼻息がかかるぐらい近づいて、半眼の状態でニヤッと笑みを浮かべた。何故かこのドレミーはドレミーらしいと感じた。今日初めて出会ったのに、、、
「そんなに聞きたいと言うのなら言わないこともないよ? まぁ、どのみち話すつもりだったんだけどね、じゃあまず、解離性同一性障害、というものを知っているかい?」
「かい、、り、、どう、、?」
「簡単に言うと今のフランちゃんみたいな感じだ。人格が増えたりしていることだよ。まぁ、普通妖怪は、それも、上級妖怪である吸血鬼はより一層かかることが珍しいんだがね、これも普通に生活していればの話だからフランちゃんにほ関係の無い話しか、話を戻そうか、さて、君は一問目の質問になんて答えたかな?」
「、、、たしか、長かったようでもあるし、短かったような気もする」
「正解、長く感じた時は君が自分の身体を操り、短く感じた時はもう一人の人格が入れ替わっていたんじゃないかな? そして時計が読めなかったのは、自分が無意識に読もうとしなかったんだろう? 違うかい? この時点で人格は増えていたんだよ、引っ込み思案なだけで、あの三人のフランの中で一番大人しいのは緑目のフランだろうね。フランちゃんのスペルカード、通称スペカにこんなのがあるよね『禁忌:フォーブアカインド』ポーカーのフォーカードが名前の由来らしいね、でも、ここで考えて欲しいのが、あのスペカではフランちゃんがあと三人追加してくるところだ。フランちゃん個人の能力はありとあらゆるものを破壊する能力だったね、程度とつけるのが嫌いだからこれも省かせてもらったが、なにが言いたいか、だって? つまり、破壊する能力を持っていながら、フランちゃんは三人の自分を創造したことになるんだ。創造って聞くと、今身体を操ってるフランちゃんがそんな能力なんだろうね、破壊の対義語は創造なんだ、だから、今身体を操ってるフランちゃんは、ありとあらゆるものを創造する能力なんじゃないかと私は思っている。破壊するということは、それと同時に破壊されたものを創造しているからね。次に、他のフランちゃんの誕生秘話を明かそうか、このフランちゃん達は君が一番精神が不安定な時に現れたんだろう。つまり、君が監禁されていた時だ。そうとしか考えられない。次に、三人のフランちゃんの性格について話そうか、ポーカーでいう『フォーカード』は同じ数字のカードが四枚揃った役だ。三人のフランちゃんと君が加われば、四人になる。そして、トランプのマークには、ちゃんと意味があるんだ、幻想郷ではハートは慈愛、ダイヤは欲求、クローバーは安寧、スペードは使命感を表している。あまり知られてはいないけどね。と、すると、だ、このマークの意味が人格を、人格の性格を決めているのだろう。スペードはなにかを成し遂げようとしている青目の創造フラン、クローバーは自分を閉じ込める檻から出ることにも恐怖し、不自由な自由を手に入れた緑目フラン、そして、フランちゃんが我慢していて、今も我慢している欲求が現れたまだ謎多き黄色目フラン、そして、我らがアイドル、吸血鬼という上位の妖怪にもかかわらず、小さくか弱い命をも大切にする。ハートのフランは君だ」
そう言って私の方を指差してくるドレミー。
しかし、いつから人格が現れたか知りもしないフランはただドレミーの言うことを聞いているだけだった。
そんなドレミーは、喉が渇いたのだろうか、手の中に出現した闇からティーカップを取り出した。そのティーカップはこの世のどんな白よりも真っ白な容器に、川に浮かんだすいれんの花と、まん丸の月が、いや、よく見たら地球に見えるものが描かれていた。
なんで地球? とは思ったが、それもまた美しいと思った。
食い入るようにそのティーカップを見ていたら、
「ん? あぁ、このティーカップはね、私のお気に入りなんだ、君は夢の中、というより、意識の中だから、お腹も空かないし喉も乾かないが見ての通り私は夢の管理者、現実に私の身体はないのさ、だから喉も乾けばお腹も空く、もっとも、私が夢の中で見た食べ物しか作れないがね」
と、答えてくれた。しかし、夢の中ならなんでも食べられるとは、それは、嬉しいような嬉しくないような。
そのティーカップで喉を潤したドレミーは話を続けた。
「さて、どこまで話したか、、、あぁそうだ、性格と誕生の話をしたんだったね。フランちゃん、私はこの三人のフランちゃんは全部、フランちゃんが嫌だと思った時に現れている気がしてならない。どういうことかって? たとえば、もしも今身体を乗っ取っている青目フランが、フランちゃんには出来ないこと、あるいはしようとして諦めたことを成し遂げようとしていると、したら、、、」
私が出来なかったことを成し遂げようとしている? 百歩譲ってそうだとしても、今はもう檻の外に出られたし、なんの不自由もないはずだ。いや、なんの不自由もないのは最近になってからじゃないか? 牢屋に監禁されていた時の私は何をしようとしていた? 何を諦めていた?
「、、、お姉様を、、こえること、、?」
「せっいかーい。まさか一発で答えを導き出すとはね、この私ですら思っていなかったよ。彼女とは大違いだ。いや、こちらの話だ。気にしないでくれ。そうだね、お姉様であるレミリア・スカーレットをこえることを諦めていた。それを成し遂げようとしている青目フランは本当に悪い奴なのかい? 私はそうは思わない、確かに夢を操ったのは悪いことだ。でも、全て君が諦めていた願いを叶えるためだったんだよ。」
「何が言いたいの? 身体を乗っ取って勝手に悪さしようとしてるんだよ?」
「、、、フランちゃん、一つだけ少し強めに言葉を言わしてもらってもいいかい? もちろん君が嫌だと言うのならやめるのだが、、、」「?別にかわまないよ?」
「何被害者づらしてんだお前は、どれだけ人格が現れても結局それは自分だろ? それを他人の悪行のように言いやがって! ふざけんな! あいつらと面と向かって話したことがあるのか? あいつらがそんなに悪いのか? 今なにかしようとしてるのは青目のせいじゃない、お前のせいなんだよ」
最初あった時みたいに背中に氷を入れられたような感覚に陥った。が、しかし、言ってる言葉は強めでも、ずっと笑顔だった。本当に情緒不安定なんだなぁ、被害者づらしてんだ、か。確かにその通りなのかもしれない。いや、その通りなのだろう。全ては自分が他の人格と話そうとしなかったのが悪いのだ。
「君は謝った方がいい。そして、お礼を言った方がいい。他の人格に、今まで無視してきてごめん。と、今まで代わりになってくれてありがとう。とね」
「、、、、、、」
謝った方がいい。
被害者づらするな。
そんなことを言われたが、私はまだ他の人格が悪い奴にしか思えない。その意識が変わる時が来るのだろうか?
私はそうは思わない。
◆◆◆
「さてと、そろそろだね。」
あれからずっとドレミーは喋っていたが、人格について話そうとはしなかった。それは、教えてもらうより自分で考えた方が身につく。と、言うような事なのだろうか、
「聞いているのかい? まさか君は私の話を今まで無視していたのかい? じゃあ、エレベーターとエスカレーターの違いについても聞いていなかったのかい?」
「ごめんねドレミー、それで、そろそろってのはなに?」
「流された! まあいいや、そろそろってのは、この作られた夢のスタート地点って意味だ。そういえば、今、青目フランのことしか考えていないようだけど、他のフランがどこにいるかの検討はつけておいてね。私は全知全能ではないのでね」
そうだ、すっかり忘れていた。
この道中他のフラン、つまり、身体を操っていないフランの姿が見えない。作られた夢でも夢は夢、他の人の夢には行けないはずなのだ。
「あ、ちなみに、今私たちが通っている道は作られた夢のスタート地点まで一直線に私が作った道だよ。だから、他のフランたちは入ることすら出来ない」
「、、、、、」
つまり、今血眼になって探しても何も見つからないと言うことか。
見つかるかー!と、思ったが今見つけても、青目フランは止められない。
そういえば、スタート地点に着いたのにはなんの意味があるのだろう?
そんなことを考えていると、ドレミーは何かを見つけたらしく、そこに突っ立って下を見つめていた。何故か見つめている場所から光が溢れている。
「なにこれ?」
「たまに、これは夢だとわかる時があるだろ? これはその逆、夢の中から現実の世界を見ることが出来る鏡だよ」
ふーん、そんな物があるんだ。と、言ってフランはその鏡を覗き込んだ。すると、そこにはあり得ない光景が写り込んでいた。
それは、闇だった。
幻想郷全土を覆うほどの闇が鏡に映っていた。その中に青目フランとボロボロになって気絶しているルーミアがポツンと立っていた。
外で何かが起きている!
「どうしよう。私のせいだ。私が封印を解いたから」
「、、、。今さら反省したってだれも許してはくれないよ。自分で蒔いた種は自分で刈り取るしかないんだよ。それとも、君は誰かが刈り取ってくれると思ってるのかい? それに、これは絶好のチャンスだ」
「?」
絶好のチャンス? なにを言っているんだ? ドレミーには何が写っているんだ?
「いいかい? これから行われる未来はこうだ。その1、異変を解決するべく紅白と白黒の少女が動き出す。その2、その少女と青目フランが戦う。その3、青目フランが破れ、気を失う。そして、肝心なのはこの後だ。その4、気を失った青目フランがこの夢の世界に現れる。その5、フランちゃんが青目フランをどうにかして取り込む。」
「青目フランが夢の中に出てくるの?」
「あぁ、確実にね。夢ってのは覚えていないだけで毎日見ているんだ。気を失っている状態は眠っている状態に酷似しているからね、フランちゃんは覚えが無いかもしれないけど、意識不明の状態で病院に搬送された時に夢を見るのと同じさ。そんなことより、フランちゃん、君は青目フランが身体を乗っ取った時、つまり、私と会う前になるんだけど、どうやって乗っ取ったか覚えているかい? ここは、私の力ではどうにもならない点だからね。青目フランがしたのと同じことをすれば人格はフランちゃんの中に吸収されていくよ」
青目フランがしたこと。
私は青目フランにキス、、、されて、、、。
ちょっと待って? 本当にそんなことをするの?
ドレフラ爆誕ッ‼︎