青目フランが私の身体を乗っ取った時に何をしたか、それは、
「キスされたのかい? フフッ、フハハハッ」
笑われた。それも爆発するくらいに笑われた。
「笑い事じゃないよ!」
人が真剣に話してるというのに、それにしても、キスしなくちゃいけないだなんて、
「でも、やり方としては最善を尽くしているね、キスを発動条件に身体の自由を創造した。だから、フランちゃんはその逆をすれば良い、吸血鬼というのが幸いしたね、普通の妖怪にはこんなことはできない」
吸血鬼が幸いした?
「キスをする事で身体を乗っ取ったんなら、こちらは破壊すれば良いだけのことさ、創造されたものをね、それに他人の精気を吸い取る吸血性があれば、破壊された青目フランを吸収して取り込むことが出来るからね。ただ、問題は、今回起こした異変で青目フランが納得のいくものができたかどうか、なんだろうね」
「、、、、、。」
納得がいくもの、おそらく、お姉様を超える異変が起きること。か、それは、、起こるのだろうか?
「今何かを考えても仕方がない、今はこの異変が解決されることを祈るしかないんだ。それに、どうやら、紅白と白黒が動き出したようだ。」
そう言われ、スタート地点の鏡を覗き込む。私はここから、この夢の中から、異変の一部始終を見届けなくてはならないのだった。
◇◇◇
真昼間の人里は和やかな空気だった。
しかし、地震が一番気が緩んだ時や、何も対策を講じなかった時に起こるのと同様、幸せな空気に突如として暗い闇が空を覆った。
昼間に闇が空を覆ったこの異変は、のちに、『暗昼異変』と呼ばれるようになるのだが、まだ名前がない現在では、神のいたずらを目の当たりにしたような目で空を、そして博麗の巫女と白黒の魔法使いの行く末を見ていた。
◆◆◆
博麗の巫女こと博麗霊夢は空を飛びながらこの異変の首謀者を考える。
『この異変、何か、レミリアの紅霧異変に似たところがあるわね、首謀者はフランなの?』
この予想は的を的確に射ている。
暗昼異変は青目フランが起こしたもので、そこに本体の意思がないことを除けば、
「取り敢えず、首謀者がフランだった場合紅魔館に行くのが正解ね」
いつもならあちらこちらに力を付けた妖精が襲ってくるのに、今回に限って襲ってこないことに不気味さを感じながら霊夢は進んだ。
「妖精がいないと無駄な体力を使わなくていいから楽ね〜、ずっと襲ってこなかったらいいのに」
、、、やっぱり思っていないかもしれない。
移動すること数十分、紅魔館の前の霧の湖の上を通過しているときに、やっと妖精に出会った。
「ちょっとあんた、この辺りでフラン見なかった? 金髪の変な羽の子なんだけど」
「、、、、。」
様子がおかしい、基本妖精は元気が取り柄のやからなのに、元気どころか精気すら感じられない。まるで、誰かに吸い取られた様な、
「精気を吸い取る妖怪は吸血鬼しかいないものね、フランが犯人って線が濃厚かな」
呑気に独り言を呟いた霊夢だが、その独り言が命取りになった。
敵が背後から、文字通り闇討ちを仕掛けてきたのである。
「ーーーッ‼︎」
博麗の巫女だからなのだろうか、背後からの攻撃にギリギリで避けた。
すごいのは、闇討ちを仕掛けたとしても、何かしら物は動くもので、今回は敵が隠れていた草むらが音を立てた。普通、物音がしたら反射的にそちらの方を見てしまうものだが、実際、振り向いた瞬間に脳天に攻撃が行くはずだったのだが、霊夢は、音がした瞬間に避ける動作を行ったのだ。この状況判断力が博麗の巫女たる所以と言えよう。
しかし、一番驚いたのは相手の方だった。
「ッ‼︎ まさか、避けられるとはな」
四、五人の声が同時に話している様な声でその者は喋った。
「俺は一度たりとも獲物を逃したことは無かったのだが、訂正しなくちゃいけねーようだ」
「誰よ、あんた」
勿論、警戒は解かない。
「俺の名前、か、あいにく俺には名前が無いもんでな、お前が付けてくれ、そしたら、お前の前ではそう名乗ってやるよ」
「、、、
「ほう、なんでそんな名なんだい?」
「声が重なっているからよ。それより、あんたは何しにきたの? 異変を起こした奴の仲間?」
「いや、そいつは関係無いね、力試しみたいなもんだ、勿論、寸止めで終わるつもりだったのでな、この異変を利用しただけさ」
「あっそう、じゃあもういいかしら、私は犯人探しで忙しいの」
「ちょっと待ちな」
まだ何かあるのか、
「俺は闇討ちの名人だ、そんな俺がその犯人とやらを索敵出来ないわけがないだろう? 探してやるよ」
「本当? あんたにメリットが無いじゃない」
「俺は俺がやりたいと思った事をするのでね、それに、これは恩を返してるだけだ。己の未熟さを感じたよ」
さっきの闇討ちのことか、
「じゃあお願いできるかしら?」
この妖怪が何者なのか、謎が残るがそれはまた別のお話。
あの妖怪のおかげで、フランの居場所を見つけることができた霊夢は、すぐさまフランの元へと向かった。
「見つけたわよ」
どれだけ仲が良くても、異変を起こしたらすぐ退治しなくてはならない、それがたとえ、友人の魔理沙であっても。
「案外早かったね、博麗の巫女」
明らかに様子がおかしい、おかしいところが無いくらいに、
「あんたは誰? フランじゃないわね」
「はぁ? どっからどう見てもフランだろうが、まだ成長期なんだ、口調が変わることもあるだろ⁉︎」
「そうね、じゃあその片目はなんなの? 私の目がおかしくなければ青い目をしている気がするのだけれど?」
「ッ⁉︎」
この言葉を口にした瞬間、少しだけフランが動きを硬直させたが、すぐに体制を立て直し、
「あぁ、こっちではそうなってるのか、ハハッ、じゃあ教えてやんよ、俺はフランであってフランじゃあないのさ、まぁ、違う人格の一人だ」
「人格が暴走したってこと?」
「そんな感じだ。お前は俺を退治しにきたんだろ? さっさと始めようぜ」
そして、吸血鬼と巫女の戦いが、今、始まる。
次回は本格的な戦いパートです。