東方解離鬼   作:白亜霧雨

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第六話 暴走の果て

 その瞬間、時が止まった。

 この力はもちろん能力によるもので、全ての生物は動きを止める。

 彼女を除いて。

「お嬢様。私の無礼をお許しください」

 十六夜咲夜。

 紅魔館のメイド長であり、時を止める能力を持っている。

 暴走してところ構わず破壊を行うレミリアにも、忠誠を誓い、元の姿に変えようとしている姿は、まさに完璧なメイドといってもいい。

 咲夜はナイフを構え、暴走しているレミリアに向けて円形上にナイフを投げた。

 そして、霊夢の場所を変えた。

 これでお嬢様の攻撃を受けることはないでしょう。

 「時は……動き出す!」

 徐々に時が戻り、正常な時の巡りになった。

 咲夜が投げたナイフはレミリアに刺さっていくし、移動させた霊夢も攻撃が来ないことを不思議に思って目を開ける。

「ウァァァァァァ!!」

 ナイフは銀が微量に入っているため、吸血鬼にはよく効くだろう。

 レミリアの悲痛の叫びを聞いて目を瞑る咲夜。

 レミリアは暴走することはもう無いし、元の姿に時期に戻る。だが、痛みによって咲夜に標準が変わったことを目を瞑っている咲夜も、場所が一瞬にして移動した霊夢も気づかなかった。

「ウァァァァァァ!!」

 レミリアの剛腕が咲夜めがけて飛んできたのだ。

 それに気づいた時にはもう避けられないぐらいに近くまで腕が来ていて、咲夜の腹が貫かれた。

「グハッ!! お……嬢………様」

 

 ◇◇◇

 

 ドレミーは言った。

「そんな方法はないよ。分離した人格を吸収しない手なんて、君は本当に優しいんだね。でも、その優しさはいつか自分を苦しめるよ」

 吸収しないだけでその方法は簡単に解決するのだが、さっき言った通り、そんな優しさを出すと、自分の身体なのに自分では全く制御できなくて、そのうち自分が他のフランの人格になってしまうからだ。

 冷たいかもしれないが、仕方ないことだろう。

「そっか。そうだよね。じゃあ人格を取り戻すことに専念しよう」

 この子は、優しいと思ったらけろっと意見が変わったり、長年使っていたものも壊れたら新しいのに乗り換えるような、幽閉されていた時の経験が未だ残っているのだろう。

「今フランの身体を操っているのは緑目のフランだね。私は幽閉フランと呼ぶけど」

「うん。じゃあ、人格を吸収しに行こうか、ドレミー」

 二人は歩いた。

 人格を制御できる場所まで、ゆっくりでもいい、寄り道をしてもいい、確実に歩を進めれば幽閉フランにはたどり着くのだから。

 

 ◇◇◇

 

 咲夜が重症を負い、倒れたところでレミリアは我に帰った。

「あ……ああ………違う、違う違う違う違う! 私は、やってない。やってない! 私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない…………」

 自分が咲夜を攻撃したということがわかったため、レミリアは自責の念に駆られていた。

 威厳あふれるレミリアがここまでちっぽけに見えるのは初めてだった。

「レミィ……。大声を上げてどうし……!」

 ここでいつもは図書館にいるパチュリーが部屋に入ってきた。

 入った時、一瞬驚くもやはり生きる年数が違うため、すぐに咲夜の元に行き回復魔法を唱えた。

「『回復魔法:ヒール』」

 単純な魔法だが、人間相手にはよく効く魔法なのでこれで充分だろう。

「レミィ。一体何があったのか……あとで聞かせてもらうからね」

 そういうと小悪魔を呼び、咲夜を運んでいった。

 心配して慰めようとした霊夢だったが、

「霊夢。悪いけど、一人にさせて」

 と、言われたので、帰るしか選択肢がなくなった。

 こうして、異変は解決していつもの平和な日々が戻った。

 だが、この異変に関わった人間や妖怪はこれでよかったのだろうかと考えながら一晩を過ごしただろう。

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