紅魔館には地下室がある。
地上より数度低い温度は色々な用途で使われており、食料保管庫や図書室、ワイン貯蔵庫などである。
しかし、この部分は地下二階のおまけ部分に過ぎない。
本当の理由は、フランを監禁するためにある。
人生は大きく長い坂道を登っていると思う。
未来のことはわからないけど、過去のことは振り返れば思い出せる。思い返せる。
みんなはここで、過去のことを噛み締めながら未来に進むんだろうけど、私は違う。
未来は怖い。先が見えないのが怖い。わからないのが怖い。悪いことが起こりそうで怖い。
だから私は、その場で留まる事にした。
もちろん留まっても年月が過ぎれば未来に行く。
でも、私を取り囲む鳥かごの中から出なければ、怖い思いをせず一生平坦な道を歩ける。
そう思ってから400年が経った。
◇◇◇
「時にフランちゃん。青目フランが夢の世界に来たのはどうしてだと思う?」
「え?」
突然そんなことを聞かれた私は戸惑ってしまった。
が、すぐに考える。
「う〜ん。わざわざ夢の世界に入ってこなければ身体の所有権は持っていたはず………分かんない!」
正直なフランであった。
「ありゃりゃ、では訳を話そう。ここは夢の世界、そう言ったよね? 夢を見るときはどんな時?」
「寝てる時!」
「そう、寝てる時なんだ。自分が覚えていなくても毎日夢は見るんだ。つまり、毎日夢は の世界に入ってきているってこと。青目フランは博麗の巫女に気絶させられていた。ここで身体が無意識化に陥り夢の世界に来たんだ」
「なるほどなるほど。それで?」
「つまり、急がなくても今身体を操っている緑目フランが寝てしまえば夢の世界に向こうから来てくれるって訳」
「なるほど! あれ? でもそれ逆に言えば起きてる間は何もできないってこと?」
「……。」
そっぽを向くドレミー。
図星なんだなとフランは思った。
「青目フランがやりたいことは姉を越えることだった。緑目フランがやりたいことはなんだろうね?」
「……。」
緑目フランは私が幽閉されていた時に最初に生まれた人格。
青目フランのことで、客観的に物を見れるようになった。
だから、検討は少し付いている。
◇◇◇
「お嬢様。お食事をご用意しました」
「……。咲夜……ドアの前に置いておいてくれる?」
「かしこまりました」
咲夜はパチュリーの魔法により完全復活したのだが、咲夜を攻撃したという事実にレミリアは耐えられなかったのだ。
一体どうすれば。
困った時には有識者の意見を聞けば何かわかるかもしれない。
「パチュリー様に聞いてみようかしら?」
咲夜はパチュリーの元に向かった。
◆◆◆
大図書館。
地下一階に作られたものすごく広い空間。それが全て図書館に当てられているのだからすごい物だ。
ここにくるといつも感嘆の声を上げてしまう。
「あら…? 咲夜? 何か用?」
「パチュリー様」
このパチュリー様こそが致命的だった私の傷を癒してくれたお方です。パチュリー様はお嬢様の友人なので、一度くらいは同じ現象に陥ったことがあるのではないでしょうか?
「少し聞きたいことがあって」
「レミィのことでしょう?」
「…はい。お嬢様をいつもの姿に戻すことはできないでしょうか?」
「できないことはないわ」
「本当ですか」
私は歓喜に包まれた。
お嬢様をいつもの姿に戻すことができるなんて。
「でも、それができないから困ってるのよ。あなたも、私もね。小悪魔、B-3-kの棚から私の手記を持ってきて」
「はい! わかりました! あの、それと、そろそろ私のこと名前で呼んでくれませんか?」
「いやよ。あなたの名前超がつくほど長いし、発音しにくいもの」
「そんな〜」
「ほら。早く持ってくる」
涙目で図書館のどこかに去っていく小悪魔を見届けるとパチュリー様が話し始めた。
「さて。私の手記を読む前に少し補足をさせてもらうわね。レミィや私のように長く生きている者は立ち直るのがすごく遅くなるの。どうしてか、わかるかしら?」
私は少し考えて。
「生きている年数が違うからでしょうか。私たちより早く死ぬ生き物は速く動きますが、遅く死ぬ生き物は動きも遅いですし」
「そうね。それもあるわ、でも一番の問題はトラウマが蘇ることよ」
「トラウマ…ですか……?」
「そう。長年生活スタイルを変えないでいると同じような出来事で失敗したりするの。そこで負ったトラウマが今、レミリアの中でフラッシュバックしているのよ」
「そうなんですか」
とは言われても、あまり実感がわかない。
そんな話をしていると、
「パチュリー様ー! ありましたー!」
と、小悪魔の声がした。
「ありがとう。小悪魔」
パチュリー様の手記。
何百年、何千年と生きているパチュリー様とお嬢様のことが書いてあるであろう手記。
そこにお嬢様を元気にさせるヒントはあるのでしょうか?