IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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気付けばもう100話……この小説って何処で完結するんだろうか。

もういっその事、オリジナルのモンド・グロッソでも開催して終わらせようかな。


第100話

その日、遂に当日を迎えた。ISのバトルレース「キャノンボール・ファスト」の開催日である。その日学園の生徒達はIS学園を飛び出し臨海地区に建設されたアリーナに居た。最大収容人数は2万人以上という超巨大なアリーナにて一夏曰く豪勢なマリオカートが行われようとしている。会場は見事なまでの超満員、空はからっと良く晴れた秋晴れに幾つもの花火が打ち上げられている。

 

「おっほ~本当に良く晴れてるな~、こういうイベントは快晴が一番似合うよな!!」

「俺は運動会とかは雨になれってよく祈ってたもんだがな」

「何でだよ延期になるだけだぜ?」

「うちの学校は雨天延期の時は平日にやるんだよ、土日には見たいアニメの放送があったんだよ」

「あ~成程な」

 

ピットから外の天気を眺めつつ快晴に気分を躍らせる一夏、本日が誕生日なのもあって嬉しそうにしている。対してカミツレは普段通りにクールに振舞いながら少し忌々しげに青空を睨み付けている、農家的な意味で晴れは好きだが個人的には微妙らしい。

 

「それよりさっさとピットに戻って準備をするぞ、俺達の番は二年が終わってからだが備えあれば嬉しいなって奴だ」

「分かった…というかカミツレ、お前は何処の陛下だよ」

 

カミツレの台詞に適度に突っ込みを入れつつピットへと戻って行く。本日の日程はまず二年生のレースが始めに行われる、その後に一年の専用機持ちによるレースが開催される。一夏とカミツレの番はそこになっている、ピット内に戻っても大歓声が中にまで震動して聞こえてくる。凄まじいデットヒートが行われているらしい。

 

「あー……緊張して来たはずなのになんかワクワクしてる自分がいるぜ……。不思議だな」

「そのまま緊張で潰れたら、相手が一人居なくなって楽なんだが」

「酷くねカミツレ……?」

 

各自の準備はどんどん行われていく中で、カミツレは視線を巡らせてみると改めて強敵ぞろいなのが分かる。この中で最も強敵と言えるのが鈴にセシリアだろう、鈴は得意としている技術から操縦技術とスロットルワークが酷く長けている上にパッケージを装備している事でかなりの強敵になる事が予想出来る。セシリアも彼女の得意のBT兵器は封じられてはいるものの、それでも6基の増設スラスターからなる推進力は侮れない。

 

「ふふん今回はあたしが勝つからね!!」

「寝言は寝てから言わないとただの戯言よ」

「ムッキィィィ!!!今日という今日は吠え面を掻かせてやるんだからぁぁ!!!」

「はっ言ってなさいよ」

 

そんな鈴は隣で準備をしている乱からの挑発をあしらいながら黙々と準備を進めて行く。乱もパッケージを装備している一人で、かなりの強敵である事は間違い無い。その場での高速反転技術はレースでも有効活用できる。

 

「フム……コンディションは良好だな、出力も安定……良し」

「チェックはこんな物かな……後は駆けるだけ……」

 

パッケージではなくスラスターの増設という事のみにしているラウラとシャルの準備も万端そうである、ある意味この場において厄介なのはこの二人も同義であった。専用の装備を施されているわけではないが操縦者である二人が厄介、軍人という立場にあり緊急時に対する心構えを持てるラウラは常に冷静に物事に対処出来る。シャルは「高速切替(ラピッド・スイッチ)」にて状況に合わせて最適な武器を使用する事が出来る。この二人も非常に厄介な事には変わり無い。

 

「(だが俺だって努力を積み重ねてきたんだ……精一杯やるだけだ)」

 

周囲の事を警戒し続けているカミツレだが、周囲からしたら彼も厄介であるという事を理解出来ていない。まず全距離万能型であるが故に対応能力が非常に高い事、ライフルは低出力ではあるが連射が可能である為相手の妨害にも効果が期待出来る。次にセシリアと異なりBT兵器を存分に活用出来るという事、独立した砲台が此方を狙ってくるのは非常に面倒。しかも操縦者のカミツレが操るのではなくコア人格のカチドキが制御を行うので、カミツレ自身は機体制御に集中できるという点が非常に厄介なのである。そして一番厄介な点は―――

 

『カミツレが個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)稲妻軌道動作(ライトニング・アクション)を使用出来るという事である』

 

この二つのテクニックはモンド・グロッソの機動部門でも使われる有効な技術だからである。前者は「瞬時加速」を上回る急加速の他に方向転換などに応用が利き、今回のイベントではとんでもない効果を齎す。そして後者も高い操縦技術によって生み出される技術であり、レースで幾らでも応用が利いてしまう。本人は気付いていないが今回一番のダークホースとなっている。

 

そんな事も露知らず、カミツレの心にも不思議と高揚感と緊張感が同居している。間もなく自分たちの戦いという名のレースが始まろうとしている、胸にあったのは師である真耶に自分の今日までの成果を見て貰おうという思いだった。残念ながらヨランドも来たいと言っていたが…以前無理を言って学園に滞在した事が原因で、今回のイベントは見送りになってしまったと言っていた。

 

『ツェレの勇姿をこの目で見れないなんてぇ……師匠失格ですわぁ……』

 

と泣きながら言っていたヨランドに対してカミツレは気にしていないし、自分は貴方の事を心から尊敬していると伝えた。このイベントでヨランドは優秀な成績を残し続けているので自分も息巻いている。そして、間もなくその時が始まろうとしていた。




カミツレがダークホースになってしまった理由、極論としてヨランドが悪い。

「納得出来ません!!!わたくしはただツェレに立派になって欲しくて指導しただけですわ!!」

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