IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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原作の流れが―――凄い勢いで壊れていく……。

(原作が)割れる!(二次に)食われる!(イベントが)砕け散る!


第102話

「君達さ、私の子供をそんな風に使って私が怒らないとでも思ってるの?馬鹿なの、ああいや馬鹿だったね。だからこんな事を平気で出来るんだからさ」

 

海上に浮かんでいる二つの影を見下ろすかのように束は笑っていた、それらは彼女によって完全に鎮圧され動きを封じられている二人の女の姿だった。彼女から待機状態となっているISを奪い取るとそれを愛しい子供に謝罪するように撫でる。

 

「さてと、もう君達に用はないから殺しても良いんだけど面倒だからこのまま漂流してなよ。運がよければ助けられるかもしれないからね」

「わた、し達はまだ……!!」

「負けてるんだよ、君たちの本部も今頃は束さんの作った無人機(人形)が襲撃して全滅してる。コア・ネットワークが全て教えてくれてるから逃げても無駄、じゃあね」

 

そう言うと束はそのまま重力を無視するかのように浮かび上がると空の彼方へと飛び去っていく、二人の影はそれを目で追いかける事しか出来ずやがて力尽きるように気を失った。後日、世界各地で謎の爆発と謎のISの目撃情報が相次いだ。それは世界に何も齎さぬまま、静かに幕を閉じて行った。

 

 

 

「だぁぁっっ……もうやだ、入賞なんてしなきゃ良かったぜ……」

「全くだ……」

 

「キャノンボール・ファスト」から数日、誕生日を終えて無事にまた一つ歳を取った一夏とカミツレはぐったりと机に身体を投げ出すようにしながら疲れと共に言葉を吐き出していた。「キャノンボール・ファスト」で見事入賞を果たした一夏、そしてセシリアと同着優勝を果たしたカミツレの知名度は爆発的なまでに高まっていた。新聞やニュースでも何度も何度も取り上げられ、学園内でもサインを求められまくる結果になっている。急遽千冬がそれらを禁止すると宣言しなければ二人はまともに学園生活を送る事も出来ないレベルであった。二人のサインは超が付くプレミアがついており、サイン色紙一つで5万が超える額で取引されている―――学園内で。

 

「そういうな一夏、お前の努力の結晶が3位入賞だったんだぞ。それは素直に喜ぶべきだろう」

「おう箒、ならお前も同じ事になってみろ。変装無しじゃ外歩けないんだぞ俺とカミツレ」

「……織斑先生がチヤホヤされてウンザリする気持ちがよく分かったな……」

「いや全くだわ……」

 

ここ数日で一気に知名度が上昇してしまった二人、アイドルでもないのに髪形を変えた上でアクセサリーに伊達眼鏡などを着用して変装しないとまともに外も歩けなくなっている。本当に安心して過ごせるのは学園だけになりつつある現実に思わず辟易してしまう。思わず入学初日に千冬が担任だと知って騒いでいた生徒達を見て溜息を吐いていた気持ちが理解出来てしまった。そりゃ嫌にもなるわと。

 

「っというかさ、カミツレも凄い騒がれ方してるよな。イギリスの超新星とか言われてるし」

「それはセシリアもだろ……」

「いえ私とカミツレさんの場合は大分異なると思いますわ、でも確かに気が休まる時が減ってしまいましたわね」

 

セシリアと同着で1位入賞を成し遂げてしまったカミツレ、その活躍に世界中から凄まじい注目を集めまくっている。特に強化指定代表候補生が習得する「稲妻軌道動作」などを披露してしまっているからか余計に騒がれる羽目になっている。これは一夏もだが、最近はお見合いの申し出が来るようになってしまっている。既に恋人がいるカミツレからしたら興味もないが、来る量が半端ないため辟易せざるを得ない。

 

「くそっ…折角カミツレに相談して組んだデートプランが……」

「見事に台無しになったな、まあ飯は確り奢れよ」

「……はいっ……」

 

一夏にとって最大の問題がそこであった、自分が注目された事で箒のデートが凄まじく難しくなってしまったのだ。カミツレに相談し映画館やショッピングポイントのチェックに綺麗な夜景の見える場所のピックアップなどなど…デートの終わりには告白の出来る場所まで探してあったのにそれら全てが台無しになった。自分の行いが招いた事とは言え、一夏はこの事に嘆かずにはいられなかった。

 

「そう言えばさ、カミツレの方には来たか?」

「何がだよ。サインの申し込みなら大量に来たぞ」

「そりゃ俺もだよ、じゃなくて雑誌の取材依頼だよ。俺と箒に取材したいって二年の黛先輩が言って来たんだよ、何でもお姉さんが出版社で働いてるらしいんだ。名前は確か……「インフィニット・ストライプス」だったかな」

「あの雑誌か、それなら俺とセシリアに取材したいって来たぞ」

「ええ、是非とも同時入賞をした私たちに取材をっというお話でしたわ」

 

既に一度取材を受けているカミツレ、そんな彼に再び舞い込んできた取材の申し込み。今度はセシリアと一緒という話だったがどうやら一夏と箒も一緒だったようだ。一夏は3位入賞、箒は何故かというと実は訓練機部門で彼女も2位入賞を果たしているからである。

 

「その時ってどんな取材受けたんだ?」

「純粋に学園に来て如何だったとか、こんな噂あるけど実際如何なんだというのが多かったな。後は写真撮影とかされたな」

「そんな感じなのか……取材ってなんか緊張するぜ…」

「俺の時は真耶先生も一緒だったからそこまででもなかったぞ、まあ気楽にやれるさ」

「そんなもんなのか」

「そういうもんだ」

 

適当に言葉を切ったカミツレに何処か納得が行ったような行かないような表情を浮かべる一夏だが、実際そんなもんなのだからしょうがない。

 

「しかしそうなると……また、とんでもない事になるのかな……」

「とんでもない事……?どういう事だよカミツレ?」

「そうだ、取材を受けると何故大変な事になる?」

 

口を閉じて俯いてしまったカミツレは何も答えない、セシリアは彼の背中を擦りながら「インフィニット・ストライプス10月号」で検索してみてと伝える。それに促されて一夏はスマホで検索を掛けてみる、箒もその画面を覗きこむとそこには…超高額で取引されている雑誌のオークションが表示された。思わず硬直した一夏と顔を引き攣らせた箒は、そこにある全てを見てカミツレの現状を理解した。

 

「なあ箒……今からでも、断れないかな……?」

「む、無理だろう……」

「……なんで世界って俺達に対して厳しいんだ……」

「それは俺の台詞だバカ野郎……」

「カミツレさん……(でも今度もポスターなどが付くなら買占めはする所存でありますわっ!!)」


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