「うんやっぱり美味しいなぁ流石カッ君!」
「褒めてくれてもお代わりしか出せませんよ俺は」
「んもうそれを望んでるって束さんが知ってる癖にぃ!」
「はいはい、ほら茶碗出してください」
その日も唐突に現れた束に食事を作りその相手をしているカミツレ、しかし今日は状況が違っていた。室内にはこの二人以外の影があった。
「博士はよくカミツレさんの所へ?」
「束さんでいいよ、まあ不定期だけどよく来るよ。美味しいからね~」
「カミツレさんも言ってくれたらいいのに~、そしたら御挨拶できたのに」
「いやでもなんて言って連れてくればいいのさ、自分の部屋に篠ノ之 束さんがいるから挨拶しない?とでも言えばいいのかな」
「「その通りです」」
「あっれっ~!?」
「アッハッハ、二人ってば面白いね~」
そう恋人であるセシリアと乱も食事に随伴していたのである。二人は束が食べに来ている事などは一切知らず、夕食の誘いに来たらあの束がいて驚いた。そして束が一緒に食べようと誘いそのまま会話をしながら食べる流れとなっている。同じ男を愛するという一点で問題が起こるかとカミツレは冷や冷やしていたが、そんな事は起こらずに仲良くなれている。元々3人は一夫多妻制を容認する考えを持っているのが一番大きいだろう、それに束も二人がカミツレを守る為に行動しているのは知っている且つコアからの評判も良いので好感を以って接している。
「それにしても…カミツレさんに話を聞いた時は本当に驚きましたよ、あの篠ノ之博士にプロポーズされたって聞いた時は」
「ええ。世論では凄まじい人嫌いというが通説ですものね」
「大体その噂も合ってるけどカッ君は特別だよ、私の本当の理解者だからね。そこから転じて二人の事もまあ調べたり認めようって思ったんだけどね」
女性同士故に口が利き易いのか、話はかなり弾んでいる。自分としても二人が束と仲良くしてくれるのは嬉しい所、正直二人との相性が悪かったら如何しようと内心ではかなりドキドキしていたのである。
「でも二人もよく決断出来たよね、仮にも自分の好きな相手を他の人と一緒に愛さないといけないんだよ?」
「カミツレさんを守るため、それが一番です」
「許容出来なかったせいでカミツレさんが大怪我とかしたら、悔やみきれませんから」
「愛されてるねぇ~」
ニヤつきながらこちらを見つめてくる束、そんな視線を受けつつも愛されているという自覚が明白になってきて如何にも気恥ずかしくなってくる。思わず顔を背けると束は庇護欲がぞくぞく掻き立てられたのか思わず抱きついてしまった、そんな彼女に負けてなる物かとセシリアと乱も抱きついた。正面からは束、左からは乱、そしてセシリアは真後ろから。男からしたらうらやましい事この上ない状況に陥っている。
「それにしても…正直束さんが味方に居て下さるというのは凄い心強いですわね」
「本当、多分世界で一番強い力持ってるもんね色んな意味で」
「えっへん束さんってば細胞レベルでオーバースペックだからね!!」
細胞レベルでオーバースペック云々は全く以って否定出来る材料がゼロというのが性質が悪い。世間的に見ても唯一ISコアを製造出来る存在で、その気になればISを幾らでも量産できるというだけで世界最強の軍事力を有しているのも同じ。
「と言っても束さんの力を利用するとしても、多分大規模な動きを抑制出来るのが精一杯だし逆にカッ君を利用して私を炙り出そうとする事も十分考えられるよね」
「私達がもっと頑張らないといけませんわね……」
「うん、私達がもっと強くなってカミツレさんを守るのが一番よね」
「俺としては少し申し訳ないけど、頼りになる人達が傍にいてくれて嬉しいよ」
「うんうん本当だよね」
そんな会話をしている女性陣はこれからどのようにしてカミツレを守るべきか、それを真剣に談義して行く。楽しい食事の雰囲気から一転して、真面目且つ少々恐ろしげな雰囲気が漂ってきた。
「あっカッ君、これからのお話はちょっと女同士でさせて欲しいんだけどいいかな?」
「その方が潤滑に進むんでしたらまあ……」
「そ、そうですわね。少々個人的なというか、女として話しておきたい事もありますし!」
「そ、そうよね!!」
顔を赤くしながら束に同意する二人に後押しされるようにカミツレは部屋から出て行く事にした、まあ女性同士の方が話し易い事や聞かれたくない事もあって当然という物だ。適当に屋上で星でも眺めて時間を潰そうと、廊下を歩いて行く。
「それでね、カッ君を守るには極論強力な人を味方というかカッ君のお嫁さんに引き入れるのが一番だと思うの」
「それは確かにそうですけど……一体どんな人を?」
「望ましいのは私達が信頼出来てISに長けている上に生身でも十二分に強い事、そして各国の有力者とのパイプがある人物」
「贅沢な条件というか希望になっちゃいますよね……でもそれって確実に国家代表クラスですよね」
「そうなると…矢張りヨランド・ルブランさんでしょうか」
セシリアはその条件にマッチする人物が思い立った、カミツレの操縦技術を教えた一人であり超名門貴族でフランスの国家代表であるヨランド。彼女ならば申し分ない存在であるし自分たちもよく知っている人物、あらゆる面でカミツレの保護やサポートを行う事が出来る。乱も同じ事を考えていたのか首を縦に振った。しかし束が首を横に振る。
「悪いけど束さんは信用出来ないかな、話した事もないし」
「あっそっか、あたし達からは信用出来るけど束さんからしたらよく分からない事の方が多いものね」
「しかしそうなると本当に誰が……ナタル先生?」
「ちっちっちっもっと良い人がいるでしょ?束さんも絶対の信頼をおける人が」
そう言われてもピンと来ないのか首を傾げてしまう二人に束は悪い笑みを作りながら、言葉にした。自分が考えている人物の名前を―――
「―――それはね、ち~ちゃんこと、織斑 千冬だよ」
「あれ、千冬さん?」
「カミツレ……?」
同時刻、カミツレは千冬と遭遇していた。運命の歯車は再び、重い音を立てながら潤動していく。