「そういう訳だ、まあ宜しく頼むぞ」
「そうするしかないのでしょうけど……」
「驚きしかないよね……」
「流石カッ君!年上キラーだねぇ♪」
「……」
存分に千冬に唇を嬲られた後、束によって部屋に来て欲しいという連絡が千冬の携帯に入れられた。カミツレに肩を貸しながら部屋へと入ってきた千冬が来てセシリアは目を見開き、乱は思わず本当だったんだと漏らし、束は微笑を絶やさずにいた。カミツレは荒い息をしたまま無言で俯いていた、激しくも情熱的な口付けに頭は茹蛸寸前になっておりまともに思考が出来ない。カミツレからしたら尊敬している千冬から告白された上に、逃げられないように思いっきり抱きしめられながらキスをされたのだから無理もない。
「それにしてもまさか、カミツレさんが織斑先生とそこまで親密だったとは……」
「まあ最初こそ、カミツレは私に対しての恩返しというか世話になっているんだから何かしたい程度だったのだろうがな。次第に奴の優しさや心の大きさに惹かれていってな……それに奴は妙に庇護欲を掻き立てる」
「「「超分かる」」」
本人がほぼ思考停止状態なのを良い事に自由奔放なガールズトークが開始されてしまった。一体カミツレの何処がいいやらどこに惹かれたやら、此処が一番掻き立てられるなどなど……本人がまともな状態で聞いていたら赤面必死なトークが続けられる事となった。しかしこれが結果的には女性陣の団結や親交をより強固にし、カミツレの為に行動すると約束される事となった。本人が聞いていない所で本人にとって重要な事がまた一つ決められてしまった瞬間であった。
「んじゃまあ正妻はセッシーという事で決定、後は基本側室的なポジ。でも実質的には皆平等にカッ君に愛してもらうという事で意義はありませんね~?」
「ありませんわ」
「ないです~」
「うむ。私もそれでいいぞ」
一同は手を重ねて、意気込みを決めて声を出してそれを誓い合う、だがせめてカミツレを起こしてやれと言わざるを得ない。
「それにしても……改めて見ても凄い面子よね…あたしが一番下よね」
乱は改めてカミツレを好いているメンバーに目を通して見る。まずイギリスの貴族の当主であり代表候補生であるセシリア、次に乱になるが彼女は一般的な家庭の出であるためにある力と言えば代表候補生としての力のみ。そしてISの産みの親であり、現状世界最強の軍事力を有しているとも言える大天災の束。その束の親友でもあり元世界最強の座に君臨した戦乙女こと千冬、もう色んな意味で凄すぎる面子。
「代表候補生が一番下って言うのも随分奇妙な話よね……」
「まあその辺りは気にするな、女が男を愛するのに必要なのは家柄や権力、何より力ではない。その男へと向ける愛、だろう」
「良い言葉ですわぁ……さすが織斑先生、いえ千冬さん!!」
「ハッハッハッもっと言うが良い!」
「でもち~ちゃんもカッ君が完全に初恋だから、微妙に説得力に欠けるよね」
「何、初めてだから純情な恋愛感情を向けられるというものだ」
「物は言い様だねぇ……」
普段見た事ないような穏やか且つ優しげな顔をしながらそんな言葉を言う千冬に何処か呆れているかのように肩を竦めながら言葉を飛ばしている束、このような光景を見てみると二人は昔からの友達だというのは納得が行く。
「取り敢えずこの場は解散で良いかな、束さんもいい加減退散した方が良いかもしれないし」
「なんだったら私が揉み消すが、退散が必要なのか?」
「ちょっと、ね。用事があってね」
「それじゃあこの場は解散しましょうか、後この場は千冬さんにお任せしますよ」
そういう言った乱に思わず千冬は何?と眉を顰めてしまった、乱はカミツレと恋人として過ごした訳でもないし此処は一旦二人でじっくり話し合ってその後全員で話しあった方がいいと述べる。いきなり全員で話し合ってもいいが束の事情もあるし、まずは千冬の告白を完結させた方がいい。
「確かにそうですわね、恋人としてなら私達がリードしてしまっておりますし。平等というならばそれが一番ですわ」
「なんだかんだで一番大人なのってセッシーなのかもね、乱ちゃんも大人だけど。簡単に受け入れて提案できるのってやっぱり凄いと思うよ」
「ふふんこれでも当主ですので!」
「規模的にはヨランドの奴の方が上だがな」
「……それは言わないでください」
取り敢えずその場は千冬が残ったまま解散となった、去り際に応援なのか肩を叩かれた。何処か嬉しさと自信が沸いて来る、そして漸く意識が覚醒してきたのかカミツレが唸り声を上げながら顔を上げた。そして自分を見るとギョッとしつつも必死に自分を抑えこみ、理性的に対応しようと息を整えようとしている。
「ふぅ……えっと、その千冬、さん……」
「ああ、すまなかったないきなりキスして。我慢出来なくてな」
「こ、子供じゃないんですから…それとその……俺なんかと良いんですか……?」
「聞いていたのか?」
「まあ、途切れ途切れですけど……」
カミツレとしても困惑しかなかった、停止しかかった頭でなんとか聞いていた話の断片。それを聞く限りでも意味は理解できる、千冬も自分の事を思っているという事は理解出来ているが今までの3人とはまるで違う。千冬は自分にとって尊敬できる教師であり恩師、そんな人が自分を好いてくれていると言われても上手く受け止める事は出来ない。
「千冬さんその……俺なんかで、良いんですか……?」
「お前しかありえんと断言出来るさ。お前は私の弱さを優しく受け止めてくれた、それが私には堪らなく嬉しくてな。だからお前に惹かれたのさ」
カミツレの隣に座り直しながら優しく彼の頭を胸に抱く、柔らかな感触にドキドキしつつもカミツレはジッとその言葉を聞き続けた。
「色々と辛さがあった……そのせいで私は何時しか自分の素顔が何処にあるかさえ分からなくなっていた、一夏にさえ仕事の自分を幾らか柔らかくした物でしか対応出来なくなっていた…だがお前と過ごしていた時こそ私は本当の私でいられた……」
心から楽しく豊かな時間だったと思う、彼と一緒に居つつも満たされた時間。取り戻せていった自分、戦乙女という偶像に何時しか囚われ壊れていた自分を取り戻せたのは彼の小さな小さな心遣いだった。もう原型こそなかったはずの自分の笑顔を一つ一つ拾い集め、新しい笑顔を作ってくれた。
「だから、お前でないと駄目なんだ……私はお前と一緒にいたい、そう思っているんだ……」
「千冬さん……」
「お前は元の私を新しく作ってくれたんだ……私はずっと今の私でいたい、だから……傍に居させてくれ…」
思わず力を込めてしまった腕、それを緩めながらそう告げながら彼の顎を上げてキスをする。優しく軽い物で直ぐに放そうとしたがカミツレが逆に前へ身体を出し、彼女の背中に手を回しキスを続けた。呆気に取られた千冬は思わずポカンとしてしまったが、直ぐに彼の顔を見た正気に戻った。赤くなって無理をしながらも、自分を気遣っている表情に。
「だ、だったらもう……いきなりキスとかしないでください!!ビックリするじゃないですか……傍にいるなら、これからは確りと意志を伝えてください!!」
「……っ!―――ああすまなかったな、それじゃあ……していいか?」
「―――駄目って言っても聞かないんでしょ?」
「ああ聞かん」
「もう、ご自由に」
「ではそうしよう」
彼の身体を抱き寄せる、指を絡め合う。顔が次第に近づいていくと吐息が混ざり合っていく、そしてそのまま千冬は少々乱暴に、力強く背中に腕を回しながらそのまま口付けを交わす。時間が経つほどに指は解けない紐のように、深く強く絡み合っていく。離れた唇には、粘り気を持った輝きを放つ橋が出来ていた。
「大好きだ」
そう告げた千冬はそのままもう一度キスをする、今まで一番深く熱いキスだった。
本来ヒロインであるはずの女性陣がある意味皆男らしいからヒーローであるカミツレ君の女子力が如何足掻いても目だって、ヒロインに見えるんだよなぁ……。
言うなればカミツレがピーチ姫で、セシリア達がマリオポジ?
誰が攫えるんだ、命知らずにも程がある。