「だぁっまた、負けた……」
「これで15戦全勝っと…」
「気を落すな一夏、戦い自体は悪くなかっただろう?」
「でも負けは負けだぜ……」
「戦法や戦術、機体制御などは向上している。寧ろカミツレをある程度追い込んだ事を誇るべきだ」
ピット内で一夏はまたもやカミツレに敗北してしまった、それでも作戦を練り相手の行動を予測し「蒼銀」の武装に対する動きを確定させて挑んだ。今日こそはという意気込みを込めていたのだが…「蒼銀」のSEを7割にまで削る事に成功したがそこまでだった。思わず作戦が成功した事で油断し、そこへ「ディバイダー」を使用しての打撃によって吹き飛ばされた所へレーザーと実弾を打ち込まれ敢無く敗北してしまった。
「でもなぁ…負けた理由はそれだけじゃないよなぁ…」
「お前のスロットルワークが甘い」
「うぐっ……確かにまあそうなんだけど「白式」の出力がやっぱり強すぎるっていうのがでかいと思うんだ」
「それはあるだろうな、私から見たら必要以上に吹かし過ぎている所が視受けられる。一夏が未熟な事を差し引いてもな」
一番の問題は矢張り「白式」の出力セッティングの問題点、射撃武器などを一切積まずにいる為に大型のウィングスラスターに多くの出力を割り当てる事が出来る「白式」は第三世代型の中でも屈指の機動力を持っている。故にその速度を利用して相手の懐に飛び込んで必殺の一撃を加え勝利する、というパターンの構築を余儀なくされてしまう。だが腕前が上がってるとはいえ非常にピーキーな機体セッティング、まだまだ一夏が十全に使いこなすには時間と労力が掛かる。
「カミツレなら今の「白式」並の出力調整でも行けるだろうけどさ…ぶっちゃけ俺には無理だ」
「弱音を吐くな一夏、無理なら出来るまでやれば良いだけだ」
「いやまあそうなんだけどさ……今の俺には不相応なんだよ、「
「なら敢て出力を落としてみるしかないだろうな、俺も「黒鋼」の時は防御を重視してシールドを大型化しつつ装甲を増加させたから重量が大幅に増えた。それでスピードが落ちて結果的に扱い易くなってたからな」
悪戯に性能が上だから強いわけではない、その性能を使いこなしながらそこに自分の力を溶け込ませる。それによって生まれるのが完全なコントロールと制御しているという事になる。振り回されているならば敢てレベルを下げるのも、自分の実力を大きく成長させる要因にもなり得る。
「うーん……でも俺整備方面全くだからなぁ……」
「安心するが良い、私が面倒を見てやろう。軍ではISの整備訓練も当然やっていたからな、ドイツ軍式の整備を伝授してやろうではないか」
「おおっ頼もしいぜラウラ!」
「任せておくが良い」
胸を張っているラウラ、如何やら彼女は頼られたり褒められるするのが好きらしくその度に胸を張りつつドヤ顔を浮かべ満足げに笑う癖がある。
「では私も付き会おう、ドイツ式のものというのは興味がある。それに一夏だけでは難しいかもしれんからな」
「へへっ悪いな箒」
「それじゃあ俺も付き合おう、自分の目でチェックもしたいからな」
『では私はドライブの布教でもしてきます、用があったら声を掛けてください』
そう言ってコア・ネットワークに潜っていく相棒に周囲は呆れているが、カミツレにとってはもういつもの事過ぎてもう何も思わなくなってきた。遊びに行く兄弟を送り出すかのように自然に行ってらっしゃいと言えてしまえる。ピットから整備室へと向かおうとした時、ピットへと一人の少女が入ってきた。その少女を見た時に、思わず一夏達の表情は完全に凍り付いてしまった。彼らの目には15、6程の少女が見えている、しかしその顔は千冬に瓜二つなのだから無理もない。
「なんだ矢張り間に合わなかったのか…見たかったのだがな」
「何時でも見るチャンスはあるさ、別に今日で模擬戦を終える訳じゃないからな」
入ってきたのは学園の制服を纏っているマドカだった、異常とも言える回復力を発揮した彼女は低体温症から回復しカミツレの護衛としての仕事を始めようとしている所だった。その為に、マドカは学園に編入する事になるのだが今日は制服のサイズチェックや書類などに目を通していたので遅れてしまったようである。
「お、おいカミツレ…ど、どういう事なんだ!?ええっ何で千冬姉にそっくりな子が……!?まさか、千冬姉の隠し子!?」
「ま、待て落ち着け一夏!!あわ、あわわわわわわ慌てるんじゃない…!!明らかに年齢などが合わんだろう!!?た、他人の空似だろう!!世の中には自分とそっくりな人間が3人居るというからその類いだきっと!!」
「だ、だが余りに似すぎているだろう!!?きょ、教官の生き写しを見ているかのような…いや鏡か立体映像なのか!!?」
「……兄さん、説明面倒だから放棄していいか?」
「「「兄さん!!?どういう事だ説明してくれ!!?」」」
「……面倒事の種を撒いて放置すんな……」
カミツレは一瞬説明を暈すべきか、それとも真実を伝えるべきか迷ったが真実の一部を隠して話をする事にした。全てを話すのはマドカと交遊を深めてから、という事にしておこう。彼女はテロ組織が千冬の遺伝子を使用して生まれた存在で束によって救出、自分の護衛として動いてくれる事になったという事を伝える。
「つ、つまり千冬姉のクローン……って奴なのか?」
「厳密に違う。その遺伝子に人為的に手を加えて生み出されたのが私だ、限りなく千冬に近く限りなく遠い別人というべきか。私はマドカという歴とした個人だ、間違っても織斑先生と一緒にはするな。あの人からしても嫌だろうからな」
「わ、分かった……しかし、姉さんがそんな事をするなんて……」
姉のフリーダム且つ意味不明さを理解している箒、まさか姉がそんな事をしていたなんてと驚きの表情を浮かべていた。俄かには信じられないがマドカは真実だといいながら手を差し伸べた。
「お前の姉のお陰で私は組織から開放された、博士からは宜しくしてくれと言われている。宜しく」
「あ、ああ宜しく……千冬さんと同じ顔、慣れるまで掛かりそうだ……」
「私もだ……むぅぅっ教官と同じ、むぅぅっ…」
千冬に恩があり教え子でもあるラウラからすればマドカは非常に複雑というか、なんと言っていいのか分からない。兎に角複雑な感情が渦巻いてしまっている。
「取り敢えず、えっと千冬姉の妹……って認識でいいのかな?」
「まあそれで許容出来るのであれば、それで構わん」
双子の妹、そう思えばなんとか飲み込める事が出来る。箒とラウラもそう思う事にした、そして一夏は手を差し伸べつつ挨拶する。
「じゃあ俺とも家族だな、宜しくなマドカ!あっ俺の事は兄さんって呼んでも良いぜ?」
実は妹や弟が欲しいと思っていた一夏、出来る事ならばそう言って欲しいなぁと思いつつ言葉にしつつ笑みを浮かべている。マドカは手を取って握手をしつつ一夏をマジマジと見つめる、品定めするかのように見つめそれが終わると手を放してカミツレの傍に付いた。
「悪いがお前を兄とは思えんな。何というか…カミツレ兄さんの方が良い」
「……なんだろう、何でこんなにもショックを受けるんだ……!?」
「
「勝ち誇ってんじゃねえよカミツレェ……!!」