「素晴らしいな、ミス更識の操縦技術は」
「ええっ不謹慎でしょうが彼女が私たちの会社に来てくれて良かったと心から思っていますよ」
アリーナで行われている1年の専用機持ちによる戦い、それを来賓席にて観戦している二人の人。その二人はモニターにてもう一度流されている先程の試合、完璧に仕上げられた「打鉄弐式」を操り見事な戦いを繰り広げていた簪へと向けられている。第三世代技術である「マルチ・ロックオンシステム」を完璧に使いこなし、自らの力として昇華されている彼女に尊敬の眼差しを向けながら、素直な称賛の言葉を送る。
「それにしても倉持技研も愚かな事をしたものだ、彼女の専用機開発を滞らせ彼女からの信用を失うとはな」
「まあそのお陰で私達、スマート・コーポレーションが専用機開発を委託していただけたんですけどね」
「その点に関しては馬鹿な政府と愚かな倉持技研に感謝しなければな」
簪の高い能力は素晴らしい物だった、そんな能力を埋もれさせかねない事をした政府の罪は重い。政府の行動や倉持技研の行動もお粗末な物が多すぎる、こんな事だから日本政府は織斑 一夏というカードを手に入れて浮かれていると言われるのだ。優秀な人材は一夏だけではないという事が何故理解出来ないのか……。
「それにしても、本当に良い原石ですね。これからの成長にも期待出来ますね、呉島技術主任」
「確かにな。これなら村上社長、鴻上会長両名に良い報告が出来そうだな里中秘書」
「そうですね」
「だぁぁっ…つ、強すぎるだろあのタッグ……」
「想定以上の強さだったな…まだまだ私たちも精進が必要という事だ」
ピットで身体を休めている一夏とラウラ、試合の結果としてはなんとか勝利をもぎ取る事が出来たが内容は褒められた物ではなかった。二人の変幻自在の戦術に翻弄され、踊らさせれてばかりでラウラですら突破口を見出す事が出来なかった程に柔軟に対応してきた。零落白夜で強引に相手のSEを大幅に削り、ラウラが同時に突貫してダメージを与えるというゴリ押しに近い形で勝利をもぎ取った。
「全体的に高水準で纏まってるから、一点突破みたいな物がなくても関係無いなあれ……。寧ろ状況によって二人が動きを変えて、互いにそれを合わせてくるのがもう必殺技みたいだ……」
「ああ、あそこまで高水準な連携はそれだけで恐ろしい。万能型に有りがちな突破力のなさを完全に補って余りある戦い方だった」
軍人のラウラからしても二人の戦い方は強烈な物だった、シャルと簪の状況対応能力が高い故に発揮出来た戦略とも言える戦い方。無数のプランを組み立てて戦いつつも、戦いの最中にそれを組み直して相手に自分達の戦略を悟られないようにするという戦い方。正直、一夏の零落白夜による強引な突破しか解決策が思い当たらなかった位に厄介であった。
「俺も頑張ったつもりだったけど……あのミサイル群にはビビった」
「私もだ。まさか独立稼動式のミサイルをあそこまでマルチロックするとは……」
簪のミサイルは相手の逃げ場を制限しつつ進路誘導するかのような物で、一夏はそれにまんまと嵌ってしまい誘導された先にはパイルバンカー構えたシャルが満面の笑みで此方に向かってきた。それに絶句しながら咄嗟に回避行動を取ったが、肩の一部にそれを喰らいながらもシャルを雪片で斬りつけながらその瞬間に零落白夜を発動させ大ダメージを与える事に成功した。結果的には罠に嵌ったからこそ勝利したとも言える。
「漫画で「相手が勝ち誇った時そいつはすでに敗北している」って読んだ事あるけどまさか策に嵌ったからこそ勝てるとは思わなかったよ……」
「まあともかく勝利を喜んでおこう、この反省を生かして次の勝利に繋げる事こそに意味があるのだからな」
「おう分かったぜラウラ少佐殿、これからもご指導ご鞭撻を宜しくお願い致します」
「うむ、良い心がけだ織斑訓練生」
という掛け合いをしているとピット内に備え付けられているモニターへと視線を移す、そこにはカミツレとセシリアと鈴と乱のタッグが繰り広げている激闘が映りこんでいる。
「うわぁ……何あれ魔境かよ…」
「私たちの戦いは言うなれば作戦がぶつかり合った物だったからな、あれは言うなれば純粋な技術のぶつかり合いというものだ。違いがあって当然だが凄まじいな」
モニターでは激しく交錯しつつもブレードをぶつけ合いながら二人の相手を同時に行っているカミツレ、そんな彼を後方から支援するセシリア。BT兵器を最大限活かしながら、自分たちの方が多人数であると言わんばかりの猛攻を仕掛けている。全方位から差し向けられてくるレーザーの雨、そこへ突っ込みながらもブレードで斬りかかるカミツレは時折「稲妻軌道動作」と「個別連続瞬時加速」を織り交ぜながら激しく攻め立てていく。それらを絶妙なタイミングでフォローを加えつつ、相手の動きの全てを別の視線で見つめ把握しているかのように計算立てられた射撃を加えるセシリア。
それらに対抗するように得意技術である「超速零速」で相手との距離を取ったり死角へと回り込んだりしつつ、全方位をカバー出来る衝撃砲を組み合わせてカミツレとセシリアの猛攻を食い止めつつも隙を見て攻め込んで行く鈴。それらに支えられながらも攻撃に集中しつつ、相手のペースを乱す役目を背負いつつ大ダメージを狙う乱。例え全方位からの攻撃からだとしても「爆発反転」にてそれらを避けていく乱。互いの技術の全てをぶつけ合うかのような戦いは、それらを見ている皆を釘付けにするかのようなものであった。
「BT兵器搭載型が組んでるってだけで気分的には6対2ぐらいだろうなぁ……よくもまあ鈴と乱さんはあそこまで…俺だったら開始5分で落ちる自信あるよ」
「正直あの二人のタッグは私もずるいと思うからな」
そんな二人の感想がある戦いは続いていったが、最終的には双方のISのSEが尽きてしまう引き分けという形で終わりを告げてしまったのであった。
カミツレ&セシリア、鈴&乱。
この試合で一体どれだけの高等技術が出たのだろうか。
普通にこの試合のデータって売れば相当な金になると思う。