IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第121話

「ふむ…真耶、データはどんな塩梅だ」

「良い感じに収集出来てますよ~、凄い成長してますね」

 

管制室にてアリーナの戦いから得られるデータを集めつつ整理している千冬と真耶、次々と得られていく各専用機持ち達の稼動データ。以前取られた時よりも格段に成長し技術も磨かれている、こうして生徒達の成長が目に見えて分かると嬉しくなる。これも教師としての仕事の楽しみの一つと言える物だろう。

 

「見てくださいカミツレ君、何と機体稼働率が82%に上がってますよ!」

「流石は束が認めただけはあるという事だな、まあ稼働率は確かにどれだけISを活かしきれているかという事だがそれと操縦技術は別の区分だがな」

「言うなればマシンスペックをどれだけ引き出せてるかですからね」

 

それでも弟子の成長が嬉しい真耶、このままどんどん強くなって行って貰って欲しいと心から願っている。

 

「もしかしたらこのままモンド・グロッソの出場なんて事もありえたりして!!」

「おいおい流石に気が早すぎないか?まだあいつは1年なのだぞ」

 

それでも可能性自体はあるじゃないですか、と語る真耶の表情は心からそれを信じているかのような物だった。カミツレならきっと将来的にモンド・グロッソの出場だって狙えるのは確定的だと、真耶は心から信じている。確かに彼の伸びしろはまだまだある上にカチドキという未だ世界のIS操縦者が至れない領域に立っている、ある種世界中がカミツレを目標にして歩んで行くべきなのかもしれない。

 

「まあ何れ奴もその領域へと辿り着ける事だろうと私も信じているさ」

「ですよね!!」

「ああっなんたって私のカミツレだからな」

「ちょっと先輩!!カミツレ君は私の弟子ですってば!!!」

「ははははっすまんすまん」

 

この場合の意味はかなり異なっている。千冬とカミツレの関係は既に師匠と弟子を越えてしまっている男と女の関係で完全な恋人同士。真耶の言いたい関係とは全く違う物になっている、しかし師匠と弟子という関係も非常に深く強い絆で結ばれているのも変わりない。

 

「(ああきっと行けるさ…私を射止めた男なんだからな。それに一夏、お前だってその資格は十二分にあるさ)」

 

そんな事を思いながら画面を見つめる千冬の視線の先にはそんなカミツレと激しく斬りあいつつも背後から迫ってきた「ヴァンガード」に気付けずに一閃を浴びつつも蹴られている弟の姿があった。今はまだ未熟で良い、誰だって未熟な所からスタートして努力と成長を重ねて成熟して行く。最初は不安だったが今ではカミツレにも追いつこうとするほどの成長を努力でなしている。きっと彼のライバルになれる時も近いだろう。

 

「(……しかし私の夫と弟がライバルというのはなんだか奇妙な気分だな)」

「あっ織斑君落ちちゃいました!?」

「あれは流石に酷い……零落白夜を完全にメタられたな…。遠距離からのライフルとBT兵器、そして大型シールド砲による一斉射撃……まあうん、それだけ警戒されたと思うんだ一夏うん」

「せ、先輩顔引き攣ってますよ……?」

 

何とかフォローの言葉を見つけようとした千冬だが零落白夜を完全警戒された上での行動でやられてしまった一夏、しかもあれだけの弾幕を張られてしまってはきついとしか言いようがない。しかもセシリアは放ったBT兵器のレーザー全てを自在に操るという「BT偏向制御射撃(フレキシブル)」を成功させて全方位からレーザーが突き刺さって行った。あれは流石にしょうがない……。

 

この後、ラウラはドイツ軍人の意地を見せつけ二人の残り合計SEを47%まで削るという成果を成し遂げたが…流石に分が悪く敗北を喫してしまった。一夏は試合終了後に新聞部の取材でのコメントで

 

「レーザー曲げて全方位から集中砲火とかエグ過ぎるんですけど」

 

と答えている。それには新聞部の生徒も思わず同意せざるを得なかった。因みにこのレーザーを曲げる「BT偏向制御射撃」を見て簪とカチドキはハイパーカブトの「ハイパーシューティング」みたいだ!!と興奮したような言葉を残し、カチドキはカミツレに絶対にあれを習得しよう!!と鼻息を荒くしていた。

 

 

見事な勝利を飾ったカミツレとセシリア。これで1勝1引き分けという戦績となっているがこれはあくまでデータの収集が目的なので勝敗を気にする必要はない筈なのだが…如何にも入学当初の成績を気にしていた時の影響が色濃く残っているのか気にしてしまう。それに幾ら勝敗は関係ないといってもどうせなら勝って終わりたいというのが人情という物だろう。一旦休憩時間と銘打たれたISのSEの回復時間、約30分の休憩時間にカミツレはトイレを済ませてピットへと戻ろうとしていた時だった。

 

「あの、カミツレ君」

「……ああアンタか、会長」

 

振り向くとそこには簪の姉である楯無が其処に居た。正直言って会うのは久しぶりの気分だった。

 

「今更だけど、あの時は本当にごめんなさい……政府の命令だからって、あんな事をして・・・・・・正直貴方に事情を説明すれば良かったのに……」

「それについてはもう良い、アンタの事情は把握した。妹を守りたいってのもな」

「それでも、ごめんなさい……」

 

素直に頭を下げてくる楯無にカミツレは如何にもむずむずとするのかガシガシと頭を掻き毟っている。彼女の事情は許容しているし理由も分かる、政府に仕える家ならば寧ろしょうがないととも思う。しかし…なんとも言えない気持ちが心の中に沸きあがって来てなんと言い表したらいいのかわからない。

 

「ああもう、悪いと思ってたら俺の家族の護衛というかその位やってくれても良いよな!!もうそれで帳消し、俺とあんたはそれで関係は0からのスタートもうそれで良いよな!!!」

「―――い、良いの!!?」

 

思いっきり顔を上げた楯無の目には涙が溜まっていた。到底許して貰おうなんて思ってもいなかったのにカミツレからの申し出は彼女にとって予想していなかった物だった。

 

「俺にとってアンタより家族の方が大切なんだよ。だからああもうそういう事だよ!!」

 

言いたい事は全て言い切ったと言わんばかりにピットへと走って行くカミツレを見送った楯無、目からは大粒の涙が零れながらも一度彼へと頭を下げた。

 

「カ、カミツレさんどうしたんですか?妙に荒れていらっしゃいますけども……」

「ちょっと色々あったんだよ……」

「それじゃあ落ち着くように致しますわね……んっ―――」

「ちょ駄目セシリア急には―――むぅぅ―――っ!!」

 

この後、千冬が応援の言葉でも送ろうとピットを訪れるとそこには顔を赤くしたカミツレと満面の笑みを浮かべたセシリアが抱き付いている光景が広がっていた。それに直感が働いた千冬は勝利を願う戦乙女からの贈り物という事でセシリアと同じように熱いキスを送り、カミツレの赤面化は更に加速したのであった。




素直になりきれないカミツレ君
そしてやっぱり彼には女難の相があるんじゃないかな、ある意味で。

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