IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第122話

専用機持ちタッグマッチ最終戦。カミツレ&セシリアタッグ VS シャルロット&簪の戦いが行われている第3アリーナでは大激闘が繰り広げられていた。両手に六一口径アサルトカノン(ガルム)を抱えて射撃を行ったまま水平移動をしながら回避と攻撃の両立をするシャル、そんな攻撃を「ディバイダー」で防ぎながら「スターダスト」で射撃を行いながらも周囲に目を光らせているカミツレは「ヴァンガード」を操ってシャルを追い込んでいく。

 

一方簪はアリーナ全体の戦況を頭に叩き込みながらライフルでシャルへの援護射撃を行いつつ、此方を見てくる「ブルー・ティアーズ」の攻撃を回避する。そして同時に手薄になっているセシリアへとミサイルをロックして発射していく、煙の尾を引きながら向かっていく矢。セシリアの自らのライフルと近くに置いている二基の「ティアーズ」では到底対処しきれない筈のミサイル、しかしセシリアは落ち着き払いながら「ティアーズ」から発射したレーザーを拡散させながら自らを囲うような網を張ってミサイルを捕えるかのように両断する。

 

「強い……!!」

「最初こそ制御が難しかったですがもう、慣れましたわ。この力は完全に私の物ですわっ!!」

 

ライフルを連射しながら簪の攻撃を凌いだセシリアは自信に溢れていた。今の彼女に不安などない、愛しい恋人と同じ場に立てている事の嬉しさと彼の相手として相応しくなるという気持ちが機体稼働率を引き上げ「BT偏向制御射撃(フレキシブル)」を可能にした。その強さは発射したレーザーを拡散させ、その一つ一つすら完璧に操作するほどの凄まじさを見せる。正に「ブルー・ティアーズ」を扱うに相応しいとされた彼女の面目躍如である。

 

「まさかこんなにっ……!なんて、カッコ良いの……!!」

 

セシリアの強さと「BT偏向制御射撃」の凄さに舌を巻きながらもその見た目的に凄いカッコ良い光景に簪は強い興奮を覚えていた。周囲を飛び回っているBT兵器達はセシリアとカミツレの意志の下で此方を狙って攻撃を仕掛けてくる。マルチ・ロックオンシステムを最大限活かして此処まで良い成績を残してきたつもりだったが上には上がいるという事だろう、そして同時に自分がシステムに依存してしまっている事を突きつけられた。

 

「更識さん後ろッ!!」

「セイヤァァァァッッ!!!!」

「ッッ!!?」

 

急接近して来たカミツレはその手に持ったブレードですれ違いざまに背負っていた片側のミサイルポッドを切り裂いて行った。それによって半分のポッドが破壊されてしまいミサイルの発射数が半分にまで落ち込んでしまった。それだけではなくカミツレは「ディバイダー」を分離状態にして目の前に操作するとそれを蹴って自分へと飛び込んできた。

 

「うそっ!!?それってまさかっ!!?」

 

それを身をよじって回避する簪だが、カミツレが何をしようとしているのかを直ぐに察してこの場から脱出しようとするが、自分とカミツレの周囲を取り囲むかのようにレーザーが張り巡らせられていた。一時的に閉じ込められたがそう思うよりも早く再び「ディバイダー」を蹴って方向転換して来たカミツレの蹴りを貰う。

 

「ま、間違い無いこれって……!!!」

 

高速で簪とカミツレの周囲を回転していく「ディバイダー」を蹴って次々と簪へとキックを決め、再び「ディバイダー」を蹴って簪へとキックを決めるというのを繰り返していく。そうこれはカミツレの相棒であるカチドキが大好きな戦士ドライブこと「仮面ライダードライブ」の必殺技である「スピードロップ」をカミツレなりに再現した技なのである。

 

「セイヤァァァァアアアッッ!!!!」

 

気迫と幾度もなく繰り返させた事で加速した「蒼銀」はトップスピードのまま簪へと蹴りを炸裂させながらその速度のまま地面へと着地するが余りのエネルギーに着地した地面からは炎と煙が上がっている。その一撃を受けた簪はSEが尽きてしまい脱落してしまった…がその顔には全く残念そうな色は浮かんでいなかった。

 

「更識さん大丈夫!?」

「か、感動……っ!!」

「え"っ」

「まさかドライブの「スピードロップ」を体験出来るなんて……!!これなら私も「スマート・コーポレーション」さんにお願いして、装備を開発してもらえれば各ライダーの必殺技が出来るようになるかもしれない……!!」

 

今や彼女にとって負けた事など大した問題などではなくなってしまった。大好きな作品の必殺技を再現、それはその作品のファンにとって一度は夢を見る事。簪だって大好きな仮面ライダーの変身セットを装着しながら遊んだ記憶もあるし、ライダーの必殺技をやってみたいと何度夢見た事か。これほどまで再現を出来るというだけで彼女に取っては大感動ものなのである。

 

「凄い、やっぱり貴方は私のヒーロー……!!」

「ええぇぇっ……」

「シャルさん、では貴方は私がお相手しますわ♪」

「あっうん。でも「BT偏向制御射撃」は勘弁してもらえないかな……?」

「手加減なんて失礼ですから全力で使いますわ♪」

「ですよねぇぇぇっっ!!!」

 

 

「……やばいな「ディバイダー」がオーバーヒートしちゃった…。流石にロクな調整も無しにやるのは無茶だったか」

 

カミツレは「スピードロップ」に使用される時のトライドロンの代わりに「ディバイダー」を使用したのだが、そもそもこんな使い方は想定されていないので多大な負荷が掛かる。今回が初めての挑戦だった上に調整もせずにやった、今度やる時には確りと準備をしなければいけない……しかしそれについては問題ないだろうし悔いはない…だって。

 

『カミツレアナタはなんて素晴らしいのでしょうか!スピードロップをやるなんて!!これは早速専用のプログラムを組んで完璧なスピードロップを完成させなければいけませんねそのプログラムは是非私に組ませてください!!後博士にお願いしてシフトカーとかの準備を……後どうせなら「ディバイダー」をトライドロンみたいに改造しませんか!!!?』

「うん、まず落ち着け」

 

相棒がこんなに喜んでいるのだから。この後、シャルはセシリアに倒されてしまった。それでもかなり善戦した部類ではあるだろう……そしてカミツレは簪にサインを求められてしまったという。




因みにディバイダーをこういう風に使ったと報告書を上げたら
イギリスの技術者から何でこんな使い方思いつくんだ!?と怒れた模様

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