無事検査入院から退院して来ました。元々大した事ないのに家族が念のためと言って行って入院でしたのでこれから再開して行きます!
「ぐぐっっ……!!!」
『カミツレ、無理はなさらないで下さい。既に限界数値を20%もオーバーしています』
「た、高々2割だろう!!俺はまだまだ行けるっ!!」
アリーナを飛行する一機のISの姿は観客席から見えるほどに鋭く尖りつつも洗練されている物が明白になっている。入学当初のそれとは比較にすらならない操縦技術は弛まぬ鍛錬と慢心なき気持ちによって磨かれた技術の結晶。しかし今日のカミツレのそれは違う物があった。繊細さが欠けている事に加えて周囲を周回しているイギリスが特に力を入れているBT技術が使用されている「ヴァンガード」の動きが妙に乱れている。
BT兵器「ヴァンガード」は第三世代型に区分されるBT技術が導入されている物で本来は搭乗者が制御する物なのだがカミツレの場合はコア人格であるカチドキによって制御稼動されている。これによって並列思考を行う事が出来ないカミツレはセシリア同様の動きをする事が出来る…しかし今「ヴァンガード」はカチドキよって制御されておらずカミツレが制御している。
「うぉらぁそこぉ!!」
『命中率28%です。ご満足いただけましたか?』
「……ああもう大丈夫だ」
制御を再びカチドキへと明け渡すと頭を支配していた頭痛が一気に消えて行きクリアな思考が可能になって行く。普段通りの物になっていく。先程までは身体中に拘束具を付けられていたかのように気分だった…これを十全に扱えるセシリアの凄さが改めて感じられる。
『しかし「ヴァンガード」の制御をやってみたいとは一体如何したのですか?』
「いや純粋に普段お前にどのぐらいに負担を強いてるのかを知りたくなったのさ。相棒としてその位は知って置かないと駄目だろ」
『カミツレ…嬉しい気持ちもありますが私と貴方では違う点が多くあります。そこも確りと理解した上で申し出てください。適性はあるとはいえセシリアほどではないのですから彼女のようにやるのは難しいのです。だからこそ私と貴方で分担を行っているのです』
一度体験してみたかった実際のBT制御の難しさという物、普段それを背負ってくれているカチドキの凄さとその苦労を実際に体験してこそ感謝が生まれるとカミツレは考えてそれを実行した。何せこれから起ころうとしている出来事はそれだけの準備が必要なのだから。
『フランス、アメリカそしてイタリアから国家代表者の来日。そして彼女らによる直接指導が始まる訳ですからね』
「ああ…ヨランドさんともう一度戦えるチャンスじゃねえか」
急遽企画されたIS学園の新しいイベント。それは各国のIS国家代表による一時的な指導である。各国が有力な生徒を発掘しスカウトするという意味合いも含まれているので様々な思惑が交錯する場となる事は間違い無い。本来はもっと他の国も参加する予定だったらしいが…各国で話し合った結果今年はフランスとアメリカそしてイタリアに決定したらしい。なんにせよカミツレにとっては尊敬するヨランドに再び教えを請える上にもしかしたら戦えるかもしれないと思うと興奮してくる。1年を指導するのはフランス、即ちヨランドなのだから。
「あの時の敗北をバネにしてるんだ。成長を見せ付けてやるぜ……!!」
『その意気ですカミツレ。そのぐらいではなければ部屋で待っているお母様を受け止め切れませんよ』
「え"っ束さん来てんの!?」
『はい。いっぱいキスをすると仰っておりますので覚悟しておいたほうが良いかと』
「OH……分かったよ」
部屋に戻った時にどんな事になるのかを把握してしまったカミツレはやや肩を落としつつも束にあえる事を喜ばしく思いながらピットへと向かって行くが途中である事に気付いた。
「……なぁカチドキ。ヨランドさんって凄い新人の育成好きだったよな…?」
『YES。ヨランド・ルブランは『新人潰しの破壊淑女』と言われるほどに新人の育成に力を入れています』
「それが俺達1年に向けられるって事はさ……潰れる生徒続発するんじゃね……?」
『それはきっと確定的に明らか。きっと当日はヨランド=サンによるインストラクションによって獅子累々のようなアトモスフィアがアンブッシュしている事でしょう』
「おい忍殺語やめろ。翻訳するのが面倒だ」
『アイエエエエ……気に入っているのですが』
「というかサラっとブロント語も混ぜんな」
凄い個性豊かになってきているのは良いのだが…時々自分で動画サイトなどを見てその影響を受けて口調がおかしくなるカチドキ。それに対応する自分の身にもなって欲しい物だ…。
『では今度はかんしゃく玉の時間と言う事で……』
「おいやめろ。俺は地球防衛軍に雇われた傭兵じゃねえんだぞ、誰が地雷伍長だ」
『シーホース』
「やめろ誰が三幻馬の話をしろと言った」
とそんな楽しげな話をしながらもピットへと戻って行くカミツレ。そして部屋に戻るとそこには束が待機しており思いっきり抱き付かれた上でキスをされるのであった。
『ルブラン代表本当に宜しいのですか。IS学園へ行くというのは』
「良いに決まっておりますわ!!ツェレに合うチャンスを態々潰すなんて天地が引っくり返ってもありえない事ですわ!!」
『さ、左様ですか……で、ではお仕事の邪魔をしてはいけませんのでこれにて」
通信が切れた室内に木霊するのは叩かれるキーボードの音は酷く激しい上に凄まじい速度で叩かれている。その日を無事に迎えるために全ての仕事を終わらせようとしている。普通ならば無理であろうがこの淑女であるヨランドならば可能になるのである。
「フフフッ…待っていてくださいツェレ。もう直ぐわたくしが行きますわぁぁぁっ!!!」