IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第133話

「うぉぉぉっっ!!?」

「おおっこれを避けますか!!」

 

授業の一環として行われる事となった真耶と久しぶりの訓練をしているカミツレ。そして改めて教員としての実力を見せ付けるのと高等技術の実演としての模擬戦を行っている。実質的な二対一という状況だというのに真耶はカミツレの全てを知り尽くしているのかのような動きで全てに対応して行く。死角からの攻撃で意識を逸らしながら複数の角度から本命を叩きこもうとしてもその場でアクロバットな回転で回避しながら「ヴァンガード」を打ち落とそうするという末恐ろしい所業をやろうとするなどと今尚衰えない強さをみせ付けている。そんな真耶からの猛攻を受けながら地面へと真っ逆さまに落下して行くカミツレへと迫って行くライフル弾、それを回避する為に盾として保持していた「ディバイダー」のバーニアを稼動させてそれに自身を引っ張らせる事で攻撃を回避する。

 

「あれ避けるってどういう事だよ!?真耶先生明らかに強くなってねぇか!?」

『操縦技術が現役時よりも13%増加していますね。明らかに強くなっています。良かったですねカミツレ、越える壁がより乗り越え甲斐があるものになりましたよ』

「ああそうだな!!」

 

地上を滑るかのように移動しつつ新しいEパックを「スターダスト」に装填しながら連射を行う。回避されていくがそれは分かっている。行うべきは真耶に実力の100%を引き出せないようにする戦いでありそれさえ出来れば自分の勝率はグンっと上がるのだから。

 

「エネルギーの充填率は!?」

『完了しております、しかし今発射しても回避されるのが目に見えております』

「上等!!」

 

地上から飛び立ちながら一気に加速して真耶へと接近して行く。真耶は両腕で抱え込んだ重機関銃を連射しながら後退しながら自分のペースを保っていく。銃撃によるプレッシャーと尋常ではない弾幕、それを防ぎつつもカミツレは出力を上げて瞬間的に姿を消した。

 

「個別連続瞬時加速…!!そこっ!!!」

 

ハイパーセンサーすら誤認させて姿を捉えきれなくする技術でも真耶に蓄積させられている経験と技術はそれらを完全に捉えていた。だがそこにあったのは身代わり同然に置かれていた「ディバイダー」であった。

 

(デコイ)!?まさか二重(デュアル)個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)!!?」

 

警戒する真耶はハイパーセンサーの感度を最大限に引き上げて周囲を警戒すると直ぐに反応が見つかった。それは先程囮として置かれていた「ディバイター」の位置であった。そこには確りと掴んだ手によって開かれた「ディバイダー」内部の砲塔がこちらを睨みつけながらカミツレが不敵な笑みを浮かべていた。二重の罠が張られていた……!!

 

「こいつの威力はお墨付きだっハモニカ砲…いけぇ!!!」 

 

防御兼推進システムである「ディバイダー」の隠し玉。それは通常時は二つに分けられシールド兼バーニアとして機能するそれを一つに連結させて大きな盾としてする事で完成する必殺の多連装レーザー砲。それが今遂に発射された。連なった砲塔から放たれていくレーザーの束が勢いよく真耶へと向かって行くが回避するには反応するのが遅過ぎた筈だった……それを針の穴を通すかのように最上級とも言える技術でミリ単位で機体を動かして全てのレーザーを掠られる程度ですませてしまった。

 

「うそ~ん…」

「まだまだですねカミツレ君♪」

 

そして同時に叩き込まれた一丁の大型リボルバーの一撃が胸部を捉え「蒼銀」のSEを削り取った。残ったSEの多くを「ディバイダー」の内部砲、カミツレはハモニカ砲と呼んでいるそれにつぎ込んでしまった。空っぽになったSEによって敗北の判定が下されてしまいカミツレは師にまた敗北してしまった。

 

「やり過ぎだ馬鹿者」

「あいたっ!?」

 

教員側のピットへと戻って来た真耶を待っていた千冬からの拳であった。

 

「誰が本気の7割を出せと言った。これは生徒たちに見せる実演だぞ、カミツレに本気を出しおって……」

「いやぁすいません……カミツレ君の成長が実に素晴らしかった物で…」

「ハァッ……あんな物を見せ付けても為にならんぞ…?高等すぎる」

 

真耶が見せた実演は実演の域を遥かに超えてしまっている。完全にモンド・グロッソクラスの戦いで行われるべき物をやってしまっている、それも生徒相手に。確かに高等技術ではあるが余りにもレベルが高すぎる。これでは生徒にも困惑を与えてしまうし参考にもならない。

 

「でもつい昔の血が騒いで…カミツレ君に対抗したくなっちゃって」

「それで自分の全力を叩き潰されたあいつの身にもなれ…」

「あっ……」

 

弟子との戦いで感じてしまった凄まじい高揚感と興奮は現役時代のそれと匹敵する物であった。愛する弟子が強くなっている事とそれを育てるという嬉しさが理性を凌駕して全力に近い物を発揮させてしまった。本来は弟子のそれを受け止めてあげる筈なのにそれを完全に打ちのめしてしまった。先程のそれは確実にカミツレの全てを出し切った物だった、しかしそれは真耶にあっさりと足蹴りにされるかのように打ちのめされてしまった。

 

「先程、あいつの様子を見に行ったが黙り込んでいたよ」

 

真耶が戻ってくる前にカミツレの様子を見に行った千冬はカミツレが壁に背中を預けながら頭にタオルを被って俯いている姿を目にした。何も喋らずにただただ荒い呼吸だけが木霊していた。自分の全てを持ってしても未だに見えない頂という未来、その前に立ちはだかる師匠にすら届けなかった自分の力に何を覚えたかは彼にしか分からないが千冬は何も言わず彼を一人にしてあげる事しか出来なかった。顔を上げたカミツレが最初に行ったのは壁を全力で殴りつけた事だった。

 

「……」

「それでも奴は闘志を燃やしていたが…真耶少しは師らしくしたら如何だ?」

「うぅぅっ……」

 

折れる事はなかったがそれでも悔しさを滲ませていたカミツレは更なる努力を誓っていた。真耶はそれに応えるべきだろうがもう少し師として慎みを覚えた方が良いのも確かである。師としての経験が薄い彼女にはまだまだ分からない一面でもあるが。

 

「やれやれ…師弟共々手が掛かるな」

「すいません……」


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