「んんっ~?カチドキの処理データが凄い膨大になってるな~。随分とカッ君の事を溜め込んでるねぇ~」
機械の樹海の中に座りこんで作業を続ける兎は目の前に投影されているデータを片手間に分析しながら本命である愛する旦那様の相棒であるコア人格のデータを見つめていた。真の自分の理解者であると同時に興味深い関係をISと築いている人でもあるカミツレと相棒関係にある
「やっぱりカッ君が男の子だからかな~?複雑にデータが絡み合ってるな~これは興味深い。一回詳しく分析してみようかな」
データをダウンロードしながら同時進行で解析していた物を終わらせる。彼女にとってカミツレは特別以上の存在なのだから何よりも優先される事柄なのである。
「―――興味深いねやっぱり。流石束さんの旦那様♪今度あったら押し倒していっぱいキスしよっと♪」
とカミツレが学園で身震いをする背景にはそんな彼女の言葉があるのであったが彼も彼で束以外の3人の恋人との触れ合いなどもあってそんな身震いなんて気にしている暇など無かった。特に千冬は求めてくる際一番激しいので一番体力を使う相手とも言える。
「遂に来週の月曜から国家代表の指導開始かぁ…」
「千冬姉と同格だった人が来るんだろ。どんな人なんだろうなぁ……」
その日は午前中で授業が終わり久しぶりに皆で弁当を持ち寄って屋上で食事会を開きながら来襲の事に付いて話し合っている。因みにカミツレの弁当はセシリアと乱の合作である。恋人になってからカミツレはセシリアの料理について進言して彼女に料理を教えて腕前を改善する事に成功した。改善に至るまでは凄い道程だったのだが敢て言及はしないで置こう。そして此処には居ないが職員室で弁当を突いている千冬と共にいる真耶の弁当は杉山ファームの野菜を使ったカミツレ製である。
「特にイタリア代表なんて第2回IS世界大会モンド・グロッソ優勝者で事実上の世界№2と言える存在だからな」
「うんでも織斑先生との決着が付けられなかったからブリュンヒルデ受賞は辞退してるんだよね。だから学園に来た時には織斑先生と戦うんじゃないかって噂されてるんだよ」
「第2回っていうと俺が誘拐された時か…なんか申し訳ない感じが……」
千冬が第2回のモンド・グロッソの決勝戦を棄権する原因となったのは一夏が誘拐されそれを助け出す為の物。当時の一夏は完全な被害者で別に責任を感じる事はないのだが彼からしたら複雑な心持ちになってしまうのだろう。
「だが気にしていてしょうがないだろ。過ぎた事は今更悔いてても意味なんかねえぞ」
「いやまあそうなんだけどさ…」
「それに、それでイタリア代表のアリーシャ・ジョセスターフがなんか言ってくるならその程度の人間だったって事だ。そんな人間に千冬さんと同じ称号なんか相応しくねぇよ」
そう言い切りながら二人が手掛けた照り焼きチキンを口を運んで美味いなと言葉を漏らすカミツレにその場の全員から視線が注がれている。この場に本人が居ないからいいもののIS操縦者の№2というべき存在にここまで言う事が出来る人間もそう居ないだろう。千冬と恋人であり尊敬し目指すべき人にヨランドという存在がいるカミツレだから言える台詞だろう。それに箒とラウラも同調するように声を上げる。
「だがそれもその通りだ。今なら別だろうが当時の一夏からしたら致し方ないだろう。それに何か言ってくるならイタリア代表も世間で言われるほど立派ではないという事だ」
「うむ。それにこういう言い方もあれだがあの棄権があったからこそ今がある、まあ私が言うのも本当にあれだと思うが」
「いや本当よ。特にラウラはよくもまあ、あんな事言うわね…でも二人の意見にアタシも賛成よ。一々昔の事でグダグダするなんて馬鹿のする事よ」
「ちょっとお姉ちゃん駄目じゃん。悩んでるんだから馬鹿って決定しているんだから」
「うぉいそこの中国系コンビハッキリ言いすぎだぁ!!!」
「「事実じゃん」」
「うぐっ……!!」
自覚があるのか何も言えなくなる一夏に周囲から笑い声が零れる。顔では苦い顔をしつつも内心では一歩踏み出す為の一言を言ってくれたカミツレに感謝する一夏。そんな事も露知らずに心配事を抱えているカミツレ、そう1年の指導をする事になっているのは自分が尊敬する人でもあり師の一人とも言えるヨランドなのである。
「しかし1年の指導をされる方も十分凄い方ですわ。現フランス代表であるヨランド・ルブランですわ」
「そうなんだよねぇ……ハァッ…」
「如何したんだよシャル溜息吐いて…もしかしてフランスの代表候補だから比較されるかもって思ってるのか?」
「いやヨランドさんと比較される事とかなかったから別に何とも思ってないよ。一番の問題なのはヨランドさんは新人の指導が凄い好きなんだよなぁ…」
それに一夏はいいじゃないか。国のトップが新人の育成に力を入れるなんてと口にする…まあその通りかもしれない。だがこの場合は力を入れている事が大問題なのである。
「ヨランドさんはね……ある通り名を持ってるんだよ。それは『新人潰しの破壊淑女』っていうんだ」
「な、なんだよそれすげぇ物騒だな……」
「あっ~それ思い出したわ!!!確か此処数年で潰した代表候補予備生が何十人もいるって話あった!!」
「なんだよそれとんでもねえ危険人物じゃねえか!!?」
「何を言うんだヨランドさんは素晴らしい人だぞ。訂正しろ」
と青ざめた顔をしている一夏に訂正を求めるカミツレに視線が向いた。
「な、何でだ?」
「確かにヨランドさんの指導は凄まじくきつい。常に全力の最大値を上昇させようとする訓練で潰れかねないが乗り越えると確実にレベルアップ出来る程に素晴らしいんだ。マジできついけど」
「なんだか凄い実感こもってるわねカミツレ……」
「俺もあの人の指導を受けたからな……フフフッお前達もそれを味わえばいいんだ」
と若干死んだ目でそれを言い放つカミツレに一同の表情が青くなっていく。ヨランドの事は深く尊敬し感謝しているが訓練メニューは本当にきついの一言に尽きる。それを自分以外の人物も一緒に味わうと分かると自然と口角が上がってしまうのは何故だろうか…。