IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第137話

「し、死ぬ…死んじゃう……」

「安心しろ。昼休みが終わるころには回復する程度の疲労だから死にはしない」

「それはそれで死刑宣告ものなんですがそれは……」

 

追加されてしまったメニューをこなした一夏とカミツレは昼休みまでの僅かな時間にも身体を休めていた。メニューをこなした生徒は休んでいても問題はないのだが専用機持ちはなんとかこなせていたが一般生徒の皆はまだ終わっていない子ばかりで苦労している、唯一完全に終わっているのは箒とのほほんさんのみである。流石の箒も疲労で顔を染めつつも隣で変わらずに笑みを浮かべ続けているのほほんさんへ一種の尊敬を向けていた。

 

「カ、カミツレアンタなんでそんな平気そうなのよ……?ラウラでさえ息乱してるのに…」

「わ、我が部隊の訓練基準もこのぐらいにすべきだな……これは、教訓になる」

 

全力で肩で息をする鈴とその隣で息を乱して空を見上げているラウラ、乱れた息を整えながら本国の部隊の訓練を見直すと心に決める。これほどのメニューをこなすべきだと思っている反面、部下にも自分の苦しみを味合わせてやると決心している一面もあったりする。そしてカミツレが自分の苦しみを知ればいいといった意味を理解しそれを部下にも味合わせようとする部下愛に溢れた隊長殿の姿がそこにあった。

 

「俺はシャルが社長になるって決まった時に一緒に来たヨランドさんに鍛えて貰ってたし、それからもヨランドさんと会った時には鍛えて貰ってたからな。それで慣れたんだ」

「それで慣れちゃうのが凄いよね…僕も受けてたけど全然慣れないもん」

「まあ居なかった時も真耶先生のメニューがヨランドさん並にきつくなったりする事もあったからな…それも影響してるんだろうな」

 

どこか遠い目で空を見上げているカミツレに専用機持ち達は自分が知らない間にそんな苦労を重ねていたのかと…と憐みの籠った眼で思わず彼を見た。そりゃあのヨランド仕込みとそれに負けじとメニューを作り直した真耶の訓練をしていればいやでもレベルアップするかと納得してしまった。

 

「しかし…凄いですわねこのメニュー。私たちがすべき事、目指すべき技術習得のための訓練が満遍なく組まれていますわね」

「しかも身体に無理が掛かりすぎないように配慮までしてある…まあこれって優しさという名のスパルタ仕様よねこれ」

 

身体に限界以上の疲労が溜らぬようにしながらも身体に負荷をかけて成長を促し、全力の先を目指すメニュー。必要以上に痛めつけてしまっては成長も出来ないし動けない時間が出来てしまうからという配慮までされている…逆にそれは動けなくなる事はないし普通に体力は回復するからその分訓練しろという物である。

 

「それでもやっぱりカミツレさんは凄い…私もこのメニューをカミツレさんみたいにこなせればもっと強くなれますか!?」

「そりゃまあ……なれるんじゃないかな。俺の場合は完全な慣れだけど、ヨランドさんの奴はこなせばこなすだけレベルアップするようなものだからな」

「おおおおっっ燃えてきたぁぁぁ!!!まさか現実で修行パートが出来るなんて…はっそっか、カミツレさんはこれを習慣にすることで強くなった……つまり習慣の中に修行あり!!?」

「いや俺別に拳聖になった覚えないんだけど…」

 

どこかのスーパー戦隊的なことを言い出す簪に軽く突っ込みを入れるカミツレであった。しかし習慣の中に修行ありとはなかなかに良い事を言っているかもしれない。正に継続は力を体現するいい言葉ではないだろうか。

 

「ふむ…ゲキレンジャーという奴だな。臨獣ライオン拳……!!」

「っ!!マドカさん貴方……!!!激獣シャーク拳!!!」

 

何やら通じ合ったのかマドカと簪はポーズをとりながら何やら叫びながら向かい合っている。簪なんて先程まで倒れこむように座り込んで疲れていたというのに楽しげな声を漏らしながら笑顔を作り続けている。マドカと一緒にネット配信されている戦隊シリーズを見たのが原因なのか現在マドカにも特撮ブームが訪れてしまっているようである。因みにマドカが一番好きなライダーはエグゼイドのレーザーらしい。

 

「にしても、こんな疲れてるのに飯食えるかな…なんか食欲湧きそうにないんだけど……」

「食わないともたないぞ。慣れてないなら余計に食わないときついぞ」

「でもさぁ……」

「言っとくけど俺は昼飯作れないぞ。この人数分の仕込みはしてないし今日はヨランドさんの分ぐらいしか作ってない」

「マジかぁ……んじゃ今度時間が空いた時に頼む…」

「あいよ」

 

いっその事カミツレに野菜を使った料理でもお願いしようと思ったのだが既に先客がいたようで無理になってしまった。まあ先客がなかったとしてもこの場合一夏の分だけを作る、というだけでは済みそうにないので全員分の仕込みをしている時間がないのでどちらせよ料理を作るのは難しいだろうが。そんなことを思っていると授業終了の鐘が鳴り響いた。あとは昼休み後の授業に引き継ぎ、そして終わっているメンバーには新しいメニューが言い渡されることになる……。

 

「んじゃ俺はヨランドさん達の飯を作りに行くわ、んじゃ」

「ああお疲れ」

 

そう言いながらヨランドの元へと走り出していくカミツレだが、何やら喧嘩のような言い合いを始めているヨランドと真耶に困ってしまう。そんな場を収めつつも二人を連れて部屋へと同行してくれた千冬にカミツレは感謝するのだが…今度夜の相手をしてもらおうかな…と冗談めきながらも冗談では済まなさそうな事を耳打ちされて青くなるのであった。


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