IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第140話

「お前がカミツレ・スギヤマか」

「……だとしたら何ですかね」

 

国家代表による地獄のような訓練が行われているIS学園、数日経っているが慣れる事が出来た生徒は専用機持ち達と箒とのほほんさん達のみであった。そんな彼らでも慣れたと言っても他と比べると多少なりとも慣れたというレベルで平気な顔でメニューをこなしていくカミツレとマドカ、そして少しきつそうな表情をするシャルらに比べたら全然という所である。そんな中で本日は午前授業のみという事もあって授業が終わった時には学園中から歓声が上がった。

 

そんな地獄を平然と生き延びたカミツレは必死に生き延びた恋人と共に昼を過ごしながら、屋上にてお手製の弁当を食している時の事だった。屋上の扉を蹴り飛ばしながらそれは現れた。ひどく歪んでしまったドアを踏みつけながら、ヨランドと同格と言わざるを得ない物を纏ったそれは此方を見据えていた。歴戦の経験を積んだ男も顔負けなオーラを纏ったそれこそアメリカの国家代表、イーリス・コーリング本人だった。

 

「ふぅん…思った以上に普通の男だな、期待してがっかりしたぜ」

 

カミツレを目の前にしたイーリスは心底がっかりしたかのような溜息を吐き捨てた。どれほど凄い男なのかと期待に胸を膨らませていたのかもしれないが、カミツレからしたら知った事ではない。勝手に期待して勝手に失望しているのだから如何でも良い。元々自分への評価が低いのもあってかイーリスが立て続けに吐くアメリカにいる男の方が良いと言う言葉には一切耳を傾けずにコロッケを口へと運んだ。

 

「セシリア、サラダ如何だ?」

「ええとても美味しいですわ」

「このコロッケも最高ですね!」

「だろ?自信作なんだよ」

 

イーリスの事など完全に無視して恋人たちとの会話を再会する。セシリアと乱も全く動揺を表にしていなかった、束との遭遇や同じ恋人となっているという現実で耐性がついているのかこの程度では動じなくなっているようである。慣れというべきか感覚の麻痺というべきか別れる所だろうが。

 

「おい…人を目の前にしといてその態度か、随分躾がなってないな」

「それは貴方もでしょう。勝手に俺に期待という偶像を貼り付けて、それと違ったら勝手に失望してる。相手に対して十二分失礼な事をしてますよ。それに態々ドアを蹴り飛ばして開けるとかいう意味不明な事してますし」

 

物怖じせずに自分の意見をハッキリというカミツレ、正直千冬や怒っている時の真耶の方が怖いし別段怖がる事もない。それに束の方が色んな意味で怖い相手だったのもあるだろう、比較対象があれすぎるが…。

 

「知ってますか。そういうの器物破損で損害賠償を求める事も出来るんですよ、それともアメリカでは毎回毎回扉を壊して開けるんですかね」

「……あたしに此処まで物怖じせずに物を言えるなんて良い度胸してるじゃないか…認識を改める必要があるかもしれないな」

「結構ですから取り敢えず、職員室に行ってドア壊しましたって謝罪した方が良いですよ。そうすればまだ許されますよ」

「あん?なんでだよ」

「いやだって貴方の後ろにいる怖いお姉さんに連絡しちゃいましたから」

「アッハハハッハッ面白い事を言うな!!あたしが怖がるお姉さんだって?ないないそんな奴いるわけない!!」

 

腹を抱えて爆笑をしているイーリスだが、セシリアと乱は手を合わせて合掌を行っている。実は時既に遅しなのだから…。せめて自分たちに出来るのはこうしてイーリス氏のご冥福を祈る事のみ…とカミツレも合掌を始めた。それに流石に嫌な物を感じ始めたのか後ろを向いた途端に顔面に飛来した手、それががっしりと食い込むように顔を締め上げていく。

 

「ほう…随分といい気になっているなコーリング…?私が怖くないか、そうかそうか…ではたっぷり教育してやろう、私の恐ろしさをな……」

「げぇっ千冬!?イデデデデデッ!?ゆ、指がぁぁっ!!!食いこむぅ!?ぁぁぁぁあああああッッ!!!?」

 

そう我らが戦乙女であり頼りになる美人教師でありカミツレの恋人である千冬の登場である。イーリスの顔面にアイアンクローをお見舞いしながら逃げられないようにそのまま持ち上げてイーリスを浮かせるという怪力を発揮しながら、不気味に笑いながら力を強めていく。するとイーリスの顔面から僅かにミシミシとなってはいけないような音がし始めている。

 

「カミツレご苦労だった。この大馬鹿者の始末は私が引き受ける」

「すいません千冬さん、この人なんか失礼だったので思わず呼んじゃって。でもまあ器物損壊ですし」

「ああ。キッチリと請求させてもらうさ……さあコーリング、私と一緒に学園長室に行こうか…そこで今回の事を含めて話がある……」

「あだだだだだだっ兎に角放せ千冬ぅぅぅぅッ!!?」

 

じたばたと暴れているが、暴れれば暴れるほどに加えられていく力が増していく千冬のアイアンクロー。その恐ろしさを知っている三人は口を閉ざしてイーリスの冥福をマジで祈っていた。

 

「お前の滅茶苦茶な訓練のせいで訓練機が何機フルメンテしたと思っている…?そのうち数機はオーバーホールが必要になっているんだぞ……?さあアメリカ政府も交えてのお話をじっくりとしようじゃないか……」

「分かった分かったからまず放せ!!!?いだだだだっっマジで骨が、骨が鳴ったぞ?!粉砕されるぅぅぅ!!!?」

 

そのままイーリスを持ち上げたまま屋上から出て行った千冬を見送った三人は食事を再開するのであった。

 

「カミツレ君。私もご随伴良いかしら?」

「ナタルさん、どうぞどうぞ」

「ありがと~なんか千冬からイーリスの相手はしなくて良いって言われてね。何があったのかしらね?」


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