三ヶ国の国家代表による指導が引き続き行われているIS学園、厳しく辛い訓練が続いている為か学園には活気という物は余り無かった。スパルタで一部海兵隊式の物まで取り入れて徹底的に扱き上げている3年担当のイーリス、本人は温和だが訓練では一切の妥協を許さずに冷徹な教官と化している2年担当のアリーシャ、そして生徒達の素質を見抜いてそれらを最大限に伸ばすように訓練メニューを作り上げて厳しく教えている1年担当のヨランド。この三人が指導しているのだから学園のレベルその物が引き上げられる事は間違い無い、その代償が一体何になるのかは明確にしておくのはやめておこう。
が、何よりも恐ろしいのはそんな三人と何時の間にか友好を持ち仲良くなっているカミツレだろう。晩餐会を行って以降頻繁にカミツレの部屋で宴会のような夕食会が開かれ、そこでは杉山ファームで作られた野菜を使った食事を楽しんでいる世界最強と言っても過言ではない面子がいる。そんな面子を相手にしながら平然として、笑顔で食事などを作って提供する彼が世界で一番恐ろしいのかもしれない。
「そうそうカッ君の料理は美味しいんだよ!」
「ホントだよなぁ…この野菜とかどうなってんだ?」
「でも、何時かイギリスに移るのよねぇ~?イギリスでもこの野菜は作れるのぉ?」
「あっそこら辺は束さんお手製のナノマシンで、土壌を同じにするから心配しなくてもいいよ」
「そっかそりゃ心配しなくても……今の誰だ!?今なんかナノマシンとか聞こえたぞ!?」
…途中からちょいちょい天災が紛れていたが、何時の間にか姿を消していたり居たと思ったら居なかったりを繰り返していたのでバレては居なかった。千冬とカミツレは少々冷や冷やしていたが…完全に杞憂だった。そんな日々が繰り返させている中、遂にカミツレの恋人達が望んでいた事が施行された瞬間であった。
国連を通じて全世界へと発表された事象、それは
『織斑 一夏、杉山 カミツレ。この二名の男性IS操縦者の一夫多妻制度認可条約』
であった。全世界で二人を共有すべきだという目的と彼らの男の子供も同じようにISが使えるのではないかという、期待と願いがあるからこそそれを自国に取りこむ為の法である。しかしこれこそカミツレの恋人達が望んでいた事、これで堂々と彼を守る為の盾となる事が出来るというもの…。
この一夫多妻制度の認可には世界中の女尊男卑擁護組織及び企業から大反対の言葉、女性の尊厳を踏みにじる条約と抗議のデモが行われたが行われた国の多くはそれを完全に無視した。相手にする意味もない上に女尊男卑を優先して自国の圧倒的利益を逃す事になる、それに女尊男卑は平然と犯罪を行い男性をスケープゴートに使うという事をするので社会問題の一つにもなっている。そんな連中を擁護する意味はないと完全な無視を決め込むと同時に女尊男卑が危険な思想であると認定される事となった。
これも一夏とカミツレを引き入れるために自国の整備をしているというアピール面が強いが、それ以上に女尊男卑の問題が大きいという側面もある。男女平等、これを目指して世界的に動きが起こり始めた瞬間であった。
そして、これを機にイギリス政府と台湾政府は自国の国家代表候補生であるセシリア・オルコット、凰 乱音は杉山 カミツレと婚約関係にあると発表を行い各国を牽制しつつ両国は同盟を結び、これから共に歩んで行くと発表を行った。同時にイギリスの大貴族であるリチャード・ウォルコットが全世界へ向けて会見を行った。
「我が姪であるセシリア・オルコット、そして台湾の凰 乱音さんは杉山 カミツレ君と恋人の関係にある。これは二人が真にカミツレ君を愛し、彼を本気で支える覚悟を持った意志による宣言だ。これらに文句があるというならば存分に掛かってくるがいい、禄にISも操縦も出来ない、した事もない有象無象など恐れるものではない。我らはそれらと全力を持ってお相手する」
この会見は全世界で喝采を浴びる事になると同時にISの生みの親である束も同調するように、インターネット上に自分の意志を伝える放送を行った。
「うんうん良いこと言うねぇ~。束さんも大賛成だねっつうかさ、女尊男卑支持者って何なの?女が偉い?アホじゃないの、お前らが使えるISは動かすのに男の人だって凄い働いてるんだよ。お前らは自分らで全部ISの整備とか開発出来んの?出来るなら全部自分らでやれよ。後束さんが神みたいに言うのやめろよ、お前の神とか死んでもごめんだ。ISが女にしか動かせないのは束さんも研究中の命題なんだよ、言うなれば欠陥なんだよ。そんな欠陥は科学者として許せない、だから何れ男も乗れるようにするよ絶対に。それと……カッ君といっくんに対して妙な動きをしたり、手を出したりしたら……その国のISを動かなくしてやるからね……」
脅迫めいている放送に全世界は騒然とした、あの篠ノ之 束が自らの意志を伝えているというのも驚きだが二人を守る行動をしている。同時に束なら絶対にするという確信が沸き上がり、全世界では二人に対して誠意を持った行動とアクションをしようと誓われると同時に女尊男卑思想狩りが一気に進行するのであった。
これらによって正式に周囲に恋人関係の流布を行う事が出来るようになり、隠れる必要もなくなったセシリアと乱は堂々とカミツレに抱き付いたりイチャつく事が出来るようになった。同時に二人でカミツレをガードし守る盾として動き始めた。近づこうとする女は全員チェックし、代表候補生の権限を全て使って捜査するという事をして、疑いがあれば排除するという事をしている。
「凄い事になったねぇ~カミカミ」
「本当だよな……あっのほほんさんチョコ食べる?」
「食べる食べる~♪」
それをあっさりと突破したのはのほほんさんであったりした。彼女は簪に仕えているメイドであると同時に簪から妙な事はしないように厳命されている事を伝え、自分は個人として友達になりたいという事で二人は許可した。
「一夏、気を付けろよ…お前は特にな」
「ああっ分かってるさ……ハニトラにも気を付けたりするさ、いざという時はカミツレの所に逃げ込めるように話も付けてあるし」
「安心しろ、ドイツ軍人としての誇りに掛けて守ってみせよう」
「頼りになるぜぇ…」
と一夏の方も恋人である箒と護衛のラウラがガードを固めていてそう簡単には近づけないようになっている。一方千冬は…
「束、何時私とお前がカミツレと婚約しているというべきだと思う?」
「もちょっと様子は見るべきじゃないかな」
束と共に何時自分達との恋人関係を明らかにすべきか協議していた。
ナノマシンによる土壌の奴は機動戦艦ナデシコで火星のテラフォーミングをナノマシンが行っているという所から思いつきました。