IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第145話

「はぁっ…どうしたもんかな……」

 

放課後。今日も厳しいヨランドの指導を終えて授業が終わると学園中から安堵の声と崩れ落ちるような音が、周囲から溢れていく。遂に連日の精神的な疲労が溜まったのか脱落生徒が出始めており現在医務室常駐の先生は、倒れた生徒は各自の自室で安静にさせて自分が出向いて治療を行うという事を行っており酷く忙しいそうにしている。そんな生徒もいる中で、慣れているからか身体に疲労感はあるが精神的には全く疲労感がない彼は屋上で空を見上げていた。

 

「今日も色々と辛い授業だった…」

 

それでも辛いと思えるような内容に溜息をついてしまう。彼女は教えられる側の事を信頼してきっと出来ると信じている、だからこそ100%の限界を突破させるような訓練をさせるのだろうが…それに応える側も大変だという事を少しは分かって欲しい。フランスではこんな訓練を受けている人達ばかりなのかと思うと、思わず同情が募ってくる。

 

が、フランスで潰されている新人はヨランドに勝手な理想を貼り付けて憧れている妄想で頭が満ちている人ばかり。千冬をアイドルのように思っている、それかISに乗る事が女としてのステータスと考えているのと同じような人ばかりで、ヨランドの弟子になるのは元々相応しくない人物ばかりなので同情など不要なのだが。しかしカミツレを悩ませているのはそれだけではなかった。

 

「マジでどうすっかなぁ…ヨランドさんからの見合いの申し込み…」

 

そう教室で一夏とも話していた見合い話、自分達に認められた一夫多妻制度認可条約。それによって現状世界中から自分たちに対して見合いの申し込みが殺到している。その全てを無視し断っている状況にある。そもそも既に恋人が4人もいるカミツレにとって、見合い自体が不要とも言える。しかし、そんな時にやって来てしまった見合いの中に恩師であり師匠の一人であるヨランドの物があったのだ。しかも本人直筆の手紙付き。

 

以前から自分の事を酷く気に入っていて自分の指導をしたい、その為に仕事放り出してきた、自分の勇姿を見れなくて悔しいやら何処か弟子に対して向ける物ではすまないような物を感じさせるヨランド。カミツレも薄々気付いていたが、ヨランドは自分に対して何やら好意をむけているのではないかと…。この見合いの申し込みもきっと国から自分と関係があるから向けられたのと思っていた、直筆の手紙を読むまでは。

 

『ツェレ、まずこの見合いは政府からの要請ではなくわたくし個人が自主的に出した事を明記させていただきます。わたくしは、ヨランド・ルブランは心から杉山 カミツレを好いております。最初は初めてわたくしに応えてくれる完璧な弟子として見ておりました、しかし徐々に貴方という個人に心が寄って行くのがハッキリと分かって行ったのです』

 

そう書かれた始まりの文章を読んだだけで、師の全てを理解してしまうほどにカミツレはヨランドという人を師として尊敬しているし憧れとして見ていた。そんな人から向けられている好意は真実の物であり、手紙に綴られている自分への思いも本物であると分かってしまう。

 

「はぁっ…高校生が背負う悩みではねぇよな確実に…」

 

相手はフランスの国家代表、しかも政府からの要請などではなくルブラン家の当主として、ヨランド自身が出した見合いの縁談だからこそ如何した物かと悩んでしまう。この事は当然恋人達にも相談した、彼女もこのような事態になるのは承知していたし予想通りではあったという。普通ならば断るのが定石だが、ヨランドは本気でカミツレの事を好いている上にフランス代表である上に大貴族の当主。カミツレの身を守るという事を考えてもよい縁談である上に、これを機に千冬が自分がカミツレと恋人であると言い出す良いタイミングでもあると言える。

 

「まさか、束さんが賛成するとは思わなかったからなぁ…」

 

一番意外だったのが反対の筆頭と思われていた束が良いのではないかと賛成した事だった。以前は反対していたがヨランドの専用機である『シャティーナ・ブラーボ』のコアから話を聞いてみるとヨランドが心からISを愛している上に、自分の事も姉妹のように大事にしている事などを聞いたという。加えていうのであれば機体稼働率は怒涛の94%、ほぼ完全にマシンスペックを引き出しているという驚きもあった。子供からの評価や本人の事を改めて調べて見て、認めなおしたとの事。

 

「まあ、いろんな面で考えたらいい縁談なんだろうけどさ…ヨランドさんと、か……」

 

千冬の時とは違い、いきなりの告白ではなく前段階からの歩み寄りに如何すればいいのかと迷いが生まれてしまう。今までは周りが如何するべきかと決めてきたような物だったが、今回は自分の意志でハッキリさせなければ行けない。それが一番だと自分自信そう思っている。

 

「まあ…確かにヨランドさんは良い人だしカッコ良くて美人で頼りになってちょっと可愛い一面もあって、それでいて包容力あって……あ、あれ…俺って実は割とヨランドさんに惹かれてる…?ぁぁぁっっっ……」

 

実は自分の中にあったヨランドへの思いに遅れながらも気付いてしまい、赤面しながら悶絶するカミツレ。なんだかんだと言っても年頃の男の子、あんな美女に思いを寄せられ自分も好いていたと分かると途端に頭が沸騰してきてしまっている。

 

「ぁぁぁっ…今度からどんな顔してヨランドさんに会えばいいんだよぉ……」

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