IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第155話

浴びせ掛けて来る無数の銃弾、各部に仕込まれていたミサイルポッドから飛び出してくる弾頭が猟犬の如く襲い掛かってくる。大容量の拡張領域と外付けされている武装によって豊富な武装を取り揃えている『シャティーナ・ブラーボ』の相手は近中遠に対応した三機のISを纏めて相手にしているに等しい。自動防御にセットしていた「ディバイダー」を合体させて、斜めに構えて銃弾を防ぎながら「スターダスト」を低出力のマシンガンにしつつ「ヴァンガード」で反撃するが、全ての方向から襲い掛かってくるそれらを完璧に回避しつつ攻撃してくるヨランド。

 

「真耶さん以上に、反応が早い…!!!」

『マジでどうなってんですか、本当にあれ人間ですか…何処のザ・ボスですか』

 

と言いたくなるレベルの対応力にカチドキも思わずウンザリするかのような声を上げてしまった、両手に保持した重機関銃で此方を正確に狙い打ちながらも暇を見つけながら周囲から攻撃してくる「ヴァンガード」にも牽制とは言えないほどに正確な射撃で打ち落とそうとしてくる。それを回避しているが…もう愕然とするレベルの反応速度で先読みの凄まじさ。反応速度と予測の正確さが最早人間とはまた別次元になってきている…経験によって培われた直観と蓄えられた知識がかみ合ったベストマッチが弾き出す人間離れした能力…これが将来的に嫁になるんだから絶対に逆らう事なんて出来ないなっとカミツレの将来に若干の同情をしつつカチドキも必死になって仕事を全うする。

 

『5、8、3よりミサイル接近』

「クソッ!!!」

 

分かっている、彼女が自分の実力の100%を出させないように阻害しつつ自分のペースに引き入れようとしているのは。それでも彼女の術中から抜け出す事が出来ない、寧ろこの術中に嵌っているからこそ次の手が出されていない。此処から無理にでも脱出しようとすればヨランドは更なる手を打つ事で王手(チェックメイト)を指しに来る。かと言ってもこのままウダウダしていたも何れ消耗して倒されるのが落ち。

 

「カチドキ、やるぞっ!!」

『やれやれ無茶を言う相棒ですね、ですが良いでしょう』

「駄目で元々、人生はギャンブルだっ!!!」

 

向かってくるミサイル、それらを敢て迎撃しなかったカチドキ。機体制御を任せながらカミツレはその場で身体を捻るようにしながらスロットルを繊細に操ってその場で回転する。それによって三方向から迫ってくるミサイルをコンマミリ単位で回避する、そしてそれはカミツレの背後でぶつかり合って爆発した。それを待っていた!!

 

「おおおりゃああ!!!!」

「まさかっ…そう来ましたかっ!!」

 

背後で起きた高エネルギー反応、それと同時に「瞬時加速」を発動する。ミサイルが爆発した事で放出されたエネルギーを全てとり込んでそれを爆発させた、通常の物以上の加速をした。「瞬時加速」はスラスターから放出されたエネルギーを再度とり込んで、圧縮して放出する。その圧縮するエネルギーは外部から得れれば別段なんでも良いのである。そこでカミツレはミサイルの爆発エネルギーを利用する事でカウンターとして「瞬時加速」を発動させた事になる。それでも難易度は通常の物とは比較にならないレベルで凄まじい物になる。

 

機関銃の弾幕を一瞬で過ぎ去ってヨランドの懐に到達し脚部のミサイルポッドを切り落としつつも、接近戦に持ち込む事に成功した。機関銃からブレードに持ち替えるヨランドだが先程に比べてしまったら十分に戦える物になっている。

 

「流石ツェレ、より愛してしまいますわっ!!」

「そりゃどうも!!師匠達が良いですからねッ!!!」

「それは、嬉しい事ですわっ!!」

「セイヤァァァァッッ!!!!」

 

一喝と共に振りぬく太刀、それによって吹き飛ばされていくヨランドのブレード。一瞬それにニヤリと笑ったカミツレ、しかし一瞬でそれを戒めて気を締めなおすがそれが遅かった。ヨランドの腕には「ラファール」の物よりは小型だが両腕に装着されているパイルバンカーが自分を睨み付けていた。振りぬいてしまった事で隙が出来てしまっている、そんな自分へと叩き込まれたパイルバンカーの一撃。

 

「がぁぁっっ!!!」

『間に合った…ッカミツレ!!』

「なっ…嘘だろっ!?」

 

咄嗟に「ディバイダー」の制御を行って盾にしたがそれでも衝撃は凄まじく吹き飛ばされてしまう。なんとかダメージは抑える事が出来たが目の前に広がっている光景にゾッとした。両手に握られているのは大型のショットガンと残っているミサイルポッドが起動している光景だった。ヨランドは全てを同時に発射しながら新たなショットガンを二丁展開しながら発射した物と新たに展開した物を放ち、交換するという離れ業を発揮した。二つの腕で四丁の銃を使いこなすという信じられない技に観客席も騒然とした。まるでジャグリングでもするかのように銃を放ち続けるヨランドの猛攻はカミツレを襲い続けた。

 

「…わたくしの勝ち、ですわツェレ。ついつい、この技を使ってしまいましたわね」

 

発射したミサイルの命中と弾丸の全弾命中を確認したヨランド。本来モンド・グロッソの決勝トーナメントで使うレベルのテクニック、思わず自分の中でも上級に入る物を使いたくなってしまった。それほどに戦い甲斐がある物だった…心に広がっていく満足感と陶酔感が心地よい…間違いなくヨランドは勝利を確信していた。だが…自分の勝利を告げるブザーはならなかった、それもその筈―――「勝鬨・蒼銀」のSEは0になっていないのだから。

 

「SEが残っていますの、でも如何して!!?」

 

何時までも鳴り響かないブザーに動揺を示すヨランド、それは何故なんだ。あの攻撃を耐え切った…というのだろうか。炸裂弾丸が装填されている物を連続で、ミサイルも付けて打ち込んだのに……カミツレが残していたSEから考えても防御したとしても凌ぎきれる物ではない筈なのに…目の前で未だに残っている爆煙の中にいるカミツレは未だに健在だというのか…と思っていた時、爆煙から光が飛び出して行く。食い破るかのごとく無数に伸びて行く光、そしてその光は煙を爆散されるようにしながら内部からその正体を現した。

 

そこにあったのは騎士として創造された「蒼銀」の姿ではない。完璧な騎士を目指して作られた存在が多くの経験、積み重ねてきた戦いと多くの物を見て来てからこそ得る事が出来た力の象徴、相棒との信頼関係があったこそ体現したかのような荘厳な姿。雄々しく広げられている翼は美しさと力強さを見せ付ける。自らは王だと主張するかのような黄金と今までの経験を示すかのような銀、自らが築いた絆の誇らしい蒼が眩しく光る。

 

『大・大・大・大・大将軍!!』

「勝鬨・大将軍……見参ッ!!!さあ、此処から魅せるぜ…」

「ツェレ…まさか二次移行をっ……!?」

「こっからが試運転……師匠、ひとっ走り付き合ってもらうぜ!!」


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