国家代表を送り出すイベントとして企画されたエキシビジョンマッチ、その初戦に当たるヨランド対カミツレの戦いは予想も付かない形での大反響を生み出した。婚約をしている者同士の対決と言う事もあるが師匠と弟子の対決という事で大いに注目がされていた。万全な状態のヨランドに対して大健闘をした末に世界でも例が少ない「
「いやぁ…あれは本当に凄かったなぁ、是非とも戦ってみたかったんだけど…時間の都合上駄目って言われてガッカリしたぜ」
「流石はヨランドの弟子よねぇ~♪そして千冬の恋人さん、素敵なお相手が見つかって良かったわぁ♪」
というコメントをイーリスとアリーシャも残していた。二人もエキシビジョンマッチでは自らが教え込んだ生徒同じく激闘を演じていた。特にアリーシャと2年代表の楯無は事実上の国家代表者同士のぶつかりあいになったので凄まじい戦いが巻き起こっていた。まるでモンド・グロッソの決勝トーナメントの試合のような激しくも凄まじい戦いに生徒達は圧巻の一言だった。
「私も、ロシアの代表…意地という物があるのよっ!!!」
「いいわねぇ…嫌いじゃないわよそう言うの。いいわ、貴方の全てをぶつけて来なさいっ!!」
とスイッチの入ったアリーシャはマジモードに移行してしまい、本気で楯無と激闘を始めたのである。世界最速と言われているイタリアの「テンペスタ」の発展型である専用機「テンペスタⅡ」が見せる世界最速のスピードを活かした「稲妻軌道動作」で巧みに楯無の専用機「
「ぐっ…ハアアアアッッ!!!!」
「強かったわ―――でもこれで終わりよ」
現役の国家代表同士のぶつかり合いは結果として機体が持ち合わせているポテンシャル全てを駆使した戦略を披露したアリーシャが楯無を倒すという結果で終幕となった。それでも楯無はアリーシャのSEを42%削り取る事に成功し、現世界最強に自分の力がある程度通用するという事実に満足しながら敗北を噛み締めて、更なる力へと昇華させる事を誓った。
「……まだまだか、上を目指すって大変…でもだからこそやりたいのよね」
撃墜され、地面に横たわったまま真上を見上げた楯無は思わずそう呟いていた。オープン回線だった為かそれがアリーナ中に聞かれていたがそれに向けられて拍手が起きていた。楯無はオープン回線にしたままだった事を思い出して慌てて回線を切ったが、既に自分の言葉が生徒達に完全に聞かれていた。顔を赤くしてピットへと戻ると不仲だった簪が待機していた。思わず身体を固めてしまい、うろたえていると簪から鼻を押された。
「…目指すのは大変って当たり前だよ。所詮お姉ちゃんもまだまだ小娘って事だよ」
「い、言うわね…まあ事実だけど」
「小娘お姉ちゃん」
「言ったわね…あっちょっと待ちなさい簪ちゃん!!ああちょっと本格的に待って、機体が色々ボロボロなのだからちょっと手伝って!?」
「んじゃ貸し一つね」
「分かったわよ…もうしょうがないわね」
何処か嬉しげな笑みを作って楯無は簪と一緒に笑うと機体チェックを始めた。今まで楯無の事を色々と思っていた簪だがアリーシャと戦っている際の必死な姿を見ていたら気が付いたら応援していたらしい。そして姉だって出来ない事、勝てない相手が居るんだと理解して自分で向き会おうとしたとの事。
「ねえ簪ちゃん、今度一緒に出掛けないかしら。Fateシリーズの新作を買いに行きたいのよ」
「…好きなサーヴァントは?」
「うーん……李書文ね、ランサーの方だけど」
「ええ~アサシンでしょ」
と何時の間にか姉妹の蟠りは消滅していたそうな…。そこから楯無はよく簪と一緒に遊びに出たり一緒に整備をするようになったそうで簪にも笑顔が溢れるようになったという。そんな中で新たな問題を抱える事になった人物も居た。
「イ、イギリスに行くって…えっマジで?」
「マジですわ、だってカミツレさん「二次移行」をさせたのですから当然ですわ!!」
そう、カミツレのイギリス行きが急遽決定したのである。本来は冬休みに合わせてイギリスへと渡る事になっていたのだが自らのISを二次移行させたという事を受けてイギリスの本国は凄い騒ぎになっているらしく、データだけでは足りないと是非直接カミツレに来て欲しいという話が来てしまったのである。事実として二次移行をさせている操縦者は歴代国家代表者でも0、カミツレが初の快挙として成し遂げてしまったのである。
「そこでわたくしも同行してイギリスへと戻る事になりますの」
「イギリスにか…家族旅行で行った事あるけどまさかこんな形で行く事になるなんてなぁ……」
『イギリスの代表候補になったのですから何れこんな時が来ると分かっていた筈では?』
「いやまあそうなんだけどさ…」
何れイギリスに行く事は分かっていたのだが…流石に喰い気味に是非来てほしい!!と言われるなんて思いもしなかった。という事で一時的に学園を休んでイギリスへとカミツレはセシリアと旅立つ事となった。向こうの世話は全てイギリス政府とリチャードが連携して全責任を持ってする事になったらしい。
「イギリスの国家代表も是非お会いしたいと仰っておりましたわ!」
「…なんか緊張してきた」
だがカミツレは知らなかった、このイギリス行きがとんでもない事になるという事を……。