「……」
「おいおいカミツレ~久しぶりの兄弟の対面なんだから笑えよ」
「うるせえよクソ兄貴。つうかなんでこんな所にいんだよ」
「俺もイギリスの政府っつうかリチャードの旦那に呼ばれてきたんだよ、いやぁ旦那のプライベートジェット凄かったぞ」
研究所内の休憩室へと通された二人はそこで弟と久しぶりの再会をして嬉しそうにしている一海と対面しながら談話をしている。一海がやって来た理由は何れイギリスに移住する際に杉山一家が住む家の準備関係。そしてイギリス政府から提供される農業で使う為の土地の詳しい事を知るためリチャードに招待されたというのが話の根幹らしい。そういう事なら寧ろ一海がイギリスにいる事に納得が行くのだが・・・それなら何でこの研究所に居るのかという疑問も浮上してくる。
「純粋にお前の顔を見たくなったからに決まってるんだろ」
「……それで態々来たのかよ…ご苦労なこった」
「まあまあカミツレさん、折角お兄様が来て下さったのですからそう邪険にしなくても」
「そうだけどよ…何となく嫌だったんだよ」
「照れちゃってまぁ可愛くなったなカミツレ」
「うるせえドルオタ」
「みーたん命で何が悪い!!」
そうだった、久しく兄と話していなかったから失念していた。一海にこの程度の事を言ってもダメージになる事は無いという事を…。だって一海にとってはネットアイドルであるみーたんが好きであるという事は別に公言している事なので何を言われようと痛くも痒くも無いのである。農作業の休み時間にもみーたんの放送を見ながらみーたんコールをしたり、携帯の着信音をみーたんのオリジナルの歌、目覚ましアラームにはみーたんの挨拶にしているほど……これで堂々と出来る度量は見習うべきなのかもしれない…いややっぱりやめておいたほうが良いかもしれない。
「一海お義兄様はこれから如何するのですか?」
「かずみんで良いってセシリアちゃん、これから俺達は家族になるんだからさ。弟の嫁は俺の義妹なんだからさ」
「わ、分かりましたえっと…かずみんさん」
「う~んいい響き…そうだなどうせならカミツレの専用機の奴でも見物させて貰うか、許可ぐらい下りるだろ」
「はいはい好きにしやがれってんだよ」
「んじゃ好きにするわ」
やや脱力しながらも了承する、溜息でうんざりしているかのように見えるが無意識なのか口角は少しあがっているのをセシリアは見つけて笑みを作った。日頃から一海の事は聞いているし彼が本当は心から兄を尊敬しているし大好きな事も知っている。矢張り男兄弟というのは、お互いが顔を合わせている時には表に出さないと聞いているのでどこか微笑ましく見守っている。そんな時、休憩室に長身の女性が入室して来た。
「おおっ来てくれたかっ!!!Welcome to UK!!」
大きな声を発しながら腕を広げてカミツレを抱き締めるように強く背中を叩く長身の女性、180を越えている完全なモデル体系の身体に羽織っている白衣は何処かミステリアスな雰囲気を醸し出しているが、本人は酷く温和で陽気そうな雰囲気のギャップが何処か可愛らしく思える。
「博士お久しぶりです」
「おおっセシリア!!いやぁ君も元気そうで何よりだ!はっはっはっんんっもしかして身長伸びたか?結構結構若人は良く食べ良く学び良く遊び良く成長するのが仕事だからなっ!!」
「博士もお変わりないようで何よりですわ、お元気そうで」
「ハッハッハッ元気は私の自慢だからなぁ~!!」
セシリアとも再会を喜ぶかのように抱き合いつつ彼女の成長を喜ぶように陽気そうに笑う。しかし後ろからの兄弟の視線を感じて振り返ると腕を広げて大きな声で言った。
「ようこそ我が研究所へ!!私はここの所長兼技術責任者をしている
「あっどうも初めまして、杉山 カミツレです。リヴィングストン博士」
「ノンノン、リオノーラと呼び捨てで構わないさ!!堅苦しい言葉形式なんて私などに必要ナッスィング!!そう、人類は皆兄弟で家族なのだからぁ~ハハハハハッッ!!!」
腕を広げたまま上げてくるくると回転しながら笑うリオノーラ、今まで出会った事もないタイプの人間に驚きを隠せ無いカミツレと随分面白い人だなと笑う一海。そんな一海に反応したのかリオノーラは一海の手を取って笑う。
「う~ん今日は実にいい日だ!!これも私の日頃の行いのお陰かな?貴方とも是非宜しくしたいねミスター一海、私実は健康マニアでね野菜には特に気を遣っているんだよ!」
「ほほう。野菜と聞いちゃ杉山ファームの経営者として黙ってられねえな、手土産代わりに野菜持って来てるから後で食わせてやるよ、後俺の事はかずみんでいいぜ博士」
「それはベリーナイスだ!!真に今日という日に感謝しなければ!!宜しく頼むよかずみん!私の事は是非リオーラと呼んでくれ!!」
「おうリオーラ!」
何か通じ合う物があるのかそのまま一緒に手を取り合って踊りだす二人に圧倒されてしまうカミツレと本当に変わってないなぁと笑うセシリア、まさか「蒼銀」を作った研究所の所長が此処までキャラが濃いなんて思いもしなかった。
「如何ですかカミツレさん、博士はとっても面白い方でしょう?」
「面白いというか…凄いキャラが濃いな」
「でも博士はイギリス国内では随一のIS研究者なんですよ?BTシステムを開発したのも、カミツレさんの「スターダスト」に使用されているエネルギーパックの実用化を可能にしたのも博士なんですよ?」
「えっ滅茶苦茶凄いじゃん!!?」
「はい、イギリスのIS技術の根幹に深く関わっていて博士無しでは第三世代技術の確立は不可能だったとさえ言われるほどなんです」
目の前で兄と踊っている陽気で楽しげな人からはまるでそのような感じはない。言い方は悪いがそこまでの強い知性という物を感じさせない、束とは違った意味で天才とは思わせない雰囲気を纏っている。
「さあ皆研究設備へ案内しよう!!いやもう昼食時だまずは親交を深める為に食事かな!?」
「リオーラお前本当に元気良いな」
「ハハハハハッ!!我が家に家訓があるのさ!「常に声は大きくハッキリと!!褒める時はもっと大きな声で!!そうすれば自分の気持ちは全て相手に伝わる!!」という素晴らしい家訓がね~ハハハハハッ!!!」