IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第164話

「あれがお前の専用機か」

「はい。二次移行してる俺の相棒の「勝鬨・大将軍」です」

「中々に良い姿をしているな」

「有難うございます」

 

ハマーンから話し掛けられたカミツレは共に応接室へと移動しながら一対一での対話をする事になった。元々自分の見極めと対談をする事が目的と語っているのだからそれを断る事もない、それに自分には断る為の理由が存在していないのだから。しかし、こうして一対一で腰を落ち着けて話すとなると中々の圧迫感と威圧感に緊張して来た。入学当初の千冬に似ているような感覚に懐かしさを覚える。

 

「大将軍は理解出来るが…勝鬨とはどういう意味がある」

「えっとそうですね…戦場で敵に勝利した時に上げる掛け声で士気を上げる為の凱歌です」

「成程な……つまりお前は専用機に勝利を勝ち取るという願いを込めたのか」

「はい。兎に角俺は結果を出さないといけませんでしたから」

 

そう述べると納得したように紅茶を飲む。一つの質問が終わっただけなのに異様な安心感が沸きあがってくるの…言葉からも滲み出している気品と溢れ出すようなオーラに呑まれない様に落ち着きを持って自分を抑える。

 

「しかし折角恋人と共に居たのを邪魔してしまったのはすまなかったな」

「いえ気にしてませんよ。セシリアも気にしてないっていってましたし、彼女の心は俺も把握してるつもりです」

「……成程な。如何やらお前は優しい人間のようだな」

 

何処か見定めるような視線を向けながらハマーンは静かに率直にカミツレに評価を下すかのように言った。

 

「本来は戦う事には向いてはいないな、誰かを支える事こそ本領を発揮するだろう」

「誰かの為に…と言われても俺は今まで自分の為に努力して来ましたからどんな反応をしたら良いのか…」

「素直になればいいだけの事だ、何も難しい事などない。仮に今からお前にIS操縦者以外の道が示されたとする。ISよりも遥かにお前に合っている選択肢が目の前に現れる、その場合お前はその選択肢を選ぶか」

 

威圧的な瞳が此方を凝視してくる、それを受けながらもそれを真剣に考える…が答えなんて直に出てきてしまった。深く考える必要なんて無かった、心の中に取るべき答えの札は用意されていた。笑顔を浮かべながらいった。―――自分はその選択肢を選ばずに、ISに関わり続ける、と。

 

「何故だ」

「何というか…向いてないからやらないとか向いてるからやらないっていうのはどうも……。結局は自分が何をやりたいのかって気持ちに掛かってると思うので、向いてるかいないかは大した問題じゃないと思います」

「つまり人間にとって適正とは然程重要な物ではないものだと言うのだな?」

「そこまで極端な事は言うつもりはありません。適正は言うなれば航路を決定する為の要素の一つであって、それ一つで舵取りを決定する程の物ではないと言いたいのです。それらの要素を一つにして吟味し、一つの考えの形にしてそこに自分で感情や思考を持って判断して、最終決定する物だと思います。それに俺はISの事が好きです、出来る事なら関わっていきたいと思ってます」

「ふむ…成程な。いや突然妙な事を聞いたな、お前は自分の意志を持たずに強い力を持っている恋人に全てを委ねているかを聞きたかったのでな」

 

そう言われると質問の意図を察する。確かに自分の恋人は実力や権力的な意味でも相当に強い力を有している。正直千冬や束という存在がバックにいる以上全世界は下手に手を出せなくなっている、彼とて望んでISという世界に足を踏み入れた訳でもない。しかし今なら恋人達の力を借りて以前の日常に近い生活を贈る事も可能な筈…しかしそんな事はカミツレは望んでいないと語られた。

 

「まあそう思われてもしょうがないと思いますよ、世間から見たら俺は強い恋人たちの影に隠れてる臆病者…そう見えたとしても可笑しくは無いです」

「私もそう思っていたからな」

「ははっ…ズバッと言うなぁ…。でも俺は自分で出来る範囲の事は自分でやりたいと思ってます、今の俺は力も弱くて周りの人達に助けてもらってる状況です。でも俺は何時かそんな人達と支え合えるようになるんです」

「支える、ではなく支えあうか」

「はい。お爺ちゃんが言ってたんです「人は支える、支えているだけでは駄目だ。一緒に助け合う、支え合っている関係こそが一番」って。俺もそれが一番だと思ってます。弱音を吐いて甘えてもいい、嬉しい時も悲しい時も苦しい時も一緒にいて歩ける関係が一番」

「…フッ未熟な小憎が一丁前に立派な事を言うものだな」

「アハハハッ…ご尤もで」

 

照れるように頭を撫でるカミツレは赤くなった顔を隠すように紅茶に手を伸ばした。そんな子供を見つめながらハマーンは若くて甘い考えだと思いながらも…人生における対人関係の核心を中々に突いていると素直に感心した。彼の祖父の言葉も素晴らしい、きっと良い人格者で彼も祖父の事が大好きなのだろうと感じさせるやり取りに少し心が暖かくなる。

 

「あのカーン代表」

「ハマーンで構わん、その方が呼ばれ慣れている。そして代表も取れ」

「わ、分かりましたえとハマーンさん…それで本当に俺と話をする為に此処へいらっしゃったんですか?」

「どういう意味だ?」

「俺もハマーンさんの事は多少也とも調べているつもりです。態々高々一人の小僧に会いに来るだけに国家代表ともあろう人が予定を空けるのかと思いまして…」

「空けるだろうよ、お前の場合は良く知っているだろう」

「ええまあ…」

 

真っ先に思い浮かんだ自分の為に予定を空ける国家代表…即ちヨランドの事。

 

「まあ正直な事を言えば他にも目的はある。私の専用機の事だ、よいBTシステムのデータが手に入ったとリオノーラから聞いた。それを反映させる為と言ったら納得するか」

「専用機…確か「キュベレイ」って奴でしたっけ」

「この後リオノーラにそれを依頼する所だ…折角だ、お前の意見も聞かせてくれ」

「分かりました俺なんかで宜しければ」

「余り自分を卑下するな、お前は二次移行を成し遂げたのだ。もっと自らを誇れ、無用な謙遜は無用な物を呼ぶぞ」

「はっはい気をつけます!!」




なんでハマーン様の声ってあんなにも素晴らしいんだろう…。
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