IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第167話

「えええっ!?あのハマーン代表様の教えを受けたですってぇ!?」

「受けたというか受けさせられたというか……いやぁマジで辛かったなぁ」

 

放課後の夕食時、イギリスから帰国したカミツレとセシリアを交えての食事が行われている時、話題はイギリスに滞在中にどんな事があったという事になっていた。研究所所長のリオノーラは超ハイテンションで陽気な人だという話をしていた時に、イギリスの代表であるハマーンと会って指導を受けたと言うと…鈴が目を見開いて驚きに感情を染めてそれを吐き出した。それに続いて乱やラウラやシャル、そして簪と言った専用機持ち達も驚愕している。何故そこまで驚いているのか分かっていないのは一夏と箒であった。

 

「何か変なのか?ヨランド先生みたいな人もいるんだから、代表が指導するのは可笑しくないんじゃないか?」

「うむ私もそう思うが……というか鈴、なぜ様付けなんだ?」

「様付けしなきゃいけないって感じがするのよ……一回あってみれば分かるわよ、あの人のカリスマ性とかマジでやばいんだから」

「それに加えて言うのであれば……ハマーン代表の指導の仕方はハッキリ言って軍での訓練以上に辛く厳しいものなのだ」

 

ラウラのそんな言葉に洗礼を受けた事があるメンバーは頷いた。ハマーンの指導の仕方は一切の加減や手心などがなく、厳しく辛い凄まじいもの。加えて厳格で威圧的且つ凛々しいあの声で激を飛ばしてくるのである、肉体的にも精神的にも苛め抜かれる指導となっている。そして潰れた者はその後のIS生命は破滅する、耐え切ったものは必ず大成するとさえ言われているので、ISの世界では千冬とアリーシャに並ぶカリスマとして圧倒的な知名度を誇っている。

 

「そ、そんなに凄い人なのか……」

「正に女傑って言葉が一番似合う人だったよ。仮に男だったとしても軍の頂点に君臨出来るような人だ」

「はい……私も代表の指導は受けた事が数回ありますが……それはそれは思い出すだけでも辛くて泣いてしまそうですわ……」

「……何、ISの国家代表って皆ヤベー人なのか」

 

一夏の言葉はある意味的を得ている部分がある。ISというジャンルは通常のスポーツ以上に当人の努力と才覚が必要とされる面が強く、極めようとするうちに人が変わるという事は多い。そんな中で国の頂点として昇り詰めた人間は精神的に強固だが、何処かあくの強い人間が多い。それは今現在国家代表の地位についている人間を見てみると納得が行く話だとカミツレが頷くと、周囲も同意するように頷いた。

 

「実際やばいというか……そんだけの苦労と経験を重ねてるんだから強くて個性が強いって当然と言えば当然よね。カミツレだって最初こそ普通の男って印象だったけど、今じゃそんな印象まるっきりないもん」

「じゃあなんだって言うんだ」

「現状において、世界に対する影響力が一番強い男」

 

それを言われて周りは酷く納得出来るので頷いた、最初こそ普通の一般人だったはずだがIS学園に来てから彼は様々な事を成し遂げている。最近ではISの「二次移行」に「単一仕様能力」の開花などが上げられるが……矢張り一番なのは彼の恋人達だろう。セシリアと乱、この二人はまだ分かると許容しておこう。だが残りの面子が明らかに普通とは逸脱したところに立っているメンバーしかいないのである。

 

世界最強の王座に君臨した事がある戦乙女こと織斑 千冬。全世界のパワーバランスを変えてしまうほどのISを開発した大天災の篠ノ之 束。歴代フランス国家代表の中でも最強と言われながらも自身も貴族の当主の最高峰と言われるヨランド・ルブラン。

 

そんな彼女達が等しく一人の男に対してベタ惚れしており、純粋な愛情を向けているのだからこれが普通なわけが無い。カミツレ自身は普通なのかもしれないが、彼が持っている力は全く普通では無い。ISコアと心通わせて会話をし、今では全てのISコアの父親という立場になっている。誰かが彼に刃を向けた場合、全てのコア達は父が攻撃されたと何かしらのアクションを起こしたとしても可笑しくはない。

 

「さてもう一度聞くわね、アンタの何処が普通なのよ」

「……セシリアに乱ちゃん、鈴が虐める……」

「すいません、擁護出来ませんわ」

「一般の人からみたら確実に普通というカテゴリから逸脱してますからね……」

「……」

 

もう何も言えないと口を閉ざして俯いてしまったカミツレ、傷付いたという訳ではないが心の中では自分は普通でありたいという気持ちがあったのだろう。しかしそれを真っ向から否定されてしまって、自分はとうとうそんな領域に立ってしまって居るのかと……と必死に現実を受け止めようと努力しているのである。

 

「え、ええっと……そう言えばさっ!カミツレ知ってるか、俺達になんか名前みたいのが付けられようとしてるって!!」

「……名前?」

 

なんとか場の雰囲気を変えようと話題を探した一夏は咄嗟に出した事、それは自分達に二つ名のような物が付けられようとしている事だった。

 

「ほらっヨランド先生の「超術」見たいな感じで」

「ああ異名って事か。何そんなくだらない物が付こうとしてるのか?」

「別にいいと思うよ?確かにくだらないかもしれないけど、体外的にそれだけ評価されてるって事なんだから」

「それにヒーローには二つ名が付き物…!燃える……!」

 

そんな簪の言葉を受けて、まあそう言う考え方もあるかと思いながらもどんな物があるのかと試しに検索してみると……。

 

「一夏には『純白の剣』『白き聖騎士』っていうのが付こうとしてるみたいだね」

「聖騎士……ふふんカッコいいじゃねぇか!!」

「これに聖騎士ってフレーズが似合ってないと思う人、挙手願います」

『はい』

「はい。全員挙手という事で、一夏には聖騎士は似合わないことが決まりました」

「なんでだぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」

 

一方カミツレはというと……。

 

「えっとカミツレさんは……『勝利を手繰る大将軍』『常勝の戦人』っていうのがありますわね」

「カッコイイッッ~!!!カミツレさんにピッタリ!!」

「そ、そうかな……?」

「なんでカミツレには何も言われないんだ!?俺にはあんなに似合ってないって言ったのに!」

「だって一夏だし」

「納得行かねえええええぇぇっ!!」


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