ある時、事件は起こった。
「私にそっち方面の趣味はない、断る」
食堂にて皆で集まって食事をしていた時の事、2年になってカミツレと一夏は特に言い寄られる機会が増えた。その背景には有名になった上に多くの生徒が国から命令を受けているこということがある、交遊を持つのは構わないが迫られると堪った物ではないので、その場合は強く言って追い返す場合が多い。幸いな事に二人のバックに控えている人間の力は特に強いので有難い限りである。そんな時であった、新学期早々という事もあって、午前中に終わって放課後は訓練に励もうかという時一人の生徒がやってきた。
「おおっなんて美しい……凛々しくも華麗に咲く姿は正に気高い……これは正に運命!!」
そう言って目を輝かせながら箒の手を握ってきたのは白髪が美しく光を反射しながらも何処かボーイッシュな印象を受ける女子生徒だった。箒は思わず呆気に取られてしまいそのまま手を握ってくる相手を見てしまった。
「私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ!!是非お見知りおきを」
「し、篠ノ之 箒だ」
「私に雷が落ちた、貴方こそ私の100人目の恋人になるべき女性だっ!!」
「私にそっち方面の趣味はない、断る」
電撃的な告白の言葉が飛び出してきたが箒は真顔に戻るとそのままハッキリと拒絶の言葉を吐き出した。いきなり凄い展開になってきたので固まってしまったカミツレ達も漸く正気を取り戻して、何がどうなっているのかと状況の把握に務めようとする。此処にいないマドカと簪、鈴、シャルの2組のメンバーが少々羨ましく思った。拒絶の言葉を受けても余裕を見せる生徒は笑顔のまま近づいてくる。
「照れなくてもいい、このまま私達の間の絆を深めようじゃないか!」
「断ると言っているのが聞こえんのか。いい加減に手を離せ、第一何故私がお前と付き合わんとならんのか理解に苦しむな。私には既に相手がいる」
大きく腕を振るって振り解くとハンカチで手を拭う、触られたくなかったという訳ではなく関わりあいになりたくないという思いを込めたメッセージを送りながら、一夏の腕に抱きつく。それを見た生徒は何やらショックをうけたように固まってしまった、そして箒の思い人である一夏へと視線を向けた。
「そうか、其方は噂に聞く織斑 一夏か……しかも箒の恋人……即ち私の敵か」
「おいカミツレ、なんだこの展開」
「いやそこで俺に振るなよ、巻き込まれるだろ」
正直此処で投げられても本当に困る、正直関わりあいになりたくないというのがマジの本音である……が仮にも義弟からのHELPサインなので緊急時には助け舟を出すつもりではある。実際義妹のピンチでもあるようだし。そんな事を思っているとロランツィーネは白い手袋を一夏の足元へと投げた、何やら既視感を覚えて思わず一夏と箒と共にセシリアを見てしまった。
「決闘だ、織斑 一夏!!私が勝ったら、箒は私が貰う!!」
と腰に手を当てながら一夏を力強く指差しながら高らかに宣言する。やっぱり決闘の合図かとセシリアに視線が集中する。
「いや、私は手袋は投げてませんわよ!?」
「それでも決闘は申し込んできたけどね。んで一夏如何するんだ?」
「受けるの、それ」
「当然……」
一夏は手袋を一瞥しながら箒の頭を撫でながら……手袋を蹴飛ばしてロランの足元へと送り返した。申し込みの方式は相手の足元めがけて白手袋を投げるか、顔を白手袋ではたくことによって行い、相手が手袋を拾い上げれば受諾となるのでこの場合は拒否という事になる。
「受ける訳ないだろ」
「……逃げるのか。情けないな、男ならば恋人を守るという気概を持つべきだろう」
「持ってるよ。だから受けないんだよ。そもそも俺はこの決闘で決めるっていう事が気に入らない」
一夏は箒を抱き締めながら怒りを僅かに滲ませた瞳でロランを睨みつけながら口を開いた。
「箒を賭けて勝負?お前は何言ってるんだ、人を賭けるとか何考えてるの?お前、最低だな」
「なっ……私は真剣な決闘を望んでいるのだっ!!私は箒に心を奪われた、だからこそお前に決闘を申し込む!!」
「断る、箒に心を奪われたってお前が勝手に献上しようとしてるだけだろ。箒はそれを拒否しているのにお前は力で無理矢理手に入れようとしているんだぞ、情けないのはどっちだよ」
ハッキリとした一夏の物言いにロランは僅かに後ずさった、千冬の弟に相応しい覇気を纏いながら一夏は怒っていた。自分にとって箒は心の底から守りたい、愛している人。そんな箒を奪おうとしている相手を目の前にして丁寧な物言いなんて必要ない。特に相手の気持ちを一切無視して自分の思い通りにしようとしている連中は、一夏が大嫌いな人種。
「俺は箒の守る為ならどんな手段でも使ってやる、俺の事を罵りたきゃ好きに言いやがれ。無用なリスクを背負って箒を傷つける位なら、そんなの無視して他の手段に切り替えるだけだ」
「ぐっ……ぅぅっ……」
「俺は箒の両親に誓ってるんだ、どんな事があっても俺が箒を守る。それが俺がすべき事だ、それを邪魔するなら……俺は悪魔にだってなってやる」
そう言い切ると箒の方を抱いたままアリーナへと向かって歩いていく、カミツレ達もそれに続いて歩いていくがその場に残されたロランはただ真っ直ぐに箒ではなく一夏に向けられていた。何やら不穏な物を感じるが取り敢えずカミツレは一夏を褒めた。
「良く言ったな、あれだけの啖呵を切れるなら大したもんだ」
「はい、一夏さんの事を少し見直しました」
「ホントホント。これでお姉ちゃんと私の事をそっくりって言った事はチャラにしてあげるわ」
「まだ俺許されてなかったのか……。まあいっか、箒ごめん。俺の事、卑怯って思ったか?」
「いや嬉しかった、それだけ思われているなんて私は幸せ物だな」
「……何故だ、何故織斑 一夏を見ていると胸が、高鳴るんだ……?ま、まさか私が一目惚れしたのは……彼だったというのか!!?」