「全く千冬さんの気持ちが分かるってもんだな、何処を向いても黄色い声援を出す女子ばかり……何時からIS学園がアイドル養成学校になったんだ?」
「そう言いたくもなるよなこりゃ……そうなった原因は確実に俺達だけどな」
訓練を行う為にアリーナにてISを展開しながら機動を行っていたカミツレと一夏、今日は対決ではなく互いに何か動きに思い当たる場所や改善出来る場所を見抜く為に行っている物。互いの実力向上と目を養う為に行っている、最悪分からなくてもカチドキが教えてくれるのでそれを参考して次回から頑張って行けばいい、という物だったが……アリーナの観客席から溢れてくる女子達の声が喧しく溜息を付いてしまう。確かこれなら千冬も落胆する筈だ。そんな視線を向けても返って来るのは悲鳴のような黄色い声。
「キャア~カミツレさんがこっち見た~!!」
「スペインから会いに来ました~!!」
「サインしてください~!!」
「織斑さ~ん!!!こっちに視線ください~!!!」
「カッコいいいい~!!!」
「キャアァァァァッ!」
思わず額に手をやってしまう、自分達の知名度も影響して原因となっている部分も多いにあるだろうが……彼女らは本当にISを学ぶ気があって此処に来ているのかと疑いたくなってくる。ただ、有名人を近くで見たい、一緒の学校に入りたいという安直な理由だけで来ているのだろうかと思わず考えてしまう。入学の理由なんて人それぞれだから何とも言えないが、如何にも辟易してしまう。
「……おい一夏、シールドに向かって「トライドロン砲」を最大出力でブッパしていいか」
「駄目に決まってるだろ、落ち着けって!!?シールドは破れないだろうけどそれでも問題にはなるぞ!?」
「なんだったら束さんから手を回して貰えばいい」
『カミツレ、お母様がOKだよ~というショートメッセージが』
「よし」
「良しじゃねえよ!?何了承してんだよ束さんも!?」
そう言いながらもその手に『トライドロン砲』を展開したカミツレ、真紅に眩しく輝いている赤い砲身。何処か「シフトカー」っぽいEパックを装填して発射体制は整った。
「さてと……」
「おいまてマジでぶっ放す気か!?」
「訓練なんだぞ、打たなきゃ損だろ」
「だからやめろっつのっ!!?」
この後、必死になって制止する一夏に免じてシールドに向かって発射するのを取り止める。元々本気で発射する気はなかったのでそこまで本気になって止められなくても打つ気などはなかった。発射完了までスムーズに機能するかの確認をしたかっただけなのを伝えると、ならそう言えよ……と疲れたような返事を返す一夏であった。
「ああもう、カミツレなんかお前ハッチャけてないか?」
「まあちょっと嫌になってな、少し」
「それをISで発散しようとするの止めてくれないか、というか一応子供だろお前の」
『私としてはお父様と一緒に遊べて楽しいので無問題です』
「という訳だ」
「もういやだこの親子」
ピットへと戻りISを解除した二人は観客席から女子達が殺到するのではと警戒して、さっさとピットから抜け出して寮へと向かって歩き出した。これから暫くはこんな毎日が続くと考えると少々嫌になるが、ある種の有名税という奴なのだろうか……それはそれで払いたくはない税金だが。
「そう言えば一夏、お前「白式」に銃を付けるとかいってなかったか?」
「ああっその話。倉持技研に話を通してさ、腕の所の装甲に銃というかバルカンというかそういうのを仕込む事になった。銃とか全然出来ないからそれを考慮しつつ、至近距離から同時にダメージを与えられるようにしてくれるだってさ」
「まあ機体特性を考えると接近戦が生命線だからな」
「使いこなせてきて思うんだよ……マジなんでこんな滅茶苦茶なので世界取れたんだよ千冬姉」
それはISに関わりを持ったならば一度は持つ疑問だろう、だがそれを解決する魔法の言葉も存在しているのである。
「決まってる、千冬さんだから」
「納得できるのが怖いよな」
この短い言葉に千冬の凄みが集約されているのだから驚きである。そんな会話を繰り広げていると、後ろから誰かが走ってくるような音が聞こえてくる、振り向いて見ると女子生徒が一夏の名前を呼びながら向かってきていた。それは何処かみた事があるような赤い髪を靡かせていた。
「一夏さん!お久しぶりですっ!!」
「蘭か、久しぶりだな。でもマジでIS学園に来るなんてなぁ……」
「えへへっIS適正Aの結果です!」
と胸を張りながら赤らめた頬をしている少女は照れながらそう言う。一夏は少し会話をしてからカミツレに紹介すると口を開いた。
「あっカミツレ、この子は前に話した子だよ。五反田 蘭、弾の妹さんだよ」
「ああっ例の子か……お前、随分美人と知りあいだな」
「美、美人だなんて照れちゃいますよぉ~♪」
「美人通り越して絶世の美女を嫁にしてる奴が何を言うか」
「確かにな」
褒められて嬉しそうにしている蘭を一度正気に戻して今度はカミツレの紹介が始まった、が矢張り世界的に既に有名になっているので自分の事はかなり知っているらしい。
「杉山、カミツレさん……あの千冬さんと結婚する勇者……!!お会いで来て光栄です!!」
「おい待てなんで勇者扱いされてんの俺」
「だってあの千冬さんと結婚ですよ!?普通考えられないじゃないですか、普通は一夏さん達のクラスの副担任の山田先生とかだと思います!それなのにあの鉄の女、羅刹とか言われてる千冬さんと結婚とか、正気の沙汰とは思えないって私の周囲じゃ言われてますよ」
「なんて言われようだ……」
一夏もカミツレも何とも否定し難いが口を閉ざした、その後も蘭はなぜカミツレが勇者と言われているのかを続けていくが、不意にカミツレと一夏の顔が青くなっていく。
「で、でも千冬さんも可愛いとか凄い魅力的な部分とかあるんだ。俺はそういう所に惹かれてな」
「そうそう千冬姉って結構カッコいい部分目立つけど、相応に魅力的な部分もあってな……!!」
「でも私は見た事無いですし、第一それって贔屓目って言うんじゃないですか?」
「……ほう、誰の事を贔屓目で見ているだって……?」
「それはだから千冬さっ―――」
後ろから聞こえた声に振り向くと蘭は硬直し真っ青を通り過ぎて灰色の顔色になった、そこには酷くいい笑顔の千冬が仁王立ちしているのだから。笑顔とは本来攻撃的な物という話を聞いた事があるが、正しいらしい。恐ろしくて堪らない。
「五反田、丁度良い……久しぶりに話をしようじゃないか……?何、遠慮する事などない……私が新入生のお前に学園で過ごす為のアドバイスをしてやろう……」
「え、いやその、ひぇ……い、一夏さぁん!!カミツレさぁん助けてぇ!!」
が、二人は顔を背けて何も言えなかった。これに関してはもうどうしようもない、この後蘭はドナドナと運ばれて行ってしまった……。
「すまん蘭……逆らうなんて無理なんだ……」
「俺も……あの千冬さんは無理だ」