「でぇぇぇいやぁぁぁ!!」
「セイヤァァッ!!」
二つの光がぶつかり合うと同時に火花にも似た光が舞う、一方は純白の尾を引くかのような速度で空を行く騎士。一方は冷静且つ沈着、意志と同調した砲台を自在に操りながらその手にした武具を使用する大将軍。
「これならどうだっ!!」
白き騎士は大きくループを描きながら迫り来る砲弾のような巨大な光を回避しながら、隙を見つけながら腕部の装甲内に仕込まれている銃口から無数に分裂して吐き出されていく弾丸を放つ。生憎射撃の腕など皆無に近い彼にとっては散弾は面で相手に迫る為、無闇に狙いを付ける必要などがない為に重宝出来る物になっている。大将軍は周囲に展開されているシールドを合体させてそれらで散弾を防いだ。がシールドによって視界が遮られた瞬間に騎士は真正面から突撃して来て剣を振り下ろそうとするが
「ふんっ!!」
「あぶねっ!!?」
将軍はシールドを騎士へと蹴り飛ばした、それに驚いて回避してしまった騎士は攻撃のチャンスを潰してしまい将軍が手にしている大型のライフルの銃口を向けられ一撃を喰らった。
「があああっ!くそまだまだ俺は負けてねぇ!!」
「なら、来いっ!」
第2アリーナにて戦いを行っているのは男性IS操縦者である織斑 一夏と杉山 カミツレ、漸く射撃武器を手に入れた「白式」の試運転に付き合うような形で行われている試合。しかし、これは正式なクラス代表決定戦という名目を持っている。2年になってから再び行われる事となったクラス代表の選考のSHR、そこでクラスの代表を決める話合いが行われていたが見事に一夏かカミツレに票が割れてしまった。なので、致し方なく代表選考会が行われる事になったのである。
「さぁ上げていくぜっ!!」
手痛い一撃を喰らった一夏だが一切気押されずに再び向かっていく。機体の特性上、懐に飛び込んで剣で斬らなければ行けないという致命的な欠点を抱えているから致し方ない。それを僅かに改善する為に「白式」は倉持技研によって一部改修され、腕部に散弾を発射する銃口が取り付けられる事になった。それでも超至近距離から近距離程度にまで攻撃範囲が広がっただけなので、結局相手に近づかなければ攻撃が出来ないという点は変化していない。
「なら上げてみな、ギアをな!!」
それに対するカミツレは「シューティングスター」をライフルモードからマシンガンモードへと切り替えを済ませながら新たなEパックを装填し
「だぁくそやっぱりそう来たかっ!!」
一気に上昇しながら角度を付けて反転する事で突撃してくる刃を構えた猟犬を振りきろうとするが、此方の考えを読んでいるかのような超反応で迫ってくる。矢張りカチドキの制御に狂いなどないのだと実感しつつも、腕部の散弾銃でカミツレへとヤケクソ気味に撃っても、散弾は周囲に待機している子機に当たりさえしない。その辺りも完璧に計算されてしまっているのだと思うと腹が立つ。
「こうなったらっ……これだぁっ!!」
一気に加速しながら「ソード・ヴァンガード」から距離を作りながら射撃を行ってくるカミツレを中心にしながら円を描くように機動を行う。それにも即座に対応してくるカチドキの正確無比なビット射撃に怯みつつも、カミツレが照準が追いつかなくなって僅かに弾幕が薄くなった時を狙って「瞬時加速」を発動し真下に潜り込み、再度「瞬時加速」を発動し一気に上昇して行き「雪片弐型」を力強く振るう。そしてヒットの瞬間に「零落白夜」を発動させる。
「(行けるっ……取ったっ!!!)」
「取れねえよっ!!」
そのままブレードの刀身が「大将軍」を捉える筈だった、がそれは敵わなかった。高出力機動型の「白式」の特性を理解した上での作戦と「零落白夜」を有効的に活用した方法、しかし相手は偉大な操縦者を師として成長を続けながらカチドキというパートナーと共に歩むカミツレ。カチドキは一夏の目論見に気付いていた、それをカミツレも理解しそれを紙一重で回避しつつ同時に二基の「ヴァンガード」がワイヤーを射出し一夏へとそれを巻き付ける。
「なっ!?嘘だろっ!!?」
「残念、これは現実だっ!!」
動揺する一夏をワイヤーで拘束しつつもその周囲に「ディバイダー」と連結した「ヴァンガード」が高速で円を描くかのように機動している。カミツレはそこへと飛び込みながら一夏へとキックを浴びせた。
「こ、これってまさかっ……!?」
『ヒッサーツ!FULL THROTTLE!! SPEED!!』
「セイヤァァァァァッッ!!!!」
凄まじく高速で回転していく「ディバイダー」は「ヴァンガード」によってより高い推進力を得てより早く回転していく。それを何度も蹴って次々と一夏へと蹴りを決めて行くカミツレ、幾度も繰り返した事でトップスピードへと至った「大将軍」は炎のような真っ赤なエネルギーを纏ったまま「白式」の腹部へと一撃を炸裂させた。猛烈な一撃を受けた一夏はそのまま地面へと叩き付けられた、そしてそれと同時に目の前に着地したカミツレを見て溜息を付きながら言った。
「ははっ……やっぱつえぇよ……カミツレは……」
「お前も強くなってるぞ、一夏」
「そりゃ、どうも……」
2年1組代表、杉山 カミツレに決定。