IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第176話

「杉山 カミツレさんですよね。是非、私にISの指導を付けてください」

「やだ」

 

あくる日、クラス対抗代表戦も近づいてくる頃。カミツレはランチをセシリアと乱と食べている時の事だった、一人の女子生徒がカミツレの元を訪れると徐に指導をして欲しいと言ってきた。当然狙いはカミツレの恋人の座だろう、それの為に少しでも関係を築きたいと言った所だろう。がカミツレはそれを即時NOで返答した。

 

「な、何で駄目なんですか!?」

「今食事中だから」

「理由になってませんよ!!」

「十分な理由ですわよ。静かに食事を楽しみたいカミツレさんにとって今の貴方は邪魔でしかありませんのよ?」

「それに、何でカミツレさんに頼むのよ。そこが良く分からないわよ」

「分からない!?なんで恋人の貴方達が分からないんですか!?」

 

女子生徒は高らかに語り始めた、如何にカミツレが素晴らしく洗練された技術を持って成長し続けているのかを。そして今では代表候補生の中でも有数の力を持っているのだと。そんな実力を持っている人物に教えを請って強くなりたいのは当然だろう、恋人なのにそんな事も分からないのかと何処か馬鹿にしたような意味合いを含ませて二人を馬鹿にするが溜息を吐くように肩を竦めた。何も分かっていないと、緑茶を啜ったカミツレは一呼吸を置いてから言った。

 

「成程、強くなりたいから俺に教えて欲しいと」

「はいっ!!!」

「なら何で俺なんだよ、俺の師匠である真耶先生とか元世界最強である千冬さんに教えを請わない?俺よりも強い人なんてこの学園に幾らでも居るぞ。態々発展途上の俺に教えを請いたいって意味が分からないな」

 

心底理解出来ないと言いたげな物言いに僅かに後ずさりをした。強くなりたいなら何で発展途上且つ指導力があるかも分からない自分に言うのか、それこそ教えて欲しいなら教職であり師匠である真耶にでも頼んでみればいいのに。

 

「カミツレさんはまだまだ発展途上、指導に回れる程ではないですわ」

「そうそう、まだまだ弱い部分もありますもんね~」

「ハッキリ言うなぁ。まあその通りだけどさ」

 

その時、生徒は理解した。恋人二人は理解しているからこそ、自分の言葉が分からなかったのだと。カミツレはまだまだ成長し続ける上に指導に適している人間がいるから。自分は強くなりたいから教えて欲しいと言ったのである。それならばもっと強く指導力がある人に言えばいい、そう言っている。

 

「……すいません、失礼しました」

 

頭を下げながら一言謝罪をし、去っていく女子生徒を見送ったカミツレは短い溜息を吐いた。新学期になってからあのような手合いが本当に増えている。それも無理もない、自分の恋人には束や千冬がいるのだから。そんな自分と関係を持ちたいと考える国は全世界にあるのだから。

 

「はぁっ……やれやれ、見え見えなんだよなぁ……」

「まあ殆どが私と乱さんが一緒に居ますから、それを超えて接点を持とうとするとなんとか一対一の時間を持つのが一番ですからね」

「教えを請いたいってなる訳ね。余りにも無理がある話よね、千冬さんを紹介して欲しいとかの方がまだ分かるわよ」

「紹介して欲しいなら直接会いに行けって思うけどね、同じ学校にいるんだから」

 

国からの要請を受けて接触からの関係を築く事を図ろうとする生徒が多い、今カミツレが握っている物を少しでも知ろうと手に入れようとする。束と婚約しているからカミツレの自室には、束が未だ世間に公表していない新技術が眠っているのではと考えている国も多く、何とかそこに入ろうとする者が余りにも多い…。のでその道のプロである楯無に対処を依頼してみる事にした。

 

「任せて了解よ、以前の事もあるしその罪滅ぼしって訳じゃなくて……かんちゃんと仲良くしてくれてるお礼として手を尽くすわね」

 

室内のチェックや窓や入り口のセキュリティ強化処置などを楯無本人が手配しつつ、自分のアドレスを教えつつ何時でも依頼を受ける事を確約してくれた。一応楯無が室内のチェックをした後でカチドキと一緒に検査をしてみたが、本当に盗聴器やカメラなどは存在しない事が確認出来たので信用しても問題ないと分かって一安心した。

 

「いっその事、束さんに警告でも発して貰えたら静かになるかなぁ……」

「一時的にはなると思いますが、また別のやり方に代わるだけだと思いますわ」

「あたし達がガッチリガードしますから、安心してくださいよカミツレさん。束さんだけが力があるわけじゃないんですからね」

 

隣に座っていた乱が擦り寄るようにしながら腕に抱きつくようにしながら笑顔を向けてくる、それに合わせるようにセシリアも肩に頭を置いて静かに腕を絡ませてくる。彼女達にとってもカミツレにあのような女子達が近づいてくるのは好ましくなく、何処か甘えてくる。

 

「今日の夜は部屋に来ないか、腕を振るって料理を作るからさ」

「いやったぁっ♪カミツレさんの料理大好きです、私餃子がいいです~」

「餃子か……ならこれから部屋で三人で作るかい?皮も結構簡単に出来るし、一から作る手作り餃子って奴もいいだろう」

「餃子作り……私初体験ですわ、上手く出来るでしょうか……」

「大丈夫俺だって最初は下手糞だったんだからさ」

 

そんな風にイチャイチャしている3人を見つめている食堂内の生徒達は全員が揃ってコーヒーを注文をする為に券売機に走って行く。彼らの甘い惚気にやられてしまったようである、そんな事がありながらも、訪れようとするクラス代表戦は彼らが1年の時よりも激しくなるであろう。


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