間もなく始まろうとしているクラス代表対抗戦。毎年の恒例行事となっているこの催し、真の意味での盛り上がりを集めているのは間違いなく2年の対抗戦だろう、2年は例年最高人数の代表候補生を抱えているのに加え、2年1組の代表を務めているのは杉山 カミツレ。そんな彼の戦いには世界中が垂涎してそのデータを望む事だろう。
「よしチェック終了、カチドキそっちは?」
『システムオールグリーンでバッチグーです。最高の機動を行えるでしょう』
「そりゃ何よりだ。俺が代表だからな……全力で行きたいからな」
『まあカミツレは実力を出し惜しみ出来るほど強くありませんもんね』
「そうだけど態々言う事ないだろ」
翌日に控える対抗戦、それに備えて可能な限りのフルメンテを敢行して機体のコンディションチェックとシステム面の徹底的な更新などを行ったカミツレとカチドキ。今現在の「大将軍」は最高の状態というに相応しい状態となっている。必ずいい勝負が出来るという確信の元、カミツレは「大将軍」を見つめた。自分と相棒の成長の結晶である将軍は、堂々と前を向いたまま戦いに備えて精神統一を行っているかのような雰囲気を醸し出している。
「1年前の代表戦は台無しだったもんな、今度はしっかりとした物をやりたいもんだ」
『途中乱入がありました物ね、まああれはお母様の物なんですが』
「……やっぱりか」
1年前、即ち1年1組の時に一夏が代表として出場した際の事。一夏対鈴の戦いの最中にアリーナへと乱入した謎の無人機は束が差し向けてきた物だと今判明した。だとしてもどうせ束ではないのだろうかとは思っていた。なぜならISの無人機を開発する事は容易な事ではない。今は亡き亡国機業も開発に成功していたらしいが、束が開発した物より数段劣る性能らしい。
「あの時はマジで冷や冷やしたぞ……態々危険地帯に飛び込んだんだからな」
『あの試作型無人IS、通称ゴーレムは実験中に亡国からの攻撃を受けて防衛システムの一部が暴走してしまった結果、学園に向かってしまったのです。どうやら一箇所に数多くのコアが集中しているのが影響したのでしょう』
「そういう事だったのか……今回はそういう横槍ないだろうな」
今度は自分が代表として出席した戦いを行う、そんな中で去年と同じように無人機をぶち込まれても困る。まあやって来たとしても全力で対処を行うつもりだし、カチドキと一緒なら教員達が乗り込んでくる時間稼ぎは出来るだろう。教員が乗り込んでくるなら、一番槍で飛んでくるのは千冬だろうし。
『少なくともお母様からの横槍はありえないと思います。カミツレの晴れ舞台に泥を塗るような事は絶対にしないでしょう』
「成程な……それなら束さんからの事は別に問題視する必要は無いってことか……」
『はい、ですので安心して明日の事に集中すればいいと思いますよ」
「そっか……そうするか」
「大将軍」へと手を翳す。瞬間的に溢れる光が身体を包み込んだ、カチドキと一体化したかのような感触を味わいつつもカチドキは待機状態へとなって収まった。纏っている状態もいいが矢張りこうしている時が、一番カチドキを身近に感じる事が出来る。
「カチドキ」
『はい』
「明日は絶対に勝つぞ」
『了解しました。このままでは勝鬨という名前なのに名前負けしてるじゃねえかと言われますからね』
「俺達、勝利より敗北の方が遥かに多いからな」
『主に師匠による敗北ですけどね』
本当にこれでも「常勝の戦人」と異名を付けられてしまっている物とは思えないレベルの戦歴を持っているカミツレ、と言ってもそんな名前を付けた人間も自分達の事を全く把握してないでそんな物を付けてしまったのだろうが。
「さてと……そろそろ帰るか、腹減ったし餃子の残りでも焼くかぁ」
静かに整備室を立ち去っていくカミツレ、そのまま廊下を静かに歩きながら明日への戦いに思いを巡らせて行く。明日からの対抗戦に向けて栄養を付けて、休養をとる事が今出来る自分にとって最善策だ。
「ただいま~」
「おかえり~」
「おかえりなさいませお父様」
「ああっただいま束さんにく~ちゃん……何でいるのかなぁっ……!!」
一瞬普通に対応してしまった自分、この光景にもすっかり慣れきっているという事になるのだろうか。束が自分のいない間に部屋にやって来ていたとしても別に不思議に思わないし、一緒にクロエが居たとしても全く問題にはならない。もう注意したとしてもやめないだろうし。
「いやぁカッくんが明日代表戦に出るっていうから激励しに来たんだよ~」
「お父様頑張ってください!お父様きっと優勝出来ます!!」
「あ、ああっありがとう。やるからには優勝を目指すさ……本当は優勝したくないけど……」
「ニャ?何で?」
顔を背けたカミツレの口から語られたのは……各学年の対抗戦優勝者は教員から選抜されたメンバーと戦う事になっているのである。戦う教員は各学年の指導担当や担任をしている教員から選抜されるのだが……2年の対抗戦で優勝した者が戦うのは……千冬なのである。
「うわぁ……そりゃ確かに失せるね優勝する気」
「ええ……でも手を抜いたら確実に怒られるし……全力でやるんですけど……怖いなぁ色々と……」
「お父様……だ、大丈夫お父様なら!!」
「く~ちゃん……君は何ていい娘なんだ~!!!」
「キャッお父様!?」
「あ~カッくんってばク~ちゃんだけ抱き締めるなんてずるいよ~!!!」
『なんか私だけ超アウェーな気がします』