「ふぅっ……」
『お疲れ様です、カミツレ。見事に完勝ですな』
「まあな、正直楽な面もあったけど問題は次だな」
ピットへと戻ったカミツレは早速「大将軍」にSEを回復させる為にケーブルを接続する。展開はしたままで回復の終了を待つ、遂に始まったクラス代表対抗戦。その二回戦目を控えていたカミツレは対戦相手である3組の代表を撃破して一番警戒している2組の代表との戦いに備えている。今年の2組の代表者は2組でも行われた代表者決定戦で最もSEを多く残して勝利したシャルとなった。鈴との激戦はこれが代表候補生の戦いかと言わしめるほどの大激闘となった。そんな彼女との戦いに備えて、カミツレは静かに呼吸を整えながらまだ先程の戦いで昂る感情を鎮めていく。
「……敵はどんな状況でも的確に対処してくる実力とその準備を持っている「ラファール」を操るシャルか。ある意味突出した物が無いからこそ面倒な相手になるな」
『対策をすればいいと言う物がありませんからね、強いて言うのであれば対応能力を対策しろともいえますが……それはそれである意味無茶ですからね』
「何、俺達だって負けない物があるさ。俺とお前の絆だ」
『そうですねお父様』
静かに燃え滾る闘志、そこには一切の揺らぎ無し。目の前までやってきている戦いに向けられているのは自身が勝利するという強い意志で塗り固められた感情のみ、そして既にその瞳はその先で立っている千冬へと目が向けられてしまっている。意識としてはシャルとの戦いに向いている筈だが……無意識に戦う相手を千冬へと向けてしまっている。
「……カチドキ」
『はい、参りましょう』
静かにケーブルを引き抜くとそのまま射出口へと進み出た、完璧にまでに高められている闘争心は今にも暴れだしそうになっている。それを理性で押さえつけながらも高揚感が身体を貫かんとしているのが分かる、飛び出していく際に切り裂いて行く空気の流れなど気になれないほどに高揚しきっている。それを感じながらもアリーナに参上した彼に観客席からは溢れんばかりの歓声があふれ出ている。
「待ったかな、杉山君」
「それほど待ってはいないさ」
向かいのピットから姿を現したシャルも何処か緊張した面持ちを浮かべている、以前戦った事はあるがその時はタッグマッチで2対2の状況だった。正真正銘の一騎打ちはこれが初めてである。加えて相手は自国の国家代表であるヨランドの弟子であると同時にその婚約者、緊張せずにしていつ緊張しろと言うのかという事になる。
「正直、僕は君と戦いたいと思わないよ。だってヨランドさんが師匠とか明らかにやばすぎるんだけど……」
「じゃあ止めるか」
「それはそれで僕がヨランドさんに罰という名の超特訓という地獄を味合わされるからもっと勘弁して!!」
「俺もだよ、負けたら何されるか分かったもんじゃねぇ……」
意外と立場が似ている二人である。逆らえない相手がおり、そんな相手の怒りの業火で身を焼かれないようにする為に必死になるという点は酷く類似している。
「さて、そろそろ」
「始めよっか」
そう言いながら互いにその手にライフルを握り締める、静かに試合開始のブザーが鳴るのを待ち……鳴ると同時にトリガーを引いて戦闘が開始された。
「ハァァァッ!!」
「やぁぁっ!」
両手に構えられた「
「たぁっ!!」
「ゼェイヤァ!!」
徹底した中距離戦はシャルにとってはこれが一番やり易い距離でも合ったからである。「大将軍」は全距離対応型で近中遠全ての距離に適した武装を保持している。それで一番恐れるべきなのはBT兵器の「ストライク・ヴァンガード」である。厄介なのは例え至近距離を保っていたとしてもブレードで子機自身が斬りかかって来る事にある。あらゆる角度から刃が乱れ飛んでくるのに加えて、カミツレ自身もブレードで対応できる距離となる。そうなれば自分に勝ち目は無く、それならば射撃対応が出来る中距離が最もいいと考えての事だった。それでも……
「さぁ飛ばして行くぜぇ!!」
「きたっ!!!」
遂に発動するBT兵器の呻き声、飛び出していく無数の自立浮遊砲台は一斉に飛び出して行きながらあっという間に自身を完全包囲しながらオールレンジの攻撃を浴びせかけてくる。必死に姿勢制御と僅かな噴射で角度を付けながら回転して、それらを避けていくがそれに加えてカミツレが射撃を行ってくる。なんとかしないと瞬時にSEが蒸発していく……。
「僕だって、やれる所を見せないと駄目なんだよぉ!!」
シャルは一気に回転しながらそのまま「瞬時加速」を発動させる、通常では考えられないような速度で回転していくがその中でシャルは全方位に弾幕を撒き散らして行く。がそれだけではない、凄まじい勢いで回転しながら新たな銃を展開し、それと持っている銃を持ち変えながら様々な弾丸を放って行く。
「まさか……これってヨランドさんもやってた!?」
「これは、僕のオリジナルだけどねぇ!!」
ISの搭乗者保護機構とハイパーセンサーを最大限活用した全方位射撃である。「瞬時加速」でスピードを稼いだ上で「
『……すいません、3基が被弾してしまいました』
「いや3基で済んだと考えるんだ」
「ヴァンガード」に緊急回避と後退指示を出すカチドキだったが、それでも遅かったせいが幾つかの子機が被弾したせいで完全に使えなくなってしまっている。これは完全に彼女が一枚上手だったと言わざるを得ない。回転を終えたシャルは煙を発している銃口をフッと吹いて笑って見せた。
「如何かな、驚いてくれたかな?」
「ああ、驚いたな……だから此処からはガチで攻めさせて貰う」
「フフッどんな本気なのかな、楽しみ」
と嬉しそうにいうシャルだったが、直後に自分の発言を後悔する事になった。即ち彼の本気とは、「極ドライブ」を導入しての全力戦闘開始の合図でもあるのである。
『ストライク・ヴァンガード!!』
『ブルー・ティアーズ!!』
「……うわぁっ……」
シャルの眼前に広がっているのは「極ドライブ」の力によって生み出された新たな「ヴァンガード」に「ブルー・ティアーズ」の姿であった。その数、計21基。ミサイル型の物を除いたとしても19基のBT兵器が襲い掛かってくる事になる。
「さあ心の準備はいいな、俺は出来てる」
「ごめん僕全然出来てない」
「なら……ひとっ走りつき合えよ」
「ごめん僕を振り切って勝手に行ってくれないかな」
「断る」
「ですよねぇぇぇっっ!!!」
この後、シャルは先程の超回転をする暇もない程に全方位からの射撃を浴びせかけられた。そしてそこに追い討ちを掛けるかのように「ディバイダー」と「トライドロン砲」を合体させた最大火力をぶっ放し、シャルはキラキラとした涙を流しながら撃墜された。
「……BT兵器怖い」
「そうか、ならその克服訓練に協力するぞ」
「やめてトラウマが加速する!!」