IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第182話

「一夏さんとカミツレさんって、どっちが確実に上なんですか?」

「確実にカミツレ」

「義兄さんだな」

 

食堂にて昼食を取っている時、一夏と箒と一緒にいた蘭は二人に思い切って聞いてみた。カミツレと一夏、二人の男性操縦者はどちらの方が強いのかという話を切り出した。彼女からすれば憧れと恋心から一夏のほうを贔屓しているようだがその当人もその恋人も真っ先にカミツレだと言い切った。

 

「えええっ!?だって一夏さんこの前の代表戦でも凄い接戦だったって話じゃないですか!!『零落白夜』さえ当てれば勝てたって皆言ってましたよ!?」

「いやぶっちゃけ『零落白夜(あれ)』は当てさえすれば極論誰にも勝てるんだぜ?」

「正に一撃必殺を地で行くような奴だからな」

「だけど……問題なのはそれを当てるまで、どうやって接近して隙を見つけてブチ当てるかなんだよな」

 

『零落白夜』は相手のSEを切り裂く、故に相手に大ダメージを与える事が出来るので当てる事さえ出来れば一夏とて千冬に勝利する事も出来るのである。だがそれに至るまでが凄まじく苦行なのである。知っての通り「白式」は現在は武装が散弾砲によって改善されてはいるが……主力武装となるのは「雪片弐型」だけ。必然的に切り札となる『零落白夜』は凄まじく警戒されるので命中させる事が困難になる。

 

「加えて、カミツレは射撃武器も豊富な上にBT兵器まであるからなぁ……高機動で避けたとしても、今度はライフルで撃ってくるもんなぁ……」

「全方位からの攻撃のプレッシャーは凄まじい、それに耐えつつそれらの軌道を計算した上で飛び込む……それは至難の技だからな」

「それに成功したとしても……あいつ、剣への切り替えがスゲェ上手いんだよなぁ……最近はなんか千冬姉から抜刀術を教えてもらって練習してるらしいし……」

 

深い溜息を付いてしまう一夏、彼自身も強くなってきている。最近では鈴との模擬戦でいい勝負をするようになっており、彼女の切り札である『超速零速』にも直感的な物ではあるが対処出来るようにもなってきている。が、カミツレやセシリアと言った結果的に多対一となる相手との戦い方はまだまだ出来上がっていない。故に彼や彼女のとの模擬戦は惨敗を積み上げているのが現実なのである。

 

「そんなぁ……なんか、1年の間じゃ一夏先輩の方が評判良かったりするのに……本当は一夏先輩の方が強いって」

「それ確実に間違いだからな。俺の方が100パー弱いからな」

「違うな、150%だ」

「ははっそのぐらいが妥当かもな」

 

軟骨のから揚げを食べながらカミツレの評判が良くないのは確実に1年時代の彼を見た事がないからだと思うと一夏は思う。今こそ安定した強さを手に入れているが、前の彼は鬼気迫る強さと迫力があった。それをみているからこそ、2年3年からの評価は大きかったしだからこそセシリアと引き分ける事も出来たのだ。

 

「そうなんだ……実はカミツレ先輩の悪口言ってる人とか割といるんですよ。千冬様を穢した男とか言ってる人もいましたよ」

「馬鹿かよその女子、んな事千冬姉の耳に入ってみろ。説教や制裁だけじゃすまねぇぞ」

「全くだな、模擬戦と称して徹底的にボコボコにされたらまだましなレベルだろうな」

「うわぁ……それ聞くと、カミツレ先輩と千冬さんって凄い想いあってるんですね……」

「そりゃそうだろ、実の弟の前で惚気るんだぞ千冬姉」

「えっあの鉄の乙女の千冬さんが!?」

「五反田……私がなんだって?」

「いやだから……ひぃぃぃぃっ千冬さん!!?」

「お前……懲りないな、蘭」

「これは説教だな」

 

 

「へっくしっ!!」

「あれ、カミツレさん風邪ですか?」

「いや……どっか俺の悪口でも言われてんじゃねぇのかな?」

 

カミツレの自室、そこにて寛いでいるカミツレと乱。その日の授業は既に終了しているからか、二人は存分にのんびりとしている。

 

「本当に一回ハッキリ言いませんか?言いたい事があるなら目の前で言えって」

「言いたい奴に言わせとけばいい、相手にするだけ疲れるし無駄な労力を使うだけだよ」

「でも……正直視界に映ってくるコバエみたいに鬱陶しいんですよ、実力もない癖に口だけは一丁前。それで何か言われたらその場は顔だけ蒼くしてまた言う。正直あたし苛々してます」

「まあ、気持ちは分からなくもない。俺の事だからな」

 

野菜スープの具合を確かめつつも、カミツレも気分自体は正直良くない事を言う。あそこまで言われると否が応でも耳に入ってくる。ハッキリ言って耳障りな事この上ないが……下手にアクションを取ればそれが悪化の原因となってしまうのがイジメという物だ。

 

「いっその事、もう束さんにお願いして社会的に殺しませんか?」

「それ、もう束さんに言われて俺が必死になって止めた事だからね」

「ありゃ」

「だけどまあ……このまま放置すると、何れ乱ちゃん達やマドカにも矛先が向きかねない……。何か手を考えるべきではあるのは確かだろうね」

 

自分に矛先が向いているうちはいい、だがこのままだと恋人や妹にも刃が向きかねない事を考えると何か手を打つべきだろう。しかし、そうなると一体どのような手を使って動けばいいのだろうか……そこが問題になってくる。自分が彼女らに相応しいという事を見せたとしても、意固地になって余計に態度を硬くさせるだけ。如何するべきなのか……。

 

『カミツレ、今乱の「甲龍・紫煙」のコアから提案が来ました』

「えっあたしの紫煙から!?」

『ええ。それならこのような手はどうかと言ってきています』

「どんな手だよ」

『簡単な事です、彼女らはハッキリ言ってカミツレを舐めているのです。だから舐めたら痛いしっぺ返しを受けるという事を身体に叩き込んでしまえば良いんですよ』

 

カチドキが言っている事は自体は正しいだろうが……だから一体どんな事をするのだろうか。

 

「それって……つまり如何するんだ?」

『細かい部分は私達、コア・ネットワークに任せてください。安心してください、加減はしますよ』

「なんか少し不安だけど……大丈夫なのカチドキ?」

『ええ、乱は普段通りカミツレとイチャイチャしててください』

「……まあ、お前がそこまで言うなら任せるか。やりすぎるなよ?」

『はいお父様』

「だから早い」


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