IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

183 / 341
第183話

ISコアがカミツレに対する者を対処すると言ってから三日が過ぎた頃、カミツレに突然模擬戦の申し出が舞い込んできた。別段模擬戦の申し込み自体は構わないのだが、それらは自分の事を悪く言ってた女子6名からの申し込みであった。何かあるのかと思いながら、カミツレはカチドキに何をやったのかと尋ねたが

 

『ここで教えるのも面白くありませんし、終わってから教えてあげますよお父様』

「なにやらかしたんだよ……時々、俺はお前が恐くなってくるぞ」

『お母様よりはましでしょ』

「束さんと違ってお前ら全世界にネットワークある上に総勢約500人じゃねえか。ある意味たち悪いわお前らの方が」

 

やや不安などの気持ちを胸に秘めながら模擬戦を申し出を受けたのだが、何故か彼女ら全員と自分一人という状況での戦いとなった為、思わずカチドキにお前のドライブコレクション全部消してやろうかと言ってしまった。流石にカチドキもこれには慌てたのか弁解をした。

 

『何を言うのです相手は1年、それに加えて私もいるんですから実質2対6です!』

「それでも戦力が3倍差なんですがそれは」

『えっあんなのとヨランドと戦うのどっちが楽ですか?』

「これだな」

『でしょ?』

 

と言われると割とあっさりと納得してその条件での戦いを受けていた。当然だ、世界ランカーとしても最上位に入るヨランドと1年生6人が相手という物を比較する事自体が間違っているのだから。それにセシリアとの模擬戦を頻繁に行っているので対多人数戦闘のやり方は全て頭に入っているし、身体が覚えている。良く良く考えてみたら全然苦しくもない状況だった、そう思いながらアリーナへと飛び出すとニヤ付いた表情を浮かべている少女達が下劣な表情で此方を見つめているが……カミツレはそれらを一切気にしなかった。

 

「さてと……今回の勝負はどういう了見で挑んできた」

「はっ決まってるじゃない貴方の化けの皮を剥がす為よ、先輩♪」

「そしてあたし達が代表候補生になるためよ、アンタ程度がなれるんだからあたし達がなれない道理が無いわ」

「ハァッ?」

 

一体彼女らが何を言っているのかまるで意味が分からない、自分に勝つ事で代表候補になれるという事だろうか。それだったら代表候補生であるラウラとの模擬戦で数回勝利している一夏だって既に代表候補生になっているだろうに……。くだらない風聞に踊らされているのか、自分の努力を馬鹿にしているだけなのか……。

 

「ハァ……俺程度に勝っただけで代表候補生とか、馬鹿なの。その程度でなれるんだったら世の中代表候補で溢れ返ってるわ、それとも……お前ら何、セシリアや乱ちゃんの事を侮辱してんのか……?なら、容赦しねぇぞゴラァ……?」

「ハッ笑える!!6人相手に勝てるとでも思ってるの!?」

 

カミツレの言葉に爆笑し始める女子達に、カミツレはいい加減に怒りを覚え始めていた。先程から黙って聞いていれば代表候補生という存在を甘くみているのが腹立たしい、どれほどの努力と研鑽の末に辿り付ける物なのか全く理解していない。それは即ち―――セシリアと乱の事を侮辱している事も同じ。

 

「―――カチドキ、潰すぞ」

『OK.カミツレ。Start your engine!!』

「出来てるよ」

 

ほぼ同時に鳴り響いたスタートを告げたブザー。同時に6人の少女達は襲いかかろうと体勢を取ろうとするが―――

 

「おせぇ」

 

彼女らの背後へと閃光の如く移動したカミツレ、その手に構えた「フォトンセイバー」を一人へと振り下ろし「ラファール」の片側のウィングを斬り裂かんという勢い。レーザー刃がウィングを半ばまで切り裂いたところで引き抜いて、相手を蹴りつけ「稲妻軌道動作」で蹴り飛ばした先へと先回りすると加速したままの勢いで大回転しながら少女へと刃を炸裂させた。

 

「キャアアアアアア!!!」

「この程度かよ、笑わせんなぁぁ!!」

 

ホームランのような勢いで吹き飛ばされる少女は必死に姿勢制御を行うが、次に見た光景は構えられたライフルとその周囲に展開された「ストライク・ヴァンガード」の砲門が此方を向いている姿だった。泣き声のような声を上げるまでに閃光が一点に集中されていき、その少女はあっという間に撃墜されてしまった。

 

「あ、晶子!?」

「う、嘘……一夏様の『零落白夜』でもないのに一瞬で落ちたわよ!?」

「何をしたのよあんた!?」

 

驚きと追求の言葉を口にする少女達にカミツレは何とも言えない怒りが沸いてきた、自分はこんなどうしようもない連中の罵詈雑言を耐えてきたのか、あいつらを無視してきたのか……そんな自分にも腹が立ってきた。心が燃え上がる、魂が唸りを上げる……。

 

「黙れ雑魚が……てめぇら、何も分かってねぇ奴が―――俺の子供に乗ってんじゃねぇぞゴラァァァッ!!」

「こ、子供!?な、何言ってんのこいつ……!?」

「心火を燃やして―――ぶっ潰す!!」

 

心と魂からの叫びと共に待機から解き放たれた「ヴァンガード」はカチドキによってコントロールされたまま残った少女達に襲い掛かって行く。全方位攻撃という物を体験した事がない彼女らにとって、それは凄まじい脅威になる物で、完全なパニック状態に容易に陥ったが怒りで頭に血が上ってしまったカミツレは一切手を緩めずに「ディバイダー」と「トライドロン砲」を同時に構えた。

 

「余所見してると怪我するぞぉ!!!」

「ヒィィッ!?」

 

慌てて回避しようとしても遅い、周囲からはBT兵器が退路を塞ぐかのように攻撃を行って移動その物を封じてきている。同時に放たれた最大出力の「ハモニカ砲」と「トライドロン砲」は発射と同時に一つに融合し、莫大なエネルギーを纏ったトライドロンを思わせるような光弾が二人を貫いてSEを枯渇させるほどの絶大な破壊力を見せ付けた。既に半数がやられたという現実に少女達はとんでもない恐怖を覚えた。

 

「そ、そんな……だ、だってあいつそんな強くないって……!!」

「アンタそう言ってたじゃない!!あいつは全然強くないって!!!?」

「知らないわよなんであんなに強いのよ!!」

 

何も知らない者によって広められた風聞は全く信用ならない内容でしかない。一夏の方が強い?確かに『零落白夜』を当てる事が出来れば強いだろう、だが今日まで彼は一夏との対戦で一太刀も『零落白夜』による一撃を受けていない。基礎的な能力に置いても確実に一夏よりもカミツレの方が上回っている。それは2年と3年は当たり前として知り得ている情報なのである。

 

「こんな事になったのはアンタのせいよ!!」

「何ですって!?あんただって賛成したくせに!!」

「ああもう何でこうなるのよぉ!!」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

責任の押し付け合い、攻め合いをしているを見ていたカミツレは絶叫のような怒号を張り上げた。それはアリーナどころか学園中にも響きそうなほどに怒り狂ったような物。彼にとってはこれ程までに愚かで浅ましく、嫌な連中の言葉で恋人を侮辱されたばかりか、子供であるISコアを使われているのだ。怒りが出てこない訳がない。

 

「全然足りねぇなァア!!!」

「ヒィィ……」

「激昂ッ! 激越ッッ!! 逆鱗ッッッ!!!誰が……俺を鎮めてくれんだよォォオオ!!」

「キャ、キャアアアアアアア!!!」

 

狂乱寸前のカミツレはそのまま猛攻を加え続けていく、指導されて得た技術を出し惜しみせずに使いつつも何処か凶暴に攻めて行く。圧倒的な強さを体現したそれは最早狂える鬼人のそれとほぼ同義であった。そして、それが静まりを見せ始めた頃……周囲にはSEが完全に枯渇し、戦闘不能となり脅えた目で此方を見つめてくる少女らを冷めた目で睨み返す彼の姿があった。

 

「満たされねぇなぁ……」

 

静かにそう吐き捨てるとそのままピットへと戻って行くカミツレ、そんな姿に安心したのか次々と気絶して行く少女達。勝利したというのに如何にもスッキリせず、不満げな表情を浮かべるカミツレは久しぶりにスイッチが入ってしまった事に辟易としながらそのままアリーナを後にした。




かずみんの弟要素、183話目にして漸く登場。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。