「んでよ、兄貴は何時頃帰るんだ?」
「まあ今日中には帰るつもりだ。元々、こっちの杉山ファームの後処理って言い方は悪いけど跡を見に来たついでに寄っただけだからな」
兄の手料理を堪能したカミツレは食後の緑茶をかずみんと楽しみながら、何時学園を去るのかを尋ねた。返ってきた答えは元々住んでいた土地、即ち杉山ファームの跡を見に来たついでに来たという事で時間になればリチャードが手配してくれた人達が迎えに来てくれるとの事。
「時間的に言えば……後数時間程度か?」
「そうか、んじゃそれまで学園でも見て行くか?許可自体は貰ってんでしょ」
「おう。イギリスの王室とここの学園長のお墨付きだぜ」
「んじゃ案内でもするか、何処見たいよ」
「そだな……どうせならお前の嫁に会いたいかな」
そんな兄の要望に思わずガクッと力が抜けそうになる、まさかアリーナに案内してISの動く所が見たいというかと思っていたら自分が婚約している相手と会いたいと言ってくるとは本当に予想外だった。
「会いたいって……俺に内緒で実家で挨拶済ませてんだろ、セシリアと乱ちゃんに至っては」
「まあいいじゃねえか。これから家族になるんだぜ、改めて挨拶しとくのも悪くねぇだろ」
「マドカはいいのかよ」
「いやマドカとは毎晩一緒にチャットしながらみーたんのライブ見て盛り上がってるし」
「何妹に布教してんだくそ兄貴!!!」
「みーたん is GOD!!」
「ええいだまらっしゃい!!しかも答えになってねぇ!!!」
「「「お兄さん、弟さんを私にください!!」」」
「うんいいよ」
「幾らなんでも軽すぎない?」
という訳でカミツレは現状直ぐに会える人達、セシリア、乱、千冬に連絡を取って来てもらう事にした。一応束にも連絡をしたのだが、今研究の大切な場面な上に束は結構な頻度で会っているらしく大丈夫らしい。そんな訳で三人を部屋へと招き入れたのだが……その直後に行われたのが上のやり取りである。
「だってもう世界的に婚約発表してんだぞ、もう上げてるようなもんじゃねぇか」
「いやだからってそんな即答するか普通……いらねぇ玩具を知り合いの子供に上げる訳じゃねえんだぞ」
「まあ気にすんな」
気楽そうに話す兄を見て本当に何もかわっていない所を見て安心するような溜息を吐きたいような気分になって何も言えなくなった。
「改めて……お兄さん、織斑 千冬と申します。弟さんとはお付き合い、ではなく婚約をさせて頂いている身であります。私のような女では弟さんには不釣合いかもしれませんが、どうか宜しくお願い致します」
「そんな畏まらなくても良いぜ織斑さんよ、あんたの事はよく
「ちょ、ちょっとおい兄貴!?なんでそう言う事いうんだよ!!?」
かずみんはカミツレが学園に入学してからずっと彼からのメールを受け取り続けていた。日記代わりのようなそのメールを楽しみにしつつも、そこに書かれている弟の奮闘の日々を思って応援していた。その中には当然千冬、セシリア、乱と言った大切な人達の事も確りと記載されていた。それを本人達の前で言われるのは余りにも恥ずかしいのか、カミツレは止めてくれというがかずみんは止まらない。
「なんだよいいじゃねぇか相思相愛な関係なんだから」
「だからこそ恥ずかしいんだろうが、しかも何で兄貴の口からそれを暴露されねぇといけねぇんだよ!!
「か、かずみんさんわたくしの事は!?」
「私の事は!?」
「いいか兄貴絶対n「セシリアちゃんの事は絵に書いたような美麗且つ可憐なお嬢様、乱ちゃんは天真爛漫で見てて楽しい元気いっぱいな女の子だったな」兄貴ぃぃぃぃぃぃっっ!!!!???」
伝統のフリとも取られかねない台詞を言うよりも早く暴露したかずみん、そんな兄に怒りを感じつつも恋人達の嬉しそう且つ少々気恥ずかしそうな視線と表情に一気に赤面して顔を伏せながら床を殴る。
「うわああああぁぁぁぁぁ……やめてくれ、マジで止めてくれぇぇっ……これなら自分で言った方が遥かにマシだぁぁっ……しかも兄貴に言われたぁぁぁ……」
「さてお嬢さん方質問だ、赤面した顔を伏せて床を殴りながら何処か涙声になっている弟を見て、如何思う?」
「「「凄い可愛いです」」」
「だってさ、良かったなカミツレ。良い嫁さん達だ」
「もう、いっそ殺してくれ……」
これはもう自分に対しての新手の拷問なのではないか、とカミツレは思っている事だろう。かずみん曰く、昔から自分にとって恥ずかしい事があったりするとこんなことになったりするらしい。如何やらそこは変わっていないようで兄として安心したらしい。
「クソッ……クソッ……本当にやめてください、これ以上俺を虐めないでくれぇ……」
「やばいセシリアに千冬さん、カミツレさんが可愛すぎる……」
「本当に、本当に……」
「落ち着け、セシリア抑えろ。一海さんの前だ」
「いやアンタが一番落ち着けよ織斑さん、鼻血出てんぞ」
我が弟が選んだ女性達は本当に個性的というか、色んな意味で凄い人達ばかり。だが、それ以上に弟の事を思っていてくれるようで嬉しい限りだ。こんな人達がいるからこそカミツレはこの学園で生活を送って行けるのだろう。
「心の奥底から安心した。ぶっちゃけな、俺はカミツレから助けてって一言さえあれば仲間を引き連れて学園に乗り込むつもりだった。だけどこいつからはそんな言葉は一度も来なかった、頑張れてるとも思ったがだからこそ心配だった」
「だからこそ、ですか……?」
「ああ。こいつは結構ストレスを溜め込むタイプでさ、限界まで溜め込んでそれで爆発しちゃうのさ」
それを聞いて今現在悶絶しているカミツレ、覚えがあった。余裕が出来た頃、何処かの生徒会長のお陰で精神的に不安定になった時の彼。それが正しく合致した。
「努力出来る、出来るからこそ我慢するのがカミツレなんだ。でも俺は漸く心から安心出来た気がする、あんたらみたいな人達がいればカミツレは安心だ。これからも弟を宜しく頼むよ」
そんな言葉に三人は迷う事なく頷いた、迷う事などないし彼を助けるのは当たり前の事。それは既に行っていた事、これからも変わらずに行うだけの事。そんな即答に安心したのかかずみんはそのままカミツレの頭を撫でて学園から去って行った。途中、リチャードからの出迎えと合流してイギリスへと帰って行った。
「頑張れよカミツレ。お前は俺の弟だからな、心火を燃やして突き進め」
「……あんのクソ兄貴、今度帰ったら秘蔵のみーたんコレクション全部燃やしてやる……!!!」
一回、男女逆転とかやって見ようかな。
まあやったとしてもヒロイン変わらないだろうけど。