IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第189話

いよいよ遂に始まろうとしている学年別トーナメント、その当日。この日、例年通り各国からやってきた来賓などで賑わっていたが、如何にもその中には付き添いと言う形での美女やら本国にて訓練に力を注いでいる代表候補生も多く見られるようになっていた。別段各国からの代表が自国の代表候補生を連れてくるのは珍しい事ではないが、今年は特にそれが顕著になっているように見える。その目的は、一夏とカミツレ、この二人。

 

自国に少しでも男性操縦者との繋がりを強く欲している各国だが二人は恋人や護衛という頼もしい味方に守られている為に関係を持つどころか接触すら難しい一面がある。一夫多妻制度を友好的に生かしたいと願ってもこれでは意味がない。カミツレには既に5人という恋人がいる、しかもその全員がそうそうたる面々。彼と関係を持てるだけで国際的には地位が向上する、一夏もそれは同じではあるが二人からしてもそれが狙いなのは承知済みなので警戒をし続けている。―――だからこそ、今度は国の代表という名目を持って接近して来る。これならば断りにくくなるだろうし、肉感的な美女ならば男としても興味が湧くだろうという目論みもあった。

 

「んまっ下手に相手しねぇけどな」

「俺も」

 

そんな幼稚な考えを見透かして居る二人は相手にする気などなかった、元々鈍感なのもあったがそれ以上に一夏は今現在箒にしか興味が向いていないし愛情の全てを彼女に向けている。仮に箒以上の美女がいたとしても箒にしか目は向けないだろう、そんな事をすれば箒に対する思いへの裏切りと一夏は考える。くわえて言うならば箒もかなりの物なので彼女以上の美女を用意するのは容易ではない。カミツレは……言うまでもないだろう。

 

「一回戦は……4組の子か、順調に行けば……」

 

自室にてトーナメント表を見ながら自分の対戦相手を確認する、取り敢えず一番最初に当たる相手は訓練機を使用する相手。即ちセシリアと乱を筆頭とする専用機持ち達ではない、別段安心すると言う訳では無いが……心の何処かでは早く戦いたいと言う欲が渦巻いている。何時から自分はバトルジャンキーになったのかと呆れる一面の裏では闘志が燃え上がり続けているのに笑いが込み上げてくる。自分が望んでいる者がそこにあるのだから……。そんな事を思っていると扉をノックしてくる音が聞こえてくる、扉を開けると誰かが飛びつくように抱き付いてきた。

 

「っ!?」

 

瞬間驚きに満ちるが即座に驚きが喜びに変わって行くのが自分でも分かった、直後に唇に暖かな感触が触れてくる。扉は閉まると同時に深く体が抱き締められ、荒い息遣いと共に頬に涙が伝わってきた。相手も僅かに涙を流しているに気付くとそっと背中に手を回してそれを受け止めた。

 

「ぁぁっやっぱりこの温かさと感触……やっぱり、夢ではありませんわ、ツェレ……本当に、会いたかった……」

「ヨランドさん、俺も貴方とこうして直接会いたかったです。本当にお久しぶりです」

 

部屋に飛び込んできたのは恋人でありフランスの現代表、ヨランド・ルブランであった。こうして会うのは何時振りになるのだろうか……。彼女の立場と自分の現状を鑑みるとそう簡単に会えないのは致し方ないものがあるが、両者からすると愛する恋人と電話などでしか触れ合えないのは酷く心苦しい物があった。二人はそのまま暫しの間、互いの気持ちと感情が満足するまで、今まで触れ合えなかった時間を取り戻そうとするかのように身体を深く抱き締めあった。

 

 

「こうしてまた一緒に居られるだけで俺は凄い嬉しいですよ」

「私もですわ、ツェレ。鍛錬を欠かしていなかったからか一段とまた漢らしく屈強な身体つきになって、私はとても嬉しいです。今度はその胸板に顔を埋めて貴方に愛を囁いていただきたいですわ……」

「ご希望なら幾らでも」

 

深い抱擁も満足するまで(約30分)した二人、共の腰を落ち着けながら紅茶を共に飲みながら談笑を楽しんでいた。やっている事自体は今まで行っていた電話と変わらない、違うのはお互いの身体が触れ合うほどに近い距離にいるという事のみだがそれが堪らなく嬉しい。

 

「ツェレ、実はお料理をお願いしたいのですが……」

「大丈夫ですよ、準備はしてありますから。それに頼む必要なんてありませんよ、俺達は恋人なんですから」

「ツェレやっぱり貴方は最高ですわ~!私の思いを汲み取ってくれるのではなく感じ取ってくれるこの相思相愛、正しく私と貴方は運命の赤い糸で結ばれているに違いありませんわ♡」

「正しくそうでしょうね」

 

久しぶりに会えた事が本当に嬉しいのかテンションが既にMAXなヨランドは隣に座っている愛しい彼の肩に頭を預けながら、甘い言葉に愛をトッピングを加えて差し出した。それをカミツレは迷う事なく受け取り咀嚼して感想を述べる。

 

「そう言えば時間は大丈夫なんですの?」

「ええ、俺は第5試合ですから。時間はまだありますから」

「それじゃあ―――まだまだ二人っきりで居ても大丈夫ですわね」

 

そういうとヨランドはそっと彼に抱き付きながらベットの方に倒れるように体重を掛けて押し倒すようによりかかった、カミツレはそれを受け入れるようにしながらベットに横たわる。きっとこうしたかったのだろう。

 

「それまでの間、貴方を感じさせて―――ください」

「俺も、貴方を感じたい」

 

二人は自然に唇と身体を重ねると互いを再び強く抱き締めた、それは彼の時間が来るまで互いを求めあった。




妻「逢瀬はこんな感じで良いですか?」

私「ああ良い感じ……ってなんか既視感があるような……まさか」

妻「ニコッ♪」

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