IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第190話

「私だって、私だってまだまだ夢を諦めないんだからぁ!!」

「セイヤァァァッッ!!!」

 

遂に幕が切って落とされスタートした学年別トーナメント、各学年にとって重要な意味合いを持つこのトーナメント。それぞれの学年の生徒達は張り切っている事だろうがそれが最も顕著であり盛り上がりを見せているのは2年の部だろう。今現在第3戦目を迎えている2年生の部、その対戦を行っているのは世界的に注目されている杉山 カミツレであった。彼にとっての第一回戦、相手は訓練機を纏っている一般生徒、多くの1年生達はこれはカミツレの圧勝だと予想していた、だが―――それを覆すかのように少女は二次移行を経ている勝鬨に喰らい付いている。

 

「でぇぇええいっ!!!」

「おっとっ!!」

 

キレのある動きと変則的なリズムから繰り出されて行く斬撃と射撃の間隔、それは相手の呼吸を乱して自分が戦いのペースを握る為の物。試合開始から約20分という時間、生徒はカミツレとカチドキを相手に持ち堪えながら来るであろう自分の勝機を只管に待ち続けている。これには圧勝を予想していた1年達も驚きに満ちていた、何故あんなに強い人が代表候補でもないんだという疑問すら孕ませるほど。

 

「セイィィヤァ!!」

「キャアッ!!」

 

「ディバイダー」の片方を蹴り飛ばしてぶつけ隙を作ると「シューティングスター」を高出力モードに切り替えながら連射する。それは相手が纏っている「打鉄・黒鋼カスタム」の特徴でもある大型化されているシールドの片方を吹き飛ばすと一気に接近してそこからブレードを奪うと一気に振り下ろした。

 

「流石、元々の搭乗者!!」

「そりゃどうも!!」

 

振り下ろされた一撃をライフルと保持していたブレードでクロスさせるようにして受け止める、が元々の出力からの違いからか一気に吹き飛ばされてしまう。が、吹き飛ばされた方は持っていたブレードを投げつけると一気に加速して体当たりを繰り出す。カミツレはそれを真正面から受けつつも受け流すと「トライドロン砲」を構えてトリガーを引いた。

 

「キャアアッ!!!」

 

この一撃が決定打となり、対戦相手であった生徒のSEは0となった。それでも十分すぎるまでの健闘を見せつけた少女は観客から多くの拍手をその身に浴びた。そんな拍手を浴びつつもカミツレと握手を交わす。

 

「もうちょっといけると思ったのになぁ……やっぱり強いよ杉山君は。流石ルブラン代表の恋人ね」

「どうも、体当たりは思いっきり良かったけどちょっと良すぎた所があったな。あそこは残ったシールドを投げつけるのも良かったと思うよ、俺ならそうしてる」

「あ~そっかそういう手もあったのか……流石にシールドは一つないとやばいと思ったんだけどなぁ」

 

軽い話を終らせると互いのピットへと戻って行く、そこでカチドキを解除しつつ一息つくと同時に入ってきた乱が此方に微笑みながらドリンクを差し出してきた。それを受け取って一気に喉へと流し込んで行く、適度に冷えたスポーツドリンクが体に染み込んで行くのか分かる。

 

「あ~美味い、態々有難う乱ちゃん」

「いえ良いんですよ、まずは一勝おめでとうございます」

「何大した事じゃないさ。にしても……ヨランドさんの影響もあるだろうけど結構手古摺ったな」

 

本来なら1年が考えているとおりカミツレが圧勝しても可笑しくはなかっただろう、が、2年生は1年の時にヨランドからの指導を受けている為に実力や技量は高くなっている。加えて対戦相手だった少女は代表候補生試験を受けており、間もなく本試験に入る予定の実力者。時間が掛かるのも当然と言える。

 

「でも背面撃ちでカミツレさんのブレードを叩き落とした時はビックリしちゃいましたよ」

「あれは俺も素でビビッた、でもまあその後ちゃんと建て直せたから問題なかったけど」

 

そんな話をしながらも今現在アリーナでは一般生徒同士の戦いが行われているが、やはりヨランドの影響なのかそれとも彼女らの努力の結晶故か、例年以上に激しい戦いが行われている。これは各国のスカウトも目を丸くするレベルだろう。

 

「今年のトーナメントは本当に盛り上がってますね」

「全くだ。1年前の奴は途中邪魔が入って最後まで出来なかったもんなぁ」

 

控え室で待機しているラウラがくしゃみをしている最中、乱は腰掛けているカミツレの膝の上にちょこんと乗ると身を彼に委ねた。

 

「そう言えば次は乱ちゃんの試合だったっけ?」

「そうなんです。アタシ頑張りますから応援してくださいね!」

「ああ勿論、ライバル同士だけど俺は君の恋人として応援させてもらうよ」

「やーん嬉しい~♡」

 

そんな風に微笑む彼女、腕の中で甘い声を漏らしながらも甘えてくる恋人がまた愛おしく愛らしく思える。彼女が持っている気質なのか、如何にも自分はそんな彼女に弱くついつい甘やかすような態度で受け入れてしまう。乱は嬉しそうに微笑んでいるとカミツレの頬にキスをした。

 

「おっと」

「えへへへっ♡カミツレさんニウムの補給です♪」

「おいおいなんだよその謎元素」

「ご存じないんですか!?カミツレさんの恋人にとって必要不可欠な新元素です!」

「聞いた事もないけど……」

 

ようはカミツレと一緒に居る事で得られる活力の事である、こう言われればカミツレも心当たりがある。イギリスから帰ってきた際の乱と千冬、そして先程自室で一緒だったヨランドに思い当たる節が脳裏に浮かんでくる。

 

「それじゃあ―――もっと補給するかい?」

「はい―――させてください」

 

そういうと乱は覆い被さるように彼の唇を奪った、そのまま荒い吐息を声と共に漏らしながらも激しく唇を重ねて行く。全神経を集中させながら彼の温もりを堪能しつつ、響く水温を味わいながら―――次第に身体が熱くなるのを感じ、舌を彼の口内へと入れながら彼のと絡める。

 

「んうぅ、ちゅぱぁ……」

「はぁ、はぁしゅき、しゅきカミチュレしゃん……♡」

 

回らない呂律のまま愛を説きながらより深く彼を求めて行く、それを続けて行く事十数分。互いの口を結ぶような銀の橋が出来上がるほどに絡み合った二人は漸く離れた。何処か艶々しつつ満面の笑みの乱と顔を赤くしているカミツレは微笑んでいた。

 

「頑張ってきますから、勝ったらまたシても良いですか?」

「駄目、って言っても聞くのかい?」

「えへっ聞きません♪」

 

小悪魔的な笑みを浮かべるとそのままISを展開するとアリーナへと飛び出していった。どうやら丁度試合が始まる直前だったようだ。そんな恋人を見送ったカミツレは笑いながら呆れたような声を上げる。

 

「やれやれ、しょうがない子だな」




私「ねぇ確かに恋愛描写お願いって言ったけどさ、毎回毎回実体験を元にするのやめない?」

妻「だってリアリティは必要でしょう?岸辺先生だって重要だって言ってるじゃないですか」

私「いやでも恥ずかしいんですけど……」

妻「私はゾクゾクしますけど、書く時あの時の感触に興奮を思い出しますから……」

私「怖いから恍惚のヤンデレポーズ見たいな感じの笑顔でこっち見ないで」

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