「ゼエエイヤァァァッッ!!!」
「う、うそおぉぉ!!?」
魂の篭った一喝と共に振り下ろされた一閃、それは酷く重く力が込められた渾身の斬撃だった。対するは嘗てカミツレが使用していたカスタム化された「黒鋼」と同じカスタムが成されているバリエーション機、それと対峙するは千冬の弟である織斑 一夏。圧倒的な気迫と渾身の一撃によって放たれる剛の一撃、それは構えていたブレードを粉砕しながら「打鉄」本体へと深い傷跡を残す一撃、そこから返すように振り上げた剣。「打鉄」に刻まれる勝利の頭文字であるV、それを刻印するかのよう斬撃を受けた生徒のISのSEは一気に枯渇し、一夏の勝利への証明と化した。
「シャアァ!!」
力強く喜びを露わにする一夏、勝利へ感じるのは喜びではなく確信と納得。自分が作り出しかった物の一端が今の戦いの件にあったと理解できる、それに対する納得は自分をこれから更に先へと誘ってくれる。ピットへと戻りつつも不意に空を見上げながら自分が倒したいと思う相手を思い浮かべる、その相手にこの剣が通用するかと言われたら難しい所だろう。だがそれでも自分の道が交わって、互角となれる日も必ず来る。
「うーん……」
そんな思いの源流となったのはトーナメントが開催される前の事だった。自室にて一夏は自分の模擬戦の映像データを見ながら何処か悪いのか、如何すればいいのかの研究を行っている最中だった。他のISと違って取れる手段が極端に少ない自分にとって自分の研究は、他人よりも酷く重要になってしまう。しかし、彼は頭を悩ませていた。
「駄目だなぁ……他のISだったらとれる手段は「白式」じゃ出来ない。俺にあった方法を見つけないと……それには自分の個性を見出さないと……」
間もなくに迫るトーナメントの為に自分の戦い方を見つけようとしているがそれは自分が「白式」を受け取った時からずっと考えていた事だった。と言っても自分はISについては初心者、そんな自分の周りには参考になる人物だらけだった。が、参考にしたくても「白式」には適合しない物ばかりで何とも言えない気分になってしまっているが……それでも自分より遥か上の技術を見てしまうとそれをついついやって見たいと思ってしまいたくなる。それではいけないと思っていてもである。
「ハァッ……気分でも変えて、なんか見るか……。カミツレから借りたライダーの映画でも見るかなぁ……」
少々憂鬱となった気分を変えたくて適当な映画でも見ようと、カミツレから借りている物から探そうとしていると最近嵌っている「555」の劇場版を発見する。これにしようと思って手を伸ばして見ると、そこには一緒にもう一つのビデオが置かれている。それは―――千冬が出場したモンド・グロッソの決勝トーナメントの戦いを纏められていたものだった。
「なんだよこれ、確かカミツレが千冬姉とヨランドさんとかの戦いを見たくて自分で編集した奴じゃなかったか?間違えて持ってきちまったのかな」
あとで謝りに行こうと思いながら当初の考え通りに「パラダイスロスト」を見ようかと思ったが―――手に取ってしまったこのディスクから如何にも目が逸らせなかった。この中には姉が、自分のISの先代とも言うべき存在を駆って無敗神話を叩き出した千冬の戦いが入っている、それを見たいと思ってしまった。気付くそれをパソコンに入れて再生ボタンを一夏は押していた。
「―――っすげぇ」
圧巻としか言いようがないものがそこにはあった、過去に千冬とカミツレの戦いを間近に見た事があったがあれよりも遥かに凄かった。千冬の全盛期、紛れもなく最強だった頃の千冬の戦いがそこにあった。一刀の元に敵の目論見や戦略を無に帰し、最強の一撃で敵を両断する姿は戦乙女と呼びたくなるのも理解できるものだった。自分はなんでこんなに凄い物に興味が惹かれなかったのかと、過去の自分を蹴りたくなって来た。兎に角そこにあるのは自分が目指すべきような完成系がそこにある。これを元にすればとも思った……が
「それは、それでなんかやだな……ただの千冬姉の完コピじゃん」
それを否定した。確かに千冬の戦いは雪片を用いた、いやブレードを用いた近接戦闘術の完成系とも言えるものだった、しかしそれをそのまま行うのは偉大な姉に対する侮辱のような気がする。未熟な自分が姉を真似るのは失礼でしかないし自分では絶対千冬を越えられないと負けを認めているような気がする。
「俺がやるべきなのは、千冬姉とは違う剣。やるにしても此処から何かを吸収して俺独自の剣じゃないと意味がねぇ……!!」
そう思うと再び食い入るように映像を時々一時停止やスローにしながら見つめた。どれも洗練された一閃、自分にはこれほどまでの剣の腕はない。ならば如何するべきなのか……。
「―――そう言えば、千冬姉の剣ってどれもスピードに乗ってるよな……まるでISの出力をスピードで補ってるような」
例えて言うなれば鈴の「甲龍」のような強烈なパワーがないように思える。それを補う為に加速の勢いを利用するかのような一閃などが酷く多いようにも思えた。言うなれば高機動近接型とでも言うべきなのだろうか。
「スピードとパワー……それって「白式」なら行けるんじゃねえのか!?」
そこから導き出したのは燃費こそ悪いがだからこその圧倒的な出力とパワーを両立している「白式」の持ち味を最大限に引き出してそれを剣に融合させる、即ち剣に速度と重さを加えて振るう剛剣の戦法。それに辿り着いたのであった。
「何時までも弱点を補う方法を考えてるからいけないんだ……優れてる部分を最大限に引き出すほう方にすればいいんだ!!」
自分の戦い方を見出した一夏、急激な進化を遂げようとしている彼。そんな彼とカミツレに次の対戦が迫っていた、それは―――
織斑 一夏 VS ラウラ・ボーデヴィッヒ
杉山 カミツレ VS 凰 鈴音
遂に、専用機同士の激突が行われようとしていた。