IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第192話

妨害などもなく順調に駒を進められていくトーナメント。去年の問題だらけのイベントとは違った順調な進行に思わずホッとしたりする教師陣と今年も何か来るのではないのだろうかと警戒する2年と3年たち、そんな気持ちを他所に過去最高レベルにスムーズに進んで行くトーナメントは、いよいよ専用機同士のぶつかり合いが行われようとしていた。最も専用機持ちが在籍している2年、そんな中でも注目のカードとされているのが―――

 

織斑 一夏 VS ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

杉山 カミツレ VS 凰 鈴音

 

 

―――この二つの対決だった。千冬の弟である一夏が、姉から指導を受けたドイツ軍人のラウラと激突する。もう一つは数多くの師からの師事を受けながら成長し続けるカミツレと次期中国国家代表確実とも言える超天才の麒麟児である凰 鈴音との対決、どちらが勝利するのか予想も付かないような対決カードが組まれている。既に観客席はその試合を待ち侘びる少女達で溢れ返っており、その時を待ち続ける。

 

「お前も災難だな、ラウラとなんて」

「ホント運悪いって思うわ」

 

控え室ではからかわれるようにラウラとの対戦の事を言われている一夏とラウラと当たらなくて良かったと安堵しているカミツレの二人がいた。正直な話、互いにライバル同士ではあるがどちらが勝っても負けても厄介な点は残るので勝敗自体は気にせずに目の前の戦いに集中する事にした。

 

「そっちだって鈴が相手じゃねぇかよ、1年前に戦った時は俺ひでぇ惨敗だったぞ。そうならないといいな」

「お前と一緒にすんじゃねえよ。俺よりラウラの事でも考えとけ」

「だよなぁ……」

 

思わず溜息を吐いてしまった。ラウラ、自分の護衛や訓練を全般的に見てくれている師匠というよりも教官的な立ち位置にいる大切な友人、そんな彼女は自分の手札の中身を全て把握しているし切り札の事もお見通し。如何対処すれば自分を容易く撃破する事が出来るのかも想定済みだろう、情報が全てバレているのもきついのだがそれ以上にラウラは2年の中ではタイマン性能が頭一つ飛び抜けている。

 

「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー」通称AIC。ラウラは停止結界と呼称しているがこれが兎に角一対一のタイマン状態の場合に反則的な効力を発揮する。

 

「対象を任意で停止させるとか、キツ過ぎるにも程があるわ……」

「まだ序盤なのに中ボスが時間停止能力並にやばいな」

「それ、何処の鉄道会社だよ」

 

対象の完全停止、これに囚われると完全に嬲り殺しにされるのが確定すると言っても過言ではない。発動には多量の集中力が必要らしいが軍人であるラウラにとってそれは余り問題にはならない。タイマンであれば常に相手に集中が行く、彼女の集中を崩すのは容易な事ではない。複数相手やエネルギー兵器には効果が薄いという欠点もあるが……一夏としては絶対に使えない手段である。

 

「カミツレとかセシリアとかなら、AIC(あれ)は気にしなくてもいいだろうけど……俺の場合は完全に止められる未来しか見えない……」

「ブレードに腕部バルカン……きつすぎるな」

「さて、どうやって詰んで行くべきなのかな……」

 

漸く見出した自らの剣だが、剣どころか様々な物を完全に封殺してしまうラウラの停止結界。それらを破るには単純に多人数かビームやレーザーで攻めるのが一番楽なのだが……生憎ルールでタイマンが定められているし「白式」には実弾兵器しかないので真正面から攻めあって勝利するしかないという選択しか取れないというのが苦しいところ。

 

「まっ頑張れよ、俺としてはお前が勝った方が楽だけどな」

「ちぇっ言ってくれるよなほんとに……俺は鈴が勝ってくれた方が色々とやり易いけどな」

 

負けじと言い返す一夏にそう簡単には負けないというカミツレ、確かに鈴は純粋に強い上に非常に厄介な相手でもある。彼女が編み出した必殺の技でも「超速零速」は速度をMAXから0に移行させる事が出来る、例えハイパーセンサーだろうが一時的にロストしまうほどの速度差とそれを利用した高速戦闘術こそ彼女の真骨頂。明確な弱点はあるが、それを不可視の射角無制限の「衝撃砲」がカバーするという徹底振り。タイマン性能で言えば恐らく鈴もラウラに近しい位置に立つだろう。

 

「いいんだよ俺は、対策自体は考えてあるし。最悪弾幕ゲーするし」

「出来る奴はいいよなホント……」

「君の生まれながらの不幸を呪うがいい」

「いや謀られてねぇんだけど」

 

なんだかんだで十分すぎるほどに余裕がある一夏、カミツレの振るネタにも言い返せている。少しでも平常心で居たいが為なのだろうか。

 

「ハァ……まあいいや、兎に角全力でぶつかるとしよっと。それなら仮に負けたとしても満足というか納得して負けられるだろうし」

「それは結構だけど、そこは絶対に勝つとか言う所じゃねえのかよ」

「だからキツいんだっつの!!!」

「もう玉砕でもしてこいよお前。その後は箒に丸投げするから」

「やだよ俺絶対食われるじゃねえか!!?」

 

そんな二人の会話を他所に、試合の次回は刻々と迫って行く。間もなく始まる、一夏対ラウラ。一体どうなるのだろうか。




妻「使うならラウラさんのISがいいですね私」

私「万能だしAICあるもんなー」

妻「だって、あれを使えば貴方を停止させて……ウフ、ウフフフフフフ……」

私「……なんか、最近ヤンデレ再発症してない?」

最近マジで妻が怖い。

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