『これより、織斑 一夏 対 ラウラ・ボーデヴィッヒの試合を開始します!!』
いよいよ始まろうとする一夏対ラウラ、緊張した面持ちながらも身体を捻るような体勢を取る一夏。そんな彼の動きを警戒しているラウラは鬼のような鋭い視線を投げ掛けている。
「今日という日、少佐殿と戦える時を楽しみにしてたぜ」
「訓練生がどれほどまでに腕を上げたか、少佐直々に見てやろうじゃないか」
互いに軽口が飛び交う、お互いは良き友人であると同時に教官と教え子と言う関係。ドイツ軍直々の仕込を受けている一夏と当時の千冬のような立場で少しワクワクしていたラウラ。そんな二人の対決が始まる、観客席から溢れている声は既に二人には聞こえなくなる程に集中していた。互いの行動一つ一つを注意深く観察し洞察、行動を予測して対処する。それがラウラが教え込んだ事だった、それを実践するかのように一夏は刃のような鋭い視線を投げる。
『今試合より制限時間は無制限となります、敗北条件はSEが0となるかギブアップの宣言となります!!』
時間は気にしなくていい、やれる事を全力でやれば良い。そんな事最初から分かっていた、一夏からすれば時間なんて気にしている余裕なんてない、戦えるだけ戦って自分に悔いが残らなければいい。ただのその一点の欲望が満たされれば良い。勝利なんて二の次、自分の全てを絞り尽くした先に勝利があればそれで良し、敗北であってもそれで良し。
『それではこれより―――』
試合開始のアナウンスが迫る、電光掲示板が時間を刻んで行く。後、5―――
「私は負けてやる気などないからな」
―――4、
「俺もただじゃ負けねぇよ」
―――3、
「
―――2、
「ああ、んじゃ―――」
―――1、
「刻めよ、記憶と身体にっ!!」
―――0。
『試合開始!!!』
スタートされた、開幕された試合。先に動いたのはラウラだった、その手にプラズマを纏わせながら複数のワイヤーを撓らせながら一本一本が意志を持っているかのように別々の軌道を描きながら襲い掛かってくる。明らかなほどに反応速度が違っている、それから遅れて一夏が動く。ラウラ相手にコンマ数秒の遅さは死を招く、だが一夏は落ち着いていた。そして、その手にブレードを展開して―――
「ッ―――!!!!」
刹那、勢い良くラウラが後退した。即座に距離を取った、何かが身体を貫いたかのような悪寒がした。それに反応したのか反射的に後ろに飛んだ、目の前にはブレードである「雪片弐式」を抜き放った一夏がいる。それだけの動作な筈なのに、先程脳裏には全く違う相手が垣間見えた。それが誰なのかハッキリしないが兎に角全力で相手を潰さないと行けない。
「……ッッ!!!」
「来るかっ!!」
一気に出力を上げて突撃してくる相手に対応する為に「ワイヤーブレード」を振るった。それよりもワンテンポ早く「白式」は大きく回転しながら保持した「雪片」を正確にワイヤーに当てて軌道をそらして懐へと飛び込んだ。
「やるかっ!!」
「ワイヤーブレード」では対応しきれない超至近距離まで接近されたラウラだったが相手が飛び込んでくる事など想定内だった。元々準備を行っていた手刀を振るって振り下ろされてくる「雪片」を受け止める。
「(な、なんだこの剣の重さはっ……!?)」
受け止めた際に掛かる剣からの伝わってくる重さ、それが異常に感じられる。ISのパワーアシストや様々な機能があるというのにこれほどまでに感じられる重さは明らかに可笑しい。先日までの訓練ではこんな重さなんて感じられなかった、となると一夏が密かに積んだ鍛錬の結晶となるが……これは、凄まじい失敗を感じた。
「チェエエエエエエストォォォ!!!!」
「グッ……!!」
今までの訓練では十分対処できるはずの一撃だった、それが一気にレベルアップしているかのような勢いで重い物に変じている。先程まで喧嘩をしていた相手がいきなり相撲取り級の重さになっているかのような変じ方にラウラは驚きを隠せない。この重さではいつまでも対応しきれるわけではないし、こうも近くて激しい剣の応酬では「
「イイイィィィイヤァアアア!!!」
激しい剣戟と素早く移動しながら常に此方に対当たりでも使用かというレベルで踏み込んでくる。それは「白式」最大の強みである機動力と出力の大きさがあるからこそ出来る戦法だった、そして同時にラウラはここで自分の作戦ミスに気付いた。「停止結界」を温存する事で一夏の焦燥と不安を煽ろうとしたが、それを読まれてしまい懐へと潜入を許してしまった。
「だが、この程度では私は負けんッッ!!!」
幾ら重くなろうが、「停止結界」が使えなかろうがこの程度で負けるほど自分は弱くはない。此処は一夏の作戦と度胸の良さに賞賛を送ろう。ラウラは引くのを止め、一夏が踏み込むと同時に前へと出て勢い良く一夏の頭を頭突いた。ISの保護機構で頭への痛みはないがこれで超接近が一時的に和らいだ。その隙に一夏を蹴り飛ばして「ワイヤーブレード」の網へと押し込んだ。そして一斉に攻撃を仕掛ける。
「まだまだだな!!」
蹴り飛ばされた一夏、彼はまるで抜刀術でも行うかのように片手の隙間に「雪片」を差し込んでいた。不安定な体勢、しかしウィングスラスターを一気にMAXにまで引き上げて強引にそれを直しながら、一気に「雪片」を引き抜いた。再び異様な悪寒が身体を貫いた、一度体験しているからより鮮明にそれを感じ取った。後方へ「瞬時加速」のような勢いで後退する。生憎一夏を網から脱しさせてしまったが、相手とて自分に距離を取られるのは苦しい筈だ。が、一夏は笑っていた。
「―――取ったッ!!」
「何を、ッ―――!?」
一夏の言葉に疑問を孕んだがそれは直ぐに生まれて産声を上げた。それがラウラのISの武装である「ワイヤーブレード」その半数が半ばから切り落とされ残りの物もワイヤーの中腹まで斬り込みが入っていたではないか。たった一瞬の出来事だったはず、一斉に攻撃して来た「ワイヤーブレード」。その瞬間に狙いを定めて抜刀した「雪片」で斬ったというのか!?
「退かれちゃったから全部、とまでは行かなかったけどな」
何処か嬉しそうに笑っている一夏にラウラは悔しさ、ではなく教え子の成長に対する嬉しさを感じていた。これを千冬も感じていたのだろうかと思ってしまうと自分の悪寒の正体に気付いた。あれは―――訓練時代に感じた千冬の一撃を受けた時の物だ。圧倒的にまでに鋭く早い一閃は相手を瞬時に切り捨てる斬撃、それを一夏は彼なりに再現しつつアレンジしたのである。
「今のは―――織斑教官が得意としていた……」
「ああ。だけど俺にはあれを常にやるなんて無理。だから箒に抜刀を教えて貰って、それをやったんだ。重い剛の抜刀術だ」
「雪片弐型」は嘗て千冬が使用した「雪片」の後継型。その剣が体現したのは鋭く早い神速の剣。が、一夏のそれは速度ではなく一撃の重さと威力に重点を置いた物。正しく彼なりの剣だった。
「俺がやるのは剛剣、只管重く威力のある一撃。さあ、行くぜラウラ。身体の堅さには、自信あるか」
「……はははっ。面白い、ならその剛の剣、受けてたとうではないかっ!!!」
予想もされなかった一夏の優勢での開始、これからこの対決はどんな終焉を迎えるのであろうか……。
私「因みに如何してラウラのがいいの?」
妻「だってワイヤーにAICですよ?貴方を拘束する手段がいっぱい……♪」
私「……いやAICあれば十分なんじゃ……」
妻「何を言うのです。縛られている状態の貴方の姿……そこに価値があるんです♪」
私「何それ怖い」
マジで怖い。リアルに妻にこんな事言われたんですよ、多分からかい…ですようん。
きっと、恐らく、メイビー……。