IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第195話

注目の一戦とされていた一夏対ラウラの戦いはラウラの勝利で幕を閉じた、しかしそれでも十分すぎるまでの力を見せ付けた一夏への評価は高かった。これは普段からカミツレとの模擬戦を見学し敗北を積み重ねている事をみていた生徒達も一夏の強さを改める事となった、そして1年の中でこれで一夏の方がカミツレより強いという考えが決定的となった瞬間でもあった。ドイツ軍の少佐であったラウラとあそこまでやりあったのだから当然だ、と1年の多くが胸を張る中で行われようとする次の試合……

 

 

杉山 カミツレ VS 凰 鈴音

 

 

それが始まった瞬間、1年生達は目を疑うと同時に言葉を失いそれを見つめた2年及び3年はやっぱり彼は凄いという事を再認識しつつ、中国の麒麟児である鈴の強さを改めてその眼に焼き付ける事となった。

 

「ダァッ!!」

「おっとぉ!!」

 

既に開始している試合だが、それは激しい剣戟の応酬となっていた。一夏とラウラの時のような互いが超至近距離に居ながらではなく激しい機動を繰り広げながらの応酬。通り過ぎざまの一閃、放たれた一撃を蹴って相手の隙を作ろうとする、それを先読みしてフェイントを織り交ぜる、その対処の為に移動したシールドを蹴って緊急回避を行う。僅かな時間の切れ目にあるのは互いの攻め手を予想しながら一手を打ちあっている二人の姿。

 

「上下右右左下、右上斜め右下下」

「下上左左右上、左下斜め左下上」

 

相手の行動を先読みしているからこそでてくる手、それらに直感的に対処しつつも思考を止めない二人。一手一手が相手を捉えようとするギリギリを通り過ぎていく、二人が相手の思惑通りにならないという事を同時に行っているが故である。

 

「はぁぁぁぁっっ!!!」

「セイヤァァアアア!!!」

 

今度は渾身の力同士のぶつかり合いが始まる、互いに一直線に相手に向けての一撃一撃が向かっていく。青龍刀と太刀の双方がぶつかり合って行く。それらは一夏が行っていた剛剣ほどではないが十分に重い物だった、それでも一夏の方が凄いと笑う生徒がいるが彼女らは気付かない。その一撃が一夏の剣にはない鋭さがあるという事に。

 

「これでぇっ!!」

「やらせるかぁっ!!」

 

再び剣がぶつかろうとした時、鈴の剣はカミツレのブレードとはぶつかり合わずに空を切って「ディバイダー」に受け止められた。彼のブレードは何処に行ったのかと思っていると、手からブレードが零れて落ちていた。カミツレがここでミスをした、のではない。落ちていく先は足元、そのまま勢い良くブレードを押し出すように蹴り飛ばした。

 

「くっ!!」

 

蹴りによる突きを受けた鈴だが、青龍刀をまるでブーメランのようにしてカミツレへと投げつける。それは彼の腕部に直撃した。ブレードを拾いながら体勢を整えなおす互い、が、刹那に鈴の「甲龍」の肩アーマーに当たる「非固定浮遊部位(衝撃砲)」が火を吹いた。目には見えない砲弾が飛来してくるが何時の間にか持っていた「トライドロン砲」でそれを相殺する。

 

「やるわね、なら―――っ!!」

「あめぇよ!!」

 

刹那、彼女の姿が完全に消えた瞬間にカミツレは頭上を仰ぎ見た。するとそこには鈴がいた、それと同時に「トライドロン砲」から放たれた光弾は何かとぶつかりつつも「甲龍」へと炸裂した。

 

「良く分かったじゃない、上に来るって」

「山張っただけだ。まあ真後ろだったらやばかったけど、それは本命に使うと思ったからな。まずは頭上からの牽制と意識誘導だと思った」

「ふぅん、流石あの人の弟子ね」

「そりゃどうも。それと、これからが本番だろ」

 

それはつまり、鈴のエンジンが遂に温まりギアを上げられるようになった事を示している。先程の攻撃が良い証拠、彼女最大の戦力である「超速零速」を有効活用した戦術。遂に切り札を切ってきたというわけになるが、この切り札はバレた所で彼女が唯の回避手段や移動手段として用いるだけなので大した痛手にもならないというメリットもある。寧ろその切り札を基礎として繰り出される攻撃に問題がある。

 

「なら―――こっちも行くか」

READY……COMPLETE.

 

不意にカミツレの周囲に複数の機動兵が展開されていく、一つ一つがカミツレを守る為に相手を打つ砲となりつつも相手を穿つ矛になる。鈴もそれを見て笑いつつもこうして相対すると伝わってくる重圧感に冷や汗を流すがそれすら楽しめそうな感じがしてくる。

 

「鈴の「超速零速(あれ)」は厄介だからな、俺も全力でそれを潰させてもらう。必要ならもっと数は出すしな」

「やれやれ光栄なんでしょうけど、一夏がアンタと戦いたくないって言いたくなるのも分かるわ。アンタのあれなら的確に相手の弱点を付ける上に自分の弱点までカバーリングできる。本当チート級ね」

「そうでもないさ、お陰で覚える事が増えてな……いや本当に大変なんだぜ」

 

そう言いつつもカミツレの表情は笑っている、それもその筈だろう。幾ら覚える事が多くなろうが素晴らしい師に恵まれている彼にとってそれは更なる成長を意味し、それを師から教わって更に進化していくのだから。

 

「アッハハハハ、やっぱりアンタってさ面白いし良い男よね。乱が一目惚れしたのも今なら良く分かるわ」

「そう言って貰えると俺も嬉しいな」

「学園に来る前、アタシの身体見ながら日本人は皆ロリコンだって言ってたアホにアンタを見せてあげたいわ」

「何その酷い偏見」

 

などといった会話を繰り広げながらも互いは自然と体勢を取っていた。休止時間が終わり、という事だ。

 

「さてと―――続き行きますかね!!」

「ああ、来いやぁ!!「ヴァンガード」スタートアップッ!!」

『START UP』

 

戦いの第二幕が始まる。




妻「そう言えば鈴ちゃん推しなんでしたっけ?」

私「推しというか何と言うか……友達的に見たら彼女かなぁって。君は?」

妻「そうですね……強いて言うなら」

私「言うなら?」

妻「木ノ本 桜ちゃんですね」

私「せめてISのキャラで言って下さい私も桜ちゃん大好きですけど、というかあのアニメのせいでアニメに嵌ったから」

妻「分かる」

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