IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第196話

「失礼致しますわね千冬、真耶」

「なんだヨランド、お前来たのか」

「お久しぶりですねヨランドさん」

 

フランス代表のヨランドは管制室へと顔を出すとそこでモニタリングを続けている千冬と真耶は軽く挨拶をする。カミツレ関係でもう互いに知った仲ゆえか軽い挨拶だけで十分。千冬とヨランドは同じ男を愛している者同士、真耶とは同じ男を弟子として持つ師同士。中々に面白い関係となっている。

 

「ツェレのお相手、凰 鈴音さんでしたね。基礎を尋常ではないレベルで修めてますわね……」

「奴は努力の大天才な上に天性にも恵まれている麒麟児だからな、そんな奴だからこそだろうな」

「基礎こそ基本にして奥義なり、とは良く言った物ですね。今の「三次元躍動旋回(クロス・グリット・ターン)」も見事ですし」

 

教員と元世界王者、そして現国家代表から見ても矢張り鈴は尋常ではないレベルの錬度と言える。基礎を徹底的に鍛え上げているからこそ発揮出来る機動に技術が彼女の武器。最大の刃である「超速零速」もISの機動の基本である完全停止を発展させた物だ。それを極めているからこそ出来る事と言える。

 

「それに対して、ツェレはあれですわね」

「奴め、的確に突いて行くな……」

「師匠としては褒めてあげたいんですけど……凰さんからしたらかなりキッツいですよねぇ……」

 

高機動と「ストライク・ヴァンガード」のオールレンジ攻撃に加えて「ソード・ヴァンガード」による斬撃、そしてカミツレ本人もライフルを低出力のマシンガンモードにして徹底的に鈴の動きを妨害している。縦横無尽に移動する砲台の全方位からの攻撃と斬撃、そして高速で移動しながらマシンガンを放ってくるカミツレ。全方位に注意を払わなければいけない鈴にとってこれほどきつい状況はない。完全に切り札である「超速零速」を使おうとすれば全方位からの攻撃に打ち落とされてしまうので、実質必殺技を潰されてしまっているのと同じ。

 

「なんとかBT兵器を打ち落とせたら良いんですけどねぇ……」

「コントロールしているのはカチドキだからな……幾らなんでもきつすぎるだろ」

 

そう、最大の問題は「ヴァンガード」をコントロールしているのはカミツレの相棒「カチドキ」であるという問題に尽きる。これが戦っているのがセシリアなら何とかなったかもしれない、幾ら彼女でも此処まで激しい猛攻を仕掛けるならば何時しか疲労する。なので持久戦を選択出来るが……生憎カチドキはコア人格なので疲労する事はなくコントロールし続ける事が出来る。正にカミツレだからこそ取れるエグい戦い方である。

 

「あっそうでしたわ、千冬にお伝えする事がありましたわ」

「私にか、なんだ?」

「実は―――」

 

 

「(下右左上上上下右上左斜め右……)グッ!!」

「らぁぁぁっっ!!!!」

 

続けられるカミツレと鈴の戦い、それは第2ステージへと駒を進めているが状況は鈴にとって最悪の状況だった。

 

「(予想以上、やばい!!カミツレの奴、アタシの事を研究しまくってる……!!)ちぃぃっ!!」

 

必死に光の矢の隙間に身体を潜らせるかのようにしながら攻撃を回避していく、だがそれも全て計算済みと言わんばかりにそこへ突撃して行く「ソード・ヴァンガード」、それを防御するが弾き飛ばされてしまう。

 

「そこぉっ!!」

「うそぉ!?」

 

体勢が大きく崩れた時、目の前に姿を現したのは先程まで一定の距離を取って全く近づいて来なかったカミツレだった。あの距離を詰める為に「個別連続瞬時加速」を発動して一気に距離を詰めた、そして自分を逃がさないようにその周囲には光の網と刃を携えた私兵隊が構えている。退路は真正面のカミツレを突破するしかない、と思い突撃しようとした瞬間に目の前に連結された「ディバイダー」の砲門が開かれていた。しかも「ディバイダー」には「トライドロン砲」までもが連結されており、既にエネルギーの充填は終了していた。

 

「ま、まさかアンタが距離を取ってたのって!?」

「待ってたのさ、この瞬間をっ!!!」

ヒッサーツ! FULL THROTTLE!! FULL FULL HARMONICA BIG TAIHOU!!

 

内部のハモニカ砲からは「トライドロン砲」と連結された事で供給されたエネルギーが限界を超えた光線となった身動きの出来なかった鈴へと襲い掛かって行った。それを超至近距離からまともに受けた鈴は凄まじい勢いで吹き飛ばされ、地面へと叩き付けられた。恐らくISで出せる火力の中でも上から数えた方が早いレベルの火力をその身で受けた鈴は呻きつつも身体を必死に起こすが、既にSEは0になっており思わず溜息を吐いた。

 

「はぁっ……負けかぁ……。徹底的に対策練られてたなぁ……」

 

そんな事を呟きながらゆっくりと降りてくるカミツレを見つめた、憎たらしいまでに自分を完敗に追いやった彼だが不思議と悔しさなんて沸いて来なかった。寧ろ喜びがあった。

 

「負けたわ、アンタ本当に強いわね」

「鈴こそ。なんとか勝てたって気分だよ」

「良く言うわね、でも今度は私が勝たせてもらうわよ」

 

自分は強いという自信も確信もあった、それは揺るがない。だがそれに驕っているつもり慢心もしていなかったはずだった。自分を戒めて努力を続けていた筈だった……だが自分の努力を超えるほどの対策と戦術を取られた相手に負けた。これ程までに誇らしい事はない、それほどまでに自分は警戒に値すると言われているような物なのだから。

 

「待ってなさいよ、今度はアタシがアンタを完膚無きまでに叩き潰すから」

「望む所だ」

 

熱い握手を交わした二人を盛大な拍手が祝った、互いの健闘を称えた物。互いはもう一度深く手を握り込むとそのままピットへと戻っていった。ピットへと入ったカミツレは一息つきながら、これで一つの壁を越えられたと思っていた。少し休もうかと思っているピットに誰かが入ってきた。

 

「ツェレ、いい試合でしたわよ!」

「ヨランドさん、有難うございます」

 

ヨランドだった、師であり恋人からの言葉に思わず嬉しさがこみ上げて来る。

 

「そんな貴方に会わせたい方がいますわ」

「会わせたい……?」

 

首を傾げているとヨランドはその人物の手を引いて向かってきた、一体誰なのかと思考を巡らせているとその人物が明らかになった。が、その人物の顔を見た時、カミツレは驚愕で目を見開いた。

 

「とってもカッコ良かったわよ!流石カミツレ、ナイスファイトォ!!」

「な、な、な……なんで母さんが此処に居るんだよぉぉおおお!!!??」

 

To be continued……。




私「次回も次回で波乱が起こるぞ!」

妻「私達も波乱起こしてみます?」

私「意図的に起こす意味は!?」

妻「焦る貴方で私が滾る♪」

私「断固拒否します」

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