IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第198話

「でぇぇええいやッッ!!!」

「ずえぇやぁっっ!!!」

 

上空より『灰色の鱗殻』を構えて一気に襲い掛かってくるラファール、それを回し蹴りで迎撃して叩き落とすカミツレ。普段よりも気合が入った蹴りは的確に相手の首筋を捉えていた、急所を猛烈な勢いで回転した勢いを載せた一撃によって『絶対防御』が作動して一気にSEを削り取った。

 

「ぐぐぅぅ……な、何これ……前の試合よりも動きにキレがある……!?ずっと研究してたのに、それを軽く上回ってる……!?」

 

吹き飛ばされた生徒はカミツレと同級生だが、彼に対してアンチ的な思考を持ち合わせている。千冬の大ファンだった為か、千冬との仲の良さが気に食わないのだろう。彼と対戦し打ち破る事を夢見て研究を重ねていた。当然BT兵器や彼の戦法などにも対策を講じて戦いを挑んでいた。通常の彼ならば良い試合をする事が出来ただろう……しかし今の彼は休憩前の時とは一味も二味も異なっている。

 

「カミツレ~カッコ良いわよ~!!どんどん行け行け~!!」

 

そう、観客席にて一際大きな声で応援している一人の女性が彼に普段の倍以上の気合とやる気を漲らせているから動きのキレが倍以上になっている。周囲の観客達は一体誰なのかと思っている、そんな女性、姉にも見られかねない若々しい母からの声援を受けたカミツレは良いところを見せようと張り切っているという事なのである。

 

「俺のデータ、ね……生憎、人間は常に前に進み続ける。昨日までのデータなんざ今の俺には無駄だぁっ!!」

 

そう言いながら襲い掛かるカミツレは掴みかかるとそのまま右腕に装着されている「灰色の鱗殻」に連続で膝蹴りを入れて完全に弾倉を潰して使用不能にするとそのまま地面へと叩き付けるかのように叩き付ける。武器を使わずに殴り掛かってくるカミツレにブレードを展開して迎え撃つが、剣の軌道を全て把握して懐に入り込むと足を蹴り上げて体勢を崩した。

 

「カチドキ、新必殺技行ってみるか」

『是非やりましょう』

 

飛び出した二基の「ヴァンガード」はワイヤーを射出すると相手をガッチリとホールドするとそのまま動き封じる。カミツレはそれを目視してから軽く手首をスナップさせながら跳躍、するとそのまま右足には二つの「ソード・ヴァンガード」が装着されているかのようにピッタリと追従して行く。

 

「はぁぁぁっっ……!!!」

 

そのまま最早彼の得意技と化している「個別連続瞬時加速」そして「稲妻軌道動作」を織り交ぜて周囲を残像が残るほどの速度で飛び回って行く。そして残像がまるで全て独立した個として動いているように錯覚を起こさせると全周囲からカミツレが突撃して来た。

 

『やあああぁぁぁぁっっ!!!!』

「キャアアアアアアアアッッッッッ!!!!」

 

全周囲からカミツレが「ソード・ヴァンガード」を携えて蹴り込んで来るという山盛りの悪夢、実際は何度も何度も蹴り込んでいるのだがそれが独特のリズムと機動、そして速度の問題で全周囲から襲い掛かってくるかのように見えるという現象を生み出している。

 

「ふぅぅぅ……名付けて「ブレードアクセル・クリムゾンスマッシュ」かな」

『クリムゾンは付けなくても良いのではないのですか、赤くなってませんし。それにソードではないのですか』

「良いんだよ、細かい事は」

 

名前についてのツッコミを貰いつつも小声でカチドキに対しての返答をしたカミツレは、勝利を誇示するかのように左腕を上げて勝利を宣言した。同時に勝利確定のアナウンスが流れてカミツレの勝利を告げた。この一撃に観客席からは大歓声の声が溢れ出した、特に特撮好きの簪はえらいはしゃぎようで愛理の隣で大興奮していた。そんな愛理も

 

「カミツレ~カッコ良いわよ~♪さっすが~♪」

 

とご満悦な様子で手を振ってきている、それに応じつつ母の期待になんとか答える事が出来た事に喜びを覚えながらピットへと戻って行った。そして展開解除を行うと準備していたスポーツドリンクを飲みながら準々決勝進出が出来た事にガッツポーズをした。

 

「カチドキ、如何だ」

『中々興味深いデータが取れました。これならスピードロップにも応用が利きそうです』

「実際やっちゃった俺が言うのもあれなんだけどさ、あれに斬撃加えるのって大分エグくならないか?」

『さっきの技の時点で十分すぎる位にエグいです』

「ですよね~」

 

だが別段後悔も反省もするつもりもない、自分としてはやりたかった事が出来たのだから。

 

「なあ「ヴァンガード」って脚に固定する事出来ないのか?追従させるようにさせるよりはそうした方が良いんじゃないのか?」

『そう出来るように調整しますか?』

「そうした方がお前の負担も減るんじゃないか?いざとなったらオールレンジ攻撃しながらやる事にもなるんだし」

『成程、私への負担軽減を考えてくれたのですね。それならばやらなければ相棒の気持ちを無駄にする事になってしまいますね。準備しておきます』

 

そんな会話を繰り広げながら携帯でトーナメント表を開いて対戦相手を確認する。現状残っている専用機持ちのは自分を含めてセシリア、乱、ラウラ、マドカとなっている。次の相手を破ったらぶつかるのは専用機持ち―――その相手は乱、あるいはマドカになる。そしてそのまま自分がどちらかに勝った場合決勝を戦うのはセシリアかラウラ……どんな場合にせよ油断の欠片も出来ないほどの強敵しか残っていない。

 

「此処まで来たんだ―――優勝するぞカチドキ」

『折角此処まで勝ち残ったのですからね。盛大に勝鬨を上げましょう』


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