試合を終えたカミツレは一旦休憩の為に食堂でコーヒーを注文してそれを飲みながら自分の対戦相手が出るのを待っていた。試合を観戦するのも悪くはないのだが新鮮な気持ち、そして真正面からぶつかりたい気持ちを抑えて冷静な戦いをしたいと気持ちを落ち着けようとしていた。如何にも先程から彼の腕は妙に嬉しそうにするかのように震えながら今にも暴れだしそうにしている。
「誰が上がってくるのか楽しみだぜ」
『落ち着いてくださいカミツレ、何れにしろ戦いにはもう一戦勝利しないといけないんですから』
「分かってるさその位……」
既に目が先に行ってしまっていたが、自分だって専用機持ち達との戦いに進む為に後一つ勝進まなければならない現実が待っている。既に勝っている気でいるのは拙いと気を引き締め直して、次の試合へと意識を向けなおすと自然と手の震えが収まった。意識の切り替えによる武者震いの収まりを感じたのかカチドキは溜息のような物を漏らしながら相棒の分かり易さに若干呆れるのであった。コーヒーを飲み終わると控え室に移動しようと立ち上がり控え室へと向かって行く。
「さてと、勝つか!!」
『やれやれ、それに付き合うとしますかね』
何処か性格が一部逆転しているかのような状態が起きている中望もうとした試合だったが、対戦相手の一般生徒は此処で棄権を発表して試合を降りた。如何やら精神的な疲労ともう此処まで来れただけでも満足という事とこれから先が専用機持ちばかりというプレッシャーに負けてしまったとの事。そんなこんなで不戦勝で準決勝への切符を手に入れたカミツレは何処か肩透かしな物を感じながらも控え室で静かに戦いの時を待ち続けた。
「次の試合って何時からだっけ?」
『準々決勝が終ったとしても、その後は1時間の休憩時間が設けられて16:00から纏めて試合が行われます。ですから進行中の準々決勝の事を含めないと約1時間半、含めると約2時間の余裕がありますね』
「んじゃ結構暇あるな」
『折角ですから「サプライズ・フューチャー」でも見ながら待ちましょうよ』
「そこは「パラダイス・シフト」だろ常考」
とそんな漫才じみたやり取りを続け、結局見る事になったドライブの劇場版を見ていると控え室に誰かが飛び込んでくるかのように一夏が控え室に入ってきた。
「何だよ騒がしいなおい……」
「ハァハァ……わ、悪い……準々決勝第2試合が、終ったぞ……つまり、カミツレの対戦相手が決まった……」
「マジか、んで誰?まだトーナメント表見てないけど。確か第2って乱ちゃんとマドカの試合だろ」
「か、勝ったのはマドカだよ……」
一夏が告げた勝者、即ち自分の対戦相手が判明した。それはマドカだった、自動的に自分の対戦相手はマドカという事になるが……マドカは乱を破ったという事実に素直に驚かされる。確かにマドカは元・亡国機業の実働部隊としての経験にとって高い実力を誇っているがそれでも乱も十分対抗できる筈の実力を有しているはず、それを破った……これは簡単な相手ではない。
「でもなんでお前それをそんなに慌てて伝えに来たんだよ」
「そ、それがよ!!マドカの奴、今まで打鉄の勝鬨カスタム……だったっけ、兎に角それ使ってたのにいきなり違うISを使ってたんだよ!!」
「違う、IS……?」
つまり戦法などの対策を使用されないために変えたという事になるのだろうか、確かにマドカは自分の専用機が完成するまでは「打鉄・黒鋼カスタム」を使う許可を貰っていた筈だが……それではなくラファールを使ったという事だろうが。
「つまり「ラファール」って事か?」
「全然ちげぇよ、だったら俺だってそう言うわ!!だから、「打鉄」でも「ラファール」でもないISを使ってたんだよ!!」
「んだとぉ!!?」
驚きに満ちた声を吐き出してしまったカミツレ、一夏の言葉にはそれだけの破壊力が秘められていた。「ラファール」でも「打鉄」でもない新たな機体を使って勝利を収めたというマドカ。だが何故そんな機体を手に入れたのだろうか……。
「ま、まさか……このタイミングでマドカの新ISが届けられたとか、か……!?」
「た、多分そうだと思うぜ。だってマドカの奴にはえっと、BT兵器で良いんだっけ?それ使ってたから!!」
「……マジかよ」
これは決定的だ、BT兵器を採用しているという事はイギリスで作られたという事が決定的だ。
「凄い試合だったぜ……ぶっちゃけ、俺も凄い魅入っちゃったよ。マドカの奴はなんていうのかな、今の勝鬨じゃなくてその前の奴になんか似てたかな」
「前って事は……「蒼銀」か?」
「そうそうそれそれ。んで「蒼銀」に幾つかセシリアの「ブルー・ティアーズ」と「大将軍」の要素を足していったような感じって言ったら良いのかな」
「蒼銀」をベースにしながらもそこに「大将軍」や「ブルー・ティアーズ」などの過去のデータなどを加えて行った後継型。となると「蒼銀」が持っていた武装なども複数持っていたと思っていた方が良い。
「後はそうだな……BT採用型ってビームとかレーザー系だよな」
「まあどっちかと言ったらな」
「なんか、実弾系が多かったぞ。マシンガンとかバズーカとか、後腕に俺の「白式」みたいな奴も付いてた」
これだけでもかなりの情報が得られた、かなり基本に忠実且つ継続的な戦闘が得意な物という印象が先行するがEパックの存在も考えると豊富なレーザー系統武装も充実している筈だ。
「あっそうだ、後翼あったぞ!なんか天使みたいだった!!」
「……天使みたいって……もうちょいまともな感想ねぇのかよ」
「マジでそうだったんだからしょうがねぇだろ!!?」
私「次回、乱が語る試合の様子!?」
妻「マドカさんの機体って明らかに私の趣味と合いますね。実弾系が多いって」
私「そう言えばそうだね。君ってなんか大火力系ってあんまり好きじゃないよね」
妻「持続的な物が好きなんですよ、一瞬で終るよりじっくりたっぷり楽しみたいじゃないですか」
私「分かるけど、なんだろう別の意味に聞こえた。」