IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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第20話

「一夏!クソ私も何か出来ないのか!?」

「落ち着いてください篠ノ之さん、今無闇に出て行ったとしても混乱を作り出すだけですわ。ジッと待つ事もまた勇気がいる事なのです」

「だが……!!」

「それより心配なのは、凰だ」

 

ピット内のリアルタイムモニターはまだ生きているのでカミツレ達はアリーナの内部の状況を知る事が出来ていたが、内部で起きている事を把握しているが一夏の行動にやや危機感を募らせている。ハッキリ言ってこのまま中に置いていても鈴の行動阻害にしかならない、SEは残り僅かな状態ではISが解除され危険すぎる。そうなった場合、鈴は展開解除されてしまった一夏を守りながら囮をする二重苦を味わう事になる。何時流れ弾が一夏を貫いても可笑しくはない。

 

「如何しますか、私達ならば内部に突入して援護する事は可能ですが」

「……難しいだろ、カチドキは兎も角ティアーズは一対多向けで多対一はやり辛い。そもそも俺達が突入して役に立てるのかって問題がある」

 

経験や実力を加味してセシリアのみが突入したとしても、機体特性的に活躍は難しい。かと言ってカミツレが行っても経験が不足している上にコンビネーションを一度もやった事がない相手との連携などまともに取れる訳がないし自分が鈴の足を引っ張る可能性の方が高い。ならば二人で突入して一夏を救出した上で、一方が彼を連れてピットまで撤退しもう一方が鈴と共に足止めに徹するのが一番だろうか。しかし自分達だけでは判断が難しいと思い、管制室へと接続する。

 

「織斑先生、真耶先生聞こえますか!?」

『何だ杉山!?用があるなら手短に頼む、此方も忙しいのでな!!』

「状況は俺達の方でも把握してます。俺達が中に入って織斑を連れてきます!」

『だ、駄目です危険すぎます!!相手はアリーナのシールドを破壊する相手ですよ!?』

 

真耶の言いたい事は分かる、アリーナと観客席を隔てるシールドは本来強固であり通常のISの武装では破壊出来ない強度を誇る。しかしあのISはそれを破壊して、中へと侵入している。その武装が生徒に向けられる事は教師として認められない事で、鈴の囮とて苦渋の決断で依頼した事なのである。

 

「でも今織斑を退かさないと今度は凰が危険になりますよ!!先生方が突入する前にあいつらやられますよ!!」

『だからといって、お前達が突入して何とかなるという物ではないだろう!!二次遭難になる可能性とてあり得る!!』

「しかしこのままではどちらにせよ観客席の生徒に被害が出かねませんわ!!その場合でも生徒4人と大勢多数の生徒、囮を決断された先生ならばどちらが良策なのもご理解頂けるでしょう!!?」

 

強気な二人の言葉に思わず千冬は言いよどんだ、少ない犠牲で多くの利を取る。確かにそれは正解なのかもしれない、だが教師としてはその為の手段が悪手すぎる。どちらも教師が守り導く為の生徒が犠牲になるのだから。強く噛む唇から血が流れ出す、だが決断はしなければならないのは確か。

 

『―――っっっ……!!分かった……こんな時に、力を尽くせない教師ですまない……だが約束しろ、絶対に無事でいろ。それが絶対の条件だ!!!』

「「了解しました!!」」

『先輩!!!……分かり、ました…!今からお二人に分かっている範囲で取れているデータを転送します。雀の涙かもしれませんけど、役立ててください!」

「感謝致します、真耶先生」

『絶対、絶対に無事で帰ってくるんですよ!!?約束しましたからね!!!?』

「分かってますよ師匠。負けない戦いを、でしょ?」

 

データの受信を確認した二人はそれぞれISを展開して出撃体勢を整えた。ピットのハッチは破壊して突入するしかないだろう。いざ出撃しようとした時、箒が声を上げた。

 

「わ、私は何も出来ない……今の話を聞いてとても危険なのは理解できた……だから、だから頑張ってくれ!!一夏を、一夏を宜しく頼む!!」

 

そんなせめてもの思いを乗せた言葉に思わず驚いてしまった、あの箒からこんな言葉を聴いたの初めてだった。目に涙を溜めている所を見ると本心は一緒に行って一夏を助けたいのを必死に我慢しているのだろう、それも一つの勇気だ。

 

「ああ分かった、力を尽くしてくる!」

「篠ノ之さんは如何か此処で御待ちください」

「ああ―――頼む!!」

 

その言葉を受けてカミツレとセシリアはピットから飛び出して行く。ハッチを破壊してアリーナへと飛び出して行く後ろ姿を追いながら箒は小さく「一夏……」と呟きながら両手を握り締めた。

 

 

「ぐっ……一夏、上に飛びなさい!!」

「お、おう!」

 

鈴の指示を受けて回避行動を行った一夏、その指示は正解で先程まで彼が居た位置にはビームが通り過ぎた。一夏はそれに冷や汗を欠きながら敵から目を逸らさなかった。鈴に何度言われようとも一夏は逃げようとはしていなかった。鈴は幾ら言っても退避しようとしない一夏に痺れを切らしそうになりながら必死に理性で抑えつけ、自分が指示を送りその通りに動けっという条件を付ける事で行動を許さざるを得なかった。その為に鈴は得意の『超速零速』を使わずに敵に肉薄しながら接近戦を挑み続けていた。直ぐ傍でデータを集めつつ、敵の挙動に少しでも一夏を狙う物があったら、一夏を回避運動をさせるという事を行っているが負担が余りにも多すぎる。

 

「(好い加減に、疲れがっ……!!)」

 

得意技が封じられているのには他にも原因があった、集中力である。『超速零速』は繊細なスロットルワークを要する、それに大きな集中力を裂かなければならないが今は相手の挙動を見抜くのにそれを使っている。そしてその挙動を見抜いた上で、如何回避すれば良いのかの指示が鈴に予想以上の疲労を与えており、次第に見抜きが鈍りつつあった。

 

「鈴大丈夫か!?」

「アンタほどじゃないわよ…まだ教師はこないみたい、ね……」

「ああまだみたいだ!」

「どんだけ厄介なのよ……たく面倒ねっ……」

「鈴、オフェンス交代するか!?」

「……それ本気で言ってるんだったらアンタを尊敬するわ……」

 

最早大声で突っ込む気力もなくなりそうになっていた。だから自分が指示しているからこそ確実な回避が行えているんだと分かっているはずだろうに。一夏のSEは残り少ないのだから、一撃でも喰らったら確実にアウト。ISが解除されてしまう、そうなったら絶体絶命である。そんな事には絶対にさせる訳には行かない……!!

 

「鈴危ない!!」

「しまっ……!!!」

 

思考力が鈍った時、敵のビーム砲塔が光を放った。間違いなくビームを撃つ気だ、しかし回避運動が遅れてしまっている。確実に喰らうと防御を固めようとするが間に合わない。一夏が身を投げ出して盾になろうとするがそれも間に合わない。今、光が放たれようとした時、一つの光が敵へと炸裂し大きくバランスを崩した。

 

「今ですわ!!」

「カチドキ、行くぞぉぉっ!!」

 

敵への懐へシールドを両手に持った勝鬨が突撃しビーム発射口を無理矢理に塞いだ、ビームは逃げ場がなくなりそのまま暴発し、敵の身体の一部を焼く爆発を引き起こした。その爆発の勢いにやや呑まれそうになりながらも、爆発の勢いを使いながら後方へと飛んだ勝鬨は一夏の前へと降りながら尚、シールドで防御体勢を取り続ける。

 

「カミツレにオルコット!?なんで此処に!?」

「お前が退かないから来たんだよ、ったくさっさと退くのが良策だぞこの場合!」

「だけど、鈴一人残していくなんて危険すぎる!!」

「何を言ってるんですか!!貴方は自分のISのSEを把握していますの!?それでSEがなくなり展開が解除されるほうが余程危険ですわ!!」

 

隣にセシリアが付きながらライフルで何時でも射撃可能な状態を取りながら一夏へと言葉を掛ける、既に一夏のSEは底を尽き掛けている。このままでは確実に展開を維持出来なくなる、その前に退けなければならない。鈴は身体を起こしつつ状況を把握し声を出す。

 

「悪いわね二人とも、助かったわ!でも、こんな所に救援なんて無茶するわね……二次遭難になるって考えなかったの?」

「それ、織斑先生にも言われたよ」

「そうですわね。だから織斑さんを連れて撤退するのが最適解ですわ、凰さんまだいけまして?」

「誰に物言ってんの、私は麒麟児の鈴ちゃんよ。余裕も余裕よ」

 

そう言いつつ機体を構えさせると先程まで爆発で動きが止まっていたISが再度動き始めていた、先程の決死の行動でビーム砲を潰す事が出来たようだが、代わりの砲門を展開するのを見て思わずカミツレはうわっと声を出した。

 

「おいおい俺の行動無意味?折角勇気出したのに」

「いえ、大金星よ。一つでも潰れたのは大きいわ」

「そう言って貰えると救われるわ、んで如何する?織斑、お前素直に退く気あるか?」

「ない、寧ろ4人であいつを倒そうぜ!!」

 

その言葉に3人は思わずガックリきた、そう来たかと……そして次の言葉を言おうとした時、一夏はこう言う。秘策があると。

 

「俺のISには必殺の剣がある、それであいつを倒すんだ!」

「それって私の時に使いました『零落白夜』ですか?」

「ああそうだ!」

 

『零落白夜』とは白式にある単一仕様能力、相手のバリアを無効にして絶対防御に直接攻撃するという力。非常に強力であるが使用の為に自らのSEを削る諸刃の刃、元々この『零落白夜』は千冬の専用機であった『暮桜』に搭載されていたのと同一の物であるが、何故それが白式で使用可能になっているかは不明。しかしそれを使えば確かに大ダメージを与える事が出来るのは確か。

 

「んで、お前の残りSEは」

「えっと……マジで一回分、かな」

「キツすぎるでしょ」

「正気の沙汰じゃないですわね」

 

まずどうやって命中させるか、あのビームを掻い潜った上でそれを一夏が直撃させなければならない。次に命中したと仮定し倒しきれない場合、即座の反撃が想定される。SEが枯渇寸前の状態で零落白夜を使えば確実に展開を維持出来なくなり、本当に危険な状態になる。本当に正気の沙汰ではない。一夏を避難させて教師達を待った方が確実なのに如何してそんな案が出てくるのか……。

 

「でもこれしかないだろ!!」

「いやだからアンタが退いてくれれば……」

「なぁちょっと待った、何であいつ攻撃してこないんだ……?」

 

こうして話をしている間にも敵は一切攻撃を仕掛けてこない、向こうからすれば新たに展開したビーム砲塔で攻撃する絶好のチャンスの筈。それなのに全く動こうとしない所か話を聞いているようでもある。余りにも奇妙すぎる。

 

「ビームのチャージ中……?でもそれなら接近してこないのも不穏ですわ」

「っという事は機械……?ほら昔にさ、自動車のメーカーが作ったロボあるだろ?」

「えっそんなのあったっけ」

「いや確かにあったけど……お前まさか、あれが無人だって言いたいのか?」

 

カミツレの言葉に思わず頷いた一夏にセシリアと鈴はそれを否定する、無人機などありえない。ISは人が乗らなければ動かせない、理由は明らかとなっていないが今でも不可能となっている事実。

 

「んじゃ仮に無人だとして如何だって言うのよ」

「零落白夜の100%を叩き込める……!!」

「勝ち目はあるって言いたいのか……やる価値はあるだろうが」

「ハイリスクハイリターンですわね、如何なさいますか?」

「っていよいよ相談している暇もなくなるみたいよ!!全員回避!!」

 

相談させてくれる時間もなくなった、遂に敵が此方に砲塔を向けた。散開して回避運動を取る、いよいよ危険な状態になってしまった。自信有り気に全員を見つめる一夏に全員は溜息を付いた、こいつは意地でも倒そうとしている……そうしないと意地でも逃げないつもりだと。

 

「ああもう分かった分かったわよ!!!でも駄目だったら消えるのよ一夏!!」

「分かった!」

「返事だけは一人前に……カミツレだっけ、アンタ付き合いなさい!!あいつの動き封じるわ!!」

「ああもう、ったくしょうがねぇな!!セシリア、流れは何となく分かるよな、準備頼む!!」

「承知しました!!」

 

勢い良く接近していく鈴とカミツレ、その両者を共に狙い打つビーム。鈴は集中力を割く事が無くなったので存分に『超速零速』を使用し回避し狙いを付けさせないようにしながら更に接近していく。一方カミツレは被弾覚悟でシールドでビームを防御しながら、『超速零速』と同じく加速技法である『瞬時加速』で強引に突っ込んでいく。そして懐へと到達すると敵は巨大な腕で殴りかかろうとして来るが、それを回避した鈴は右斜め後ろへと回りながら刃をスラスターへとぶつけながら、一撃離脱を行った。

 

「こんのぉぉぉぉっっ!!!」

 

青竜刀の攻撃で複数のスラスターを潰す事に成功する、それによってバランスを崩した敵はぐらついた。そこを付いたのは遅れて到達したカミツレであった。

 

「セイヤァァァッッッ!!!」

 

鈴に合わせるかのように両手に持ったブレードでスラスターを傷つける、そしてそのまま全力で足を掬い上げるように斬撃を加えた。それによって制御を失った機体は揺れながら体勢を崩しビームの砲門が完全に下を向いた。斬り上げた勢いのまま一気に加速して離脱するカミツレとすれ違うように一夏が突撃した。

 

「おおおおおっっっ!!!!」

 

残ったSEの全てをつぎ込んで『零落白夜』を起動させる、自らが握るブレード『雪片弐式』は自らの血肉を喰らって輝きを増していく。その雪片を強く握りこんだ一夏、二人のサポートもお陰で大きくバランスを崩し攻撃が出来なくなった敵へと最大出力の一撃を加える。眩い閃光と共に敵のSEを切り裂きながら一夏は敵から離れていく、それと同時に白式は機体を維持しきれずに消え始めていくがそれを鈴は受け止める。しかしまだ敵は動いている、あのままでは攻撃を仕掛けてくる……!!

 

「これで、チェックメイトですわ!!!!」

 

敵の真上にはライフルとブルー・ティアーズ四基展開したセシリアが構えていた。今現在相手の機体を保護するバリアは切り裂かれている、そこへセシリアの全力の射撃が相手の胸へと一点に集中して襲い掛かった。矢継ぎ早に打ち込まれている閃光、次々と打ち込まれている光の矢。そしてダメ押しと言わんばかりに残ったティアーズのミサイルが打ち込まれ爆発を巻き起こしながら落下して行った。敵は地面に強く叩きつけられた、そして低い駆動音を一瞬甲高くさせたかと思えば、小規模の爆発を繰り返しながら遂に微動だにしなくなり完全に動きを止めた。

 

「……やったか?」

「止めなさいよ一夏マジで止めて、次言ったらこのまま殴るから」

「殺す気かよ!?」

「エネルギーレベル0、再起動の確率は0.004%……こりゃ大丈夫だな……ふぃぃっ……」

「ひ、冷や冷やしましたわ……」

「はぁぁぁ……心臓に悪い」

「おっしゃああああ!!!!」

 

約一名が暢気に歓声を上げる中、残った三人は身体中に張り詰めていた糸が切れたのか思いっきりぐったりしてしまった。

 

「取り合えず一夏、アンタすっごい怒られるのだけは覚悟しときなさいよ。終わり良ければ全て良しって訳じゃないのよ」

「マ、マジかよ……」

「当たり前です……はぁこれって私達もきっと怒られますわ……」

「だな……あ~あ、気が重い……」

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