IS 苦難の中の力   作:魔女っ子アルト姫

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200話到達、か……。

マジでこの小説の終わりが見えない、ついでに未来も見えない。


第200話

「はぁっ……」

 

見上げた先の空はどんよりと曇っている、太陽を雲が覆って光を遮っている。視線をあちらこちらにやって見ても何処からも光は差さずに鉛色の空が、曇天が広がっている。まるで自分の心を投影しているかのようにも思えて益々落ち込んでしまう……。屋上に一人いる少女はそんな天を見て、溜息を吐きながら項垂れながらフェンスに身体を預けるようにしながら落ち込んでいた。少女の名前は凰 乱音、カミツレの恋人でもありながら台湾の代表候補生でもある。今回のトーナメントはカミツレに良い所を見せたい、いやお互いに準決勝でぶつかり合うという物を望んでいた。それを実現させる為に全力を出した、最善を尽くしたつもりだった……。

 

「あたしの全力、通じなかったなぁ……。しかも、受領して初めての稼動させるIS相手に……」

 

普通ならば自分の全力を出し切って敗北したのならば自分も素直にそれは満足出来るはずだった、ただ相手が自分の全力を乗り越えるほどの強さを持っていて全力が相手の全力よりも弱かったというだけの事。次こそはそれを超えてやると心に決めて前に進む筈なのに……今回は全然そんな気持ちが沸かなかった。準々決勝第2回戦である自分の対戦相手はカミツレの義妹でもあるマドカ、そんな彼女はこの試合の寸前にイギリスが新開発した彼女専用のISを受領した。最適化(フィッティング)して間もなく武装がどんな物で機体のコンセプトがどんな物なのかを確認した程度の状態で自分との戦いに挑んできた。

 

『……マドカ、アンタって結構酔狂な性格してたのね……一応これトーナメントの準々決よ?それなのに、一度も乗った事ないISに乗って出てくるって……』

『何、これはこれで面白いという物だ。それによくアニメでもあるだろ、開発中の新型にぶっつけ本番で乗るという奴』

『いやだからってリアルでそれやるかな普通……乗り慣れてる「打鉄・黒鋼カスタム」の方が良いんじゃないの?』

『何心配はいらないさ。それに、分の悪い賭けは嫌いじゃない。寧ろその不利を覆したくなる』

 

結果として自分に待っていたのは、一度もテスト稼動さえも行った事もないISを自分との戦いを行いながら性能の把握を行ってその上で勝利したと言う事実だった。あのISが想像以上に高性能だったのもあったがそれ以上に、ぶっつけ本番でそれらを使って存分に戦う事が出来たというマドカの操縦技術や実力の高さは恐ろしさを覚えた。

 

「自信、なくしちゃうなぁ……」

 

終始押されていた訳ではない、マドカが性能の把握を行おうとしていた序盤だけではなく中盤や終盤と互角に戦えていたと自分でも思うが……それが問題なのである。幾ら初見の相手と言っても、マドカにとっても初搭乗のIS、それと戦ったのに互角……というのが問題。これからもマドカは機体に慣れて行く毎に強さを増していくだろう、次に戦うカミツレとの戦いでも自分の時よりも強い実力を発揮出来るはず……考えれば考えるほどに俯きになってくる。如何しようと思った時、屋上の扉が開いた。誰かが来たと思って顔を上げて振り向いた時、其処に居た人に思わず言葉が漏れた。

 

「カミツレ、さん……」

「やぁ乱ちゃん」

 

其処に居たのは戦いたかった人でもあり愛する人でもあるカミツレが自分に向かって笑い掛けていた。自然と向けてくれるあの笑顔を見ると如何しても心が熱くなる筈なのに、今は如何にも心が苦しくなっている。今一番声を掛けて欲しかった人のはずなのに……心が辛い。

 

「隣、いいかな」

「……はい」

 

隣に足を運んできたカミツレに小さく返事を返す。彼は何も言わずにフェンスに凭れ掛りながら空を仰ぎ見た。何も聞いてくれない彼に何処かホッとしている自分がいる、それで乱は気付いた。カミツレに見て欲しくなかったんだ―――こんな不甲斐無い自分を。黙り込んだまま時間が過ぎていく、沈黙が辺りを支配する中、乱は思わず言った。

 

「何も、聞かないんですね……」

「聞いて欲しいのかな、乱ちゃんは」

「……だって、カミツレさんの次の相手はマドカで、私はマドカと戦って……」

「聞いて欲しくないって顔してるよ。なら俺は聞かない、君がして欲しくない事を俺はしたくない」

 

やっぱり優しい、そんな気遣いが重く圧し掛かって来る。有難いのに余計に自分が惨めに思えてくる。

 

「私は……初めてのISを使ったマドカに負けたんです」

「ああ。一夏から聞いた、まさかこのタイミングで専用機が来るなんてな」

「きっと、あれってセシリア「ブルー・ティアーズ」系列の物なんですよね……」

「そうだね。さっき真耶さんに確認したよ。あれはイギリスが「蒼銀」の後継機として開発した新型だってね、形式上は「ブルー・ティアーズ」の兄弟機の「サイレント・ゼフィルス」って奴を再設計して作ったんだってさ」

 

「サイレント・ゼフィルス」は以前亡国機業にマドカがいた頃、イギリスから強奪されたものでマドカがそれを使っていた。しかしそれを束と遭遇した時に束によって奪われていた。そしてそれはカミツレと束が婚約関係になった時にイギリスに返却されていたのである。返却された「サイレント・ゼフィルス」を再設計とセシリアとカミツレのデータを使って改修を行ったのがマドカの専用機となった「カーム・ウェヌス」となっている。なので以前から使用していた物が強化改修されたも同然の物なので、マドカにしてみれば初めてのISとは言い難い。

 

「そう、なんですか……」

「だからって何が変わるかって物でもないかもしれないけどさ、乱ちゃん」

 

そう言いながらそっと乱を抱き寄せる、彼の胸に抱かれた乱は彼の心臓の音を聞いて思わずハッとしつつも上を向いて彼の顔を見た。

 

「俺は、元気な君を見ていたいかな。自分勝手かもしれないけどやっぱり乱ちゃんは笑顔が一番似合うよ」

「……」

 

そう言われて乱は思わず胸に顔を埋めた、真正面からそんな事を言われると流石に気恥ずかしい。でもやっぱり嬉しいとも思った、そして何時までもウジウジしているのは自分らしくもないしカミツレもそうして欲しくないとも思う。今自分がすべきなのはくよくよタイムを終らせて何時もの自分に戻る事。そして、今出来る自分らしい事と言えば―――

 

「如何かな乱ちゃん」

「……ニャ~……カミツレさんの胸板温かいですぅ~♪」

「あらっ、もう戻ったのかな」

 

カミツレに甘える事、だった。

 

「えへへっちょっとブルーになったらカミツレさんにこんなに抱き締めてもらえるんだから、偶にはブルーになろっかな?」

「コラコラ」

「えへへへっ……カミツレさん大好きです!」




私「やっぱり人の名前とか名称が一番時間掛かるよね」

妻「専用機の名前で凄い悩んでましたもんね」

私「だってこういうネーミングセンスないんだもん!」

妻「ご安心を、それは承知していますのでご存分にお悩みください」

私「助ける気は皆無か」

妻「ないです」

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